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一昨年に法律が成立した改正刑事訴訟法

その中で、ある意味最も注目されている法律改正が

日本版の『司法取引』である

『合意制度』

 

これは、簡単にいうと、犯罪を行った被疑者・被告人が

自分の知っている「他人の犯罪」を捜査機関に密告することで

「密告した被疑者・被告人本人の処分を軽減する」ことを認める制度です。

この制度が今年の6月から施行されることが閣議決定されました

https://mainichi.jp/articles/20180316/k00/00e/040/185000c

 

まず、法律としては刑事訴訟法の「第4章」に入り、以下のようになります

(現時点での第4章は即決裁判手続ですが、これが第5章にズレます)

第四章 証拠収集等への協力及び訴追に関する合意

第一節 合意及び協議の手続(第三百五十条の二-第三百五十条の六)

第二節 公判手続の特例(第三百五十条の七-第三百五十条の九)

第三節 合意の終了(第三百五十条の十-第三百五十条の十二)

第四節 合意の履行の確保(第三百五十条の十三-第三百五十条の十五)

第五章 即決裁判手続

 

そして、この司法取引の結果、どのような結果となるのかについては

刑訴法350条の2を見ていただくと、なんとなくわかるかなと思います

※1 最下部に条文を引用させていただいております。

そして司法取引には弁護人の同意が必要です。

 

 

被疑者・被告人が捜査機関に協力をすると

・起訴をしない(裁判にすらしない)

・起訴を取り消す(一度、裁判にしたものを撤回)

・軽い罪で起訴する、軽い罪に罪名を変える

・軽い刑の求刑をする

という恩恵を受けられることになります。

 

組織的な犯罪では、末端の人間だけが逮捕され

犯罪の中枢にいる大物にまで捜査が届かないということが本当に多いです

 

また、薬物事犯であれば薬物を使用している人よりも

・薬物を販売している人

・薬物を製造している人

・薬物を密輸している人

を見つけて処罰した方が犯罪の根絶に繋がります

 

さらに、贈収賄事件のように物的証拠を残すことがまずない犯罪類型ですと

当事者もしくは同行者が自白しない限り

証拠不十分で不起訴となってしまいます

 

このような密行性が高く物証が得にくい犯罪を

より多く処罰するために司法取引が導入されることになりました。

海外では既に司法取引が行われています。

 

しかし

罪なき人に犯罪を押し付ける

という冤罪のリスクが高いことはいうまでもありません。

 

物証と異なり

証言(人証)は、

・誤解誤認というヒューマンエラー

のみならず

・意図的な虚偽供述による巻き込み

・捜査機関による自白強要・巻き込み強要

が生じる可能性が高いです

 

それゆえ、今後の裁判では

証言の信用性が認められず、無罪の判断を受けるケースが多くなるのではないかと思います。

(裁判所も司法取引が行われたケースでの事実認定にはかなり慎重になるものと思われます。)

 

このようなリスクを考慮して

試験運用的に、薬物事犯や贈収賄のような犯罪に限定して司法取引を導入し

殺人罪・強盗致死罪のような死刑・無期懲役刑がある犯罪は除外されています。

 

また最高検察庁も各検察庁に対して、慎重に運用するように

というか、極力使うなというメッセージにもみえるような通達を出しています

※2 この依命通達の一部も末尾に添付しておきます

 

この司法取引が

日本でどのように運用されていくのか

実際の事件ではどのような刑事の判決が下されるのか

そして

日本に司法取引がなじむのか

今後も注目していきたいと思います。

 

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アトム市川船橋法律事務所弁護士法人

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※1 『改正刑事訴訟法(抜粋)』

第三百五十条の二

1 検察官は、特定犯罪に係る事件の被疑者又は被告人が特定犯罪に係る他人の刑事事件(以下単に「他人の刑事事件」という。)について一又は二以上の第一号に掲げる行為をすることにより得られる証拠の重要性、関係する犯罪の軽重及び情状その他の事情を考慮して、必要と認めるときは、被疑者又は被告人との間で、被疑者又は被告人が当該他人の刑事事件について一又は二以上の同号に掲げる行為をし、かつ、検察官が被疑者又は被告人の当該事件について一又は二以上の第二号に掲げる行為をすることを内容とする合意をすることができる。

一   次に掲げる行為

イ 第百九十八条第一項又は第二百二十三条第一項の規定による検察官、検察事務官又は司法警察職員の取調べに際して真実の供述をすること。

ロ 証人として尋問を受ける場合において真実の供述をすること。

ハ 検察官、検察事務官又は司法警察職員による証拠の収集に関し、証拠の提出その他の必要な協力をすること(イ及びロに掲げるものを除く。)。

二 次に掲げる行為

イ 公訴を提起しないこと。

ロ 公訴を取り消すこと。

ハ 特定の訴因及び罰条により公訴を提起し、又はこれを維持すること。

ニ 特定の訴因若しくは罰条の追加若しくは撤回又は特定の訴因若しくは罰条への変更を請求するこ と。

ホ 第二百九十三条第一項の規定による意見の陳述において、被告人に特定の刑を科すべき旨の意見を陳述すること。

ヘ 即決裁判手続の申立てをすること。

ト 略式命令の請求をすること。

2 前項に規定する「特定犯罪」とは、次に掲げる罪(死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たるものを除く。)をいう。

一 刑法第九十六条から第九十六条の六まで若しくは第百五十五条の罪、同条の例により処断すべき罪 、同法第百五十七条の罪、同法第百五十八条の罪(同法第百五十五条の罪、同条の例により処断すべき罪又は同法第百五十七条第一項若しくは第二項の罪に係るものに限る。)又は同法第百五十九条から第百六十三条の五まで、第百九十七条から第百九十七条の四まで、第百九十八条、第二百四十六条から第二百五十条まで若しくは第二百五十二条から第二百五十四条までの罪

二 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号。以下「組織的犯罪処罰法」という。)第三条第一項第一号から第四号まで、第十三号若しくは第十四号に掲げる罪に係る同条の罪、同項第十三号若しくは第十四号に掲げる罪に係る同条の罪の未遂罪又は組織的犯罪処罰法第十条若しくは第十一条の罪

三 前二号に掲げるもののほか、租税に関する法律、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律 (昭和二十二年法律第五十四号)又は金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)の罪その他の財政経済関係犯罪として政令で定めるもの

四 次に掲げる法律の罪

イ 爆発物取締罰則(明治十七年太政官布告第三十二号)

ロ 大麻取締法(昭和二十三年法律第百二十四号)

ハ 覚せい剤取締法(昭和二十六年法律第二百五十二号)

ニ 麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)

ホ 武器等製造法(昭和二十八年法律第百四十五号)

ヘ あへん法(昭和二十九年法律第七十一号)

ト 銃砲刀剣類所持等取締法(昭和三十三年法律第六号)

チ 国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成三年法律第九十四号)

五 刑法第百三条、第百四条若しくは第百五条の二の罪又は組織的犯罪処罰法第七条第一項第一号から第三号までに掲げる者に係る同条の罪(いずれも前各号に掲げる罪を本犯の罪とするものに限る。)

 

3 第一項の合意には、被疑者若しくは被告人がする同項第一号に掲げる行為又は検察官がする同項第二号に掲げる行為に付随する事項その他の合意の目的を達するため必要な事項をその内容として含めることができる。

 

第三百五十条の三

1 前条第一項の合意をするには、弁護人の同意がなければならない。

2 前条第一項の合意は、検察官、被疑者又は被告人及び弁護人が連署した書面により、その内容を明ら かにしてするものとする。

※2 『証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度の運用等について(依命通達)』抜粋

第3 合意制度の運用に関する当面の考え方

1 事案の選定について

○合意制度を利用するためには、本人の事件についての処分の軽減等をしてもなお、他人の刑事事件の捜査・公判への協力を得ることについて国民の理解を得られる場合でなければならない

○基本的には、従来の捜査手法では同様の成果を得ることが困難な場合において、協議の開始を検討することとする。

 

2 協議について(基本的な考え方)

○検察官は、合意するか否かの判断に当たり、合意をした場合に本人が行う協力行為により得られる証拠(供述等)の重要性や信用性、本人が合意を真摯に履行する意思を有しているかなどを見極めることが必要である。そのため、協議においては、本人から合意した場合に行う協力行為の内容を十分に聴取するとともに、協議における本人の供述について裏付捜査を行い、その信用性を徹底して吟味すべきである。

○その上で、協議における本人の供述に高い信用性が認められるとともに、その協力行為により得られる証拠に合意制度の利用に値するだけの重要性が認められるのであれば、検察官は処分の軽減等の内容を提示すべきである。

○他方で、協議における本人の供述につき十分な裏付け証拠が得られないなど、本人の供述に高い信用性を認めることができず、あるいは、本人の協力行為により得られる証拠に重要性が認められない場合には、協議を打ち切るべきである。

 

3 処分の軽減等について(基本的な考え方)

○処分の軽減等の具体的な内容については、基本的には、合意により本人が行う協力行為の重要性に応じて定めることとする。具体的には、解明対象となる他人の刑事事件の重要性、本人の協力行為により他人の刑事事件が解明される(見込みの)程度、当該事件において他人が果たした役割の重要性及び組織内での地位、合意制度以外の方法により収集し得る証拠の内容等を考慮するものとする。

 

4 合意について(基本的な考え方)

○合意に基づく供述の信用性は、他人の刑事事件の公判において慎重に判断されることになる上、合意をした本人が合意後に虚偽の供述をして無関係の第三者を巻き込み、あるいは、事実を歪曲して第三者に責任を転嫁する事態はあってはならないため、そのような事態が生じないよう、合意に際しては、協議における本人の供述の信用性の吟味を徹底して行う必要がある。

 

5 合意後の公判について

○検察官は、本人の事件の公判において、合意内容書面の証拠調べ請求を行うことに加え、必要に応じ、本人の協力行為の内容や真相解明への貢献度等を立証することが考えられる。

 

6 合意からの離脱

○検察官は、離脱事由が生じた場合、基本的には離脱すべきである。もっとも、その離脱事由が形式的でささいなものであるときは、本人から全体として有用な協力が得られており。今後も同様の協力行為を得る必要があるのであれば、合意から離脱する必要はない。

 

7 捜査機関との関係に関する留意事項

○警察等の捜査機関が合意制度の利用を要望してくることは、合意制度の利用を検討する契機や考慮事情の一つとはなるものの、合意制度の利用については、検察官の権限と責任において判断すべきことである。

 

8 取調べ一般における留意事項

○被疑者の取調べにおいて、検察官が合意制度について言及すると、後に、被疑者から、取調べで利益誘導をされたなどと主張され、供述の信用性が争われる可能性が生じる。したがって、取調べにおいては、そのようなそしりを招かないよう、基本的には、合意制度について言及すべきではない。

以上