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遺産分割のご相談

弁護士への法律相談

法律相談

先日父親が亡くなりました。父は資産家で多数の財産を持っていました。そこで、相続人間で遺産分割をしようと思っているのですが、どのように進めたらいいのか分かりません。また、遺産分割にはどのような方法があるのでしょうか?教えてください。

弁護士からの回答

弁護士からの回答

遺産分割は①相続人調査、②遺産とその評価額の調査、③相続分の算定、④遺産分割協議という流れで進みます。
また、遺産分割の方法は、①現物分割、②代償分割、③換価分割があります。

解説

遺産分割は以下のような流れで行われます。

1.相続人調査

まず、誰が相続人になるのかを戸籍を取得するなどして慎重に調査します。遺産分割協議に相続人全員が参加していなかった場合は、その遺産分割協議は無効となってしまうからです。
例えば、故人が遺言で遺産の全部または一部割合を誰かに贈与しているような場合は、贈与を受けた人も相続人と同じ地位とされていますので、遺産分割協議に参加することが必要です。また、故人に隠し子がいて認知されている場合、認知された子も相続人となります。

2.遺産の調査およびその評価額の調査

つぎに、遺産を分割する前提として、故人の遺産がどの程度あるのか、どこまでが故人の遺産なのかを確定し、その評価額を調べます。

3.相続分の算定

相続人の調査が終わったら、相続人の具体的相続分を算定します。法定相続分に従った分割をすることに異議がある場合、特別受益(故人から生前贈与や遺贈を受けていないか?)や寄与分(故人の生活の世話や病気の看病をしたり、無償で家業を手伝ったりして、故人の財産の維持または増加に貢献していないか?)の有無およびその金銭的評価をして、具体的相続分を算定します。

4.遺産分割の協議

相続人と遺産の範囲が確定したら、いよいよ遺産分割です。遺産分割には以下のような方法があります。

⑴ 現物分割

遺産分割の原則的な方法で、遺産そのものを分割する方法です。例えば、この土地は長男に、このマンションは次男に分けるといった感じです。この方法によると、各相続人の相続分どおりに分けることは難しいので、もらい過ぎた相続人は、その分を他の相続人に金銭で支払うなどして調整したりします(代償分割)。

⑵ 代償分割

相続分以上の財産を取得する場合に、その代わりとして他の相続人に金銭を支払って過不足を調整する方法です。

⑶ 換価分割

遺産を売却して、その売却代金を相続人の間で分ける方法です。この方法によれば、各相続人の相続分どおりに分けることは簡単です。しかし、遺産を処分するので、処分に要する費用や譲渡取得税等がかかることがあります。

5.遺産分割協議書の作成

遺産分割の話し合いがまとまったら、後日の紛争を未然に防ぐためにも、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書は、遺産分割協議に基づいて不動産の所有権を移転する際などにも必要となります。
遺産分割協議書作成の際の注意点は以下のとおりです。

① 誰がどの財産を取得するのか具体的に記載します。
② 故人の氏名、死亡日(相続開始日)、最後の住所を必ず記載します。
③ 不動産の表示は、登記簿謄本どおりに正確に記載します。
④ 住所は、住民票又は印鑑証明書どおりに正確に記載します。
⑤ 預貯金がある場合、銀行名、支店名、預金の種類、口座番号を記載します。
⑥ 遺産分割協議後に、新たに遺産が判明した場合に備えて、発見された遺産の扱いを明確にします。
⑦ 協議書が複数ページになる場合は契印(割り印)が必要になります。
⑧ 遺産分割協議書の作成日を記載します。
⑨ 相続人の人数分の遺産分割協議書を作成します。

この遺産分割協議書に相続人全員が署名・押印します。必ず本人が自署し、実印を押印します。そして、印鑑証明書をつけて各自大切に保管します。

6.遺産分割による登記

土地や建物がある場合には遺産分割協議に基づく所有権移転登記を行います。登記申請は、譲渡人である故人はすでに死亡しているので、相続人の単独申請が認められます。

弁護士に依頼した場合

相続人・相続財産の調査

誰が相続人にあたるかや、連絡の取れない相続人の調査、故人の財産の特定、財産の評価等を行います。

遺産分割協議書の作成

後日の紛争を未然に防ぐよう配慮した内容の遺産分割協議書を作成します。

遺産分割調停の申立

遺産分割協議が話し合いでまとまらない場合は、遺産分割調停を家庭裁判所に申立てます。調停手続では、担当の調停委員が当事者双方や代理人等から事情や意向を聴取します。また、調停委員が事情をよく把握した上で、様々な助言や分割案の提案をしてくれます。このように、調停は、当事者の話し合いによる合意を目指す手続です。当事者以外の第三者が話し合いに参加することにより、スムーズに話し合いがまとまるケースもあります。

遺産分割審判の申立

遺産分割調停がまとまらない場合は、遺産分割審判を家庭裁判所に申立てます。審判は、調停とは異なり当事者の合意ではなく家庭裁判所の判断により紛争解決を図るもので、その判断は強制力を持ちます。

当事務所における解決例

(1) 夫が残した土地建物について、長男が全てを相続し登記を行いました。

他の相続人の同意が得られたため、夫が残した土地建物を長男が100%相続し、相続登記を行うことができました。

(2) 父が残した株式の評価について、こちらにとって有利な評価方法を相手が認めて、代償分割する金額が相手の主張より減額できました。

父の遺言で私が株式を相続することになったのですが、市場公開されていない株式であったため、どのように価値評価すればよいかわかりませんでした。相手はこの株式を高額に評価し、代償分割するよう私に請求してきました。協議を重ねた結果、こちらが主張する株式評価方法に相手も納得し、一定の金額を現金で代償分割することで解決できました。

Q&A

Q1 遺言と異なる内容の遺産分割をすることは可能ですか?

A 可能です。例えば、すべての財産について、具体的にどの財産を誰が相続するかということが遺言で指定されている場合でも、相続人全員の合意があれば、遺言の内容と異なる遺産分割協議をすることができるとされています。ただし、遺言執行者が指定されていて、遺言執行者の同意なく遺言と異なる内容の遺産分割協議をした場合は、遺言執行者との間で紛争となってしまうこともあります。

Q2 遺産分割はいつまでに行う必要がありますか?

A 法律的には期限はありません。つまり、相続が開始された以降であれば、いつでも行うことができます。しかし、相続税の申告は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に申告書を提出しなければならないとされていますので(相税27条1項)、相続税の申告期間内に遺産分割協議ができない場合は、法定相続分に従って相続税の申告をし、その後遺産分割協議が成立したときに修正ないし更正の請求をします。

Q3 相続人に未成年者がいる時にその法定代理人(親権者)は子を代理することはできますか?

A 遺産分割において、法定代理人である親と子がともに相続人となる場合、お互いの利益が相反するため、親が子を代理することはできません。おじ・おばなど親戚に特別代理人となってもらうことが多いですが、頼める親戚がいない場合、弁護士に依頼することも可能です。親権者が、家庭裁判所に、子の特別代理人の選任申立を行い、家庭裁判所に特別代理人を認めてもらうことが必要です。

Q4 生命保険金も遺産と同じように分割を求めることができるのでしょうか?

A 故人が亡くなった時、受取人は保険金請求権を取得します。この生命保険金は故人の遺産ではなく、受取人固有の財産であると考えられています。したがって、生命保険金は、原則、遺産分割の対象になりません。