逮捕・勾留のご相談
ご相談内容
警察が突然自宅を訪れ、夫が逮捕されました。しかし、夫は自分は罪を犯していないと言っていました。私も夫が罪を犯したとは全く信じられません。この後、一体夫はどうなってしまうのでしょうか?また、刑事は無実の人に対しても恐ろしく厳しい取り調べをすると聞いたことがあります。優しい性格の夫のことですので、このような取り調べを受けて、やってもいないことを言わされたりしないか不安です。何か打つ手はないのでしょうか?
回答
(1)逮捕・勾留手続(身体拘束)は少なくとも23日間ぐらいは続く!
法律上、逮捕できる時間は最大で72時間です。逮捕が終わると、次は勾留(こうりゅう)されます。勾留期間は10日間、勾留が延長された場合はさらに10日間、身柄を拘束されることになります。従って、逮捕されたら合計で23日間ぐらい身柄拘束は続くと覚悟する必要があります。警察署の留置場に入れられた方にとっては外界から遮断されているので、かなり長い期間に感じられます。これだけでも普通の人ならば参ってしまうでしょう。
(2)『面会禁止の処分』(接見禁止)
勾留されている際、『面会禁止の処分』(接見禁止)がなされることがあります。これにより『弁護人以外の者』とは会わせてもらえないとか、『弁護人以外の者』からの手紙等の文書の差し入れも原則として23日間届きません。これにより外界との連絡は、弁護士以外とは、殆ど遮断されることになります。従って、警察署に留置されている方にとっては更に酷な状況となります。
(3)過酷な取り調べ
取調べは相当厳しく、大声で怒鳴られることもあります。「てめぇこのやろう」とか、「警察をなめるなよ、ばかやろう」「どうせお前がやったんだろ。」「うそつくんじゃねえ。」というような類いの台詞も容赦なく浴びせられます。刑事は逮捕した人間を、真犯人だと思って取り調べをします。目の前の被疑者は憎き犯罪者なのだ、と自分に言い聞かせて取り調べをするのです。それゆえ、当然、厳しい取り調べとなります。ただでさえ外界と遮断された状況に身を置かれ、その上この様な取り調べを受けた結果、本来やってもいないことでも、やったと言わされることが多々あるのです。
(4)黙秘権がある!
そのような取り調べを受けた方は、しゃべりたくないことがあれば、「言いたくありません」「黙秘します」と言えばよいのです。(憲法38条不利益供述強要の禁止)「しゃべらない」理由も言う必要はありません。これは『黙秘権』(しゃべらなくてもよい権利)と言い、逮捕された人に対して、日本の憲法・法律が当然に保障している権利です。警察は黙秘権があることを取り調べの前に本人に伝える義務があります。(刑事訴訟法198条2項)検察庁でもその後の裁判でも同じです。しかし、警察では、正確に『黙秘権があること』についてわかるように教えてくれず、逆に「正直に言え」「黙っていることは認めたと同じだ」「逮捕されたお前らに黙秘権などあるか」と、どなったりして、自白を強要することが多いのが現状です。
(5)調書は刑事が作り上げる被疑者に不利なストーリーを書いた作文!
取り調べに応じて話したことを、刑事は調書という書面にまとめます。しかし、そこに被疑者にとって有利なことがかかれることはないと考えてください。刑事は被疑者を真犯人だと思っており、その被疑者を有罪にするための証拠として調書を作成しています。それゆえ、調書には、警察に有利に、つまり、被疑者に『不利益なストーリー』として構成されて書かれることが普通です。そのストーリーを被疑者が自らスラスラ取り調べに応じて話をしたかのような体裁となっているのです。
(6)納得いかない調書は署名押印を拒否してよい!
調書は、誤りがないかを確認させるために、被疑者に閲覧させるか又は読み聞かせなければなりません。上記で説明したとおり刑事や検事が作る調書は必ずしも正確ではなく、被疑者が犯人であるかのように記載されていることが常です。そこで、被疑者が記載の変更等を求めた場合は、その旨を刑事や検察官は調書に記載しなければなりません。つまり、誤った内容を訂正してもらう権利があるのです(刑事訴訟法198条4項)。納得がゆく訂正がなされるまで、署名押印を拒否してください。署名押印は法律的には、しさなければならないという義務はありません。断ることも法的には自由です。法的には、刑事や検事のほうが、あなたに署名押印をお願いできるだけなのです(刑事訴訟法198条5項)。
(7)記憶にないことは「覚えていない。」と言う!
忘れてしまって記憶にないこと、特に日時は忘れています。そういう時は、とりあえず覚えていないことは「覚えていません」と言わなければなりません。調書には、あなたが『しゃべったとおりのことが書かれない』ことがよくあります。あとで「警察が勝手に書いた」と裁判で主張しても通らないことがほとんどですので、「調書をよく見せてほしい」と言って、見せてもらって、納得できなかったら、書名押印を拒否してください。たいがい取り調べの事実は『古い出来事』です。今、突然逮捕されたあなたの手元には、備忘のためのノートも覚書(メモ)も日記もありません。誰かに確かめることもできません。ひとつづつゆっくり思い出して、記憶にないこと、忘れてしまっていること、違っていることは、認めてはいけません。「そこは、よく覚えていません」と言うべきです。刑事や検事は「相手がこう言っているからこうだ」「共犯者はこう言っているぞ」と言って揺さぶりをかけてきます。しかし、そう言われても簡単に認めてはいけません。実際には、相手や共犯者が言ってもいないのに、取調官がうその説明をすることがよくあります。
(8)すぐばれる嘘の言い訳はしない!
逮捕するまえに、あるいは逮捕後、警察はすでにほとんど万全の下調べをやっています。ウソを言えば、警察には何人も捜査官がいますから、すぐに裏付けの捜査をされてウソがばれることになります。ウソを言ってつじつま合わせをするくらいなら、あなたには『黙秘権』があるのですから、「私はしゃべりたくありません」と言うべきです。
弁護士に依頼した場合
(1)直ちに接見に赴きます
弁護士に依頼すると、真っ先に被疑者・被告人のもとに接見(面会)に赴きます。刑事弁護は時間との勝負です。弁護士の到着が遅れたために、その間、違法な取り調べによって不利な調書が作成されてしまうことがあることは、これまでのえん罪事件の歴史が物語っています。また、『面会禁止の処分』(接見禁止)がなされている場合は、原則として弁護士しか被疑者と面会することはできません。弁護士によるいち早い接見こそが、重要なのです。
(2)防御方法や刑事手続等を説明します。
上記で説明した黙秘権や調書への署名押印拒否等の重要な権利は、普通の方はご存じないのが現実です。また、警察でも一応の説明がなされますが、形式的な説明に過ぎず、実質的な防御の方法を理解させることはありません。そこで、弁護士が、早期に接見に赴き、自分の権利を守るための権利や方法を丁寧に説明し・理解させます。黙秘権等の知識及び使い方を理解すれば、逆に「正直に言え」「黙っていることは認めたと同じだ」「逮捕されたお前らに黙秘権などあるか」と、刑事に怒鳴られても、冷静に対応することができます。
(3)身柄拘束からの解放を目指します
被疑者が理由もなく逮捕・勾留されている場合、弁護士はその被疑者を解放する求めることができます。逮捕された後、弁護士は警察官に対して被疑者を解放するように要請し、被疑者を勾留しないように要求することができます。これにより、勾留されずに、釈放されることもあるのです。また、勾留されてしまっても、勾留決定に対して異議を唱えます。この異議申し立ては準抗告といい裁判所に対して不服を申立てます。弁護士は書面を作成し、裁判官に対して、本件の勾留には勾留の理由も必要性もないことを具体的に主張することになります。その他にも、勾留後の弁護活動としては、検察官の裁量に基づく身柄解放を期待して、できるだけ早期の釈放を行うよう検察官に書面を提出して要請したり、裁判所に勾留の取消しまたは執行停止を求めたりすることが考えられます。
(4)不起訴・刑事裁判に向けて証拠収集等の準備活動をします。
逮捕・勾留されたらすぐに、身柄の解放、不起訴及びその後に続く刑事裁判で無罪判決を勝ち取るための準備活動を行います。具体的には、被疑者にとって有利な物的証拠を保全し、又は、第三者の話を録取するなどして、証拠固めをします。この様な証拠収集を起訴された後に行うのは遅すぎます。刑事や検事は、逮捕前から国家権力を背景に証拠固めを強制的に行っています。それに対抗するするためには、早期の準備活動が重要であることは言うまでもありません。
(5)不起訴を勝ち取ります。
刑事裁判における有罪率は99%以上です。つまり、刑事裁判になると、99%有罪となっているのです。しかし、この事実は、裏を返せば検察官は「100%勝てる」と判断できる事件だけを起訴しており、証拠関係等からして「100%勝てる」と判断できない事件については、起訴を見送っているのです。事実、平成20年のデータ(犯罪白書)によれば、検察庁の終局処理のうち、56.7%が起訴猶予・不起訴となっています。そこで、刑事弁護としては、被疑者に黙秘権等をアドバイスして不利な供述を調書にさせず、その他有利な証拠を収集する等して、検察官が「100%勝てる」と判断できない状況をつくりだせば、起訴を免れることができるのです。具体的には、証拠を収集し、起訴をするべきではない旨の意見書を検察庁に提出し、場合によっては検事と交渉して起訴をさせないようにします。
(6)メンタル面をサポートします
黙秘権や調書への署名・押印の拒否等により適切な防御活動を行うと、刑事はさらなる圧力をかけてきます。「そんなことを言っていると不利になるぞ」「黙っているのは、お前がやったからだろ。」「黙っていると、とんでもない目に遭うぞ。」「弁護士の言っていることが正しいと思っているのか?」等怒鳴り散らし、被疑者に無理矢理不利な供述をするように求めてくるのです。このような不当な圧力を受けると、いくら黙秘権等の正確な理解があっても、最終的にものを言うのは精神力です。被疑者は、警察署に留置され、外界から遮断された中で、上記のような激烈な取り調べを受けますので、精神的なサポートは不可欠です。このようなサポートをできるのは、接見禁止がなされている場合は特に、弁護士だけです。
弁護士費用
(1)着手金
- ① 事案簡明な事件 30万円~50万円の範囲内の額
- ② 事案複雑な事件 50万円以上
(2)報酬金
- ① 事案簡明な事件
ア 起訴前
(ア) 不起訴 30万円~50万円
(イ) 求略式命令 上記金額を超えない額
イ 起訴後
(ア) 刑の執行猶予 30万円~50万円
(イ) 求刑された刑が減軽された場合 減軽の程度による相当な額
- ② 事案複雑な事件
ア 起訴前
(ア) 不起訴 50万円以上
(イ) 求略式命令 50万円以上
イ 起訴後
(ア) 無罪 60万円以上
(イ) 刑の執行猶予 50万円以上
(イ) 求刑された刑が減軽された場合 減軽の程度による相当な額
Q&A