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法律相談

1か月前に夫が亡くなりました。死後、夫に多額の借金があることがわかりました。夫は自宅土地建物の所有者であり、住宅ローンについては完済しています。今後、私が住むところがなくなってしまうので、自宅は相続し、借金は相続したくないのですが、そういったことはできないのでしょうか?

弁護士からの回答

弁護士からの回答

相続人は、故人の一切の権利義務を承継しますので、資産だけでなく、負債も承継します。「資産だけ引き継いで負債は引き継がない」ということはできません。相続人は相続分に応じて借金を相続するというのが原則です。

解説

負債の相続

相続人は、故人の一切の権利義務を承継しますので、資産だけでなく、負債も承継します。そのため、「資産だけ引き継いで負債は引き継がない」ということはできません。相続人は相続分に応じて借金を相続するというのが原則です。父親の借金を相続人自身が負うことになるので、負債の額が大きいと返済のために相続人の資産も提供しなければならない事態に至ることもあります。
そのような事態を避けるために、①相続放棄もしくは②限定承認という手続をすることができます。

相続放棄とは

故人に借金が多く、返済することができない場合は、相続放棄をする方法があります。相続放棄とはその名前のとおり、相続することを放棄するという方法で、資産も負債も一切相続しないことになります。また、相続放棄を行うと、初めから相続人にならなかったものとして扱われます。
相続放棄は明らかに資産よりも負債が多い場合に選択されることが多いです。ただ、土地や建物といった重要な財産も相続できないので、注意が必要です。

限定承認とは

限定承認とは、相続によって得た財産の限度においてのみ借金を返済するとした上で、相続を承認することです。限定承認を行うと、相続した資産の限度にて負債を清算します。その結果、負債が相続資産よりも多く、負債が残った場合でも、相続人自身の財産からは返済する責任がありません。一方、借金を清算した後、相続資産に余りがあれば、相続人はこれを承継できます。
財産もあるが負債もあってどちらが多くなるか分からないような場合に限定承認が使われることがあります。
また、限定承認は共同相続人が全員で共同して行うことが必要なので、注意が必要です。

相続放棄や限定承認をする方法

⑴ 相続放棄や限定承認をする際の注意点

相続財産を処分したり、自分のために費消したり、隠匿したりすると、相続をしたものとみなされ、相続放棄や限定承認を行うことができなくなります。相続放棄や限定承認を考えている場合は相続財産には手を付けないようにしましょう。

⑵ 相続放棄の方法

相続放棄は、相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、故人の死亡時の住所地の家庭裁判所に申述書を提出して行います。申述書の用紙は家庭裁判所に備えてあります。この3か月の期間は、原則として、故人が死亡し自分が相続人になったことを知った時から進行し、この期間中に手続をとらなかった時は、相続の放棄をすることはできません。ただし、相続人が相続財産の状況を調査してもなお、3か月以内に相続を承認するか放棄するかを判断する資料が得られない場合には、期間延長の申立を行い、家庭裁判所の審判によってさらに3か月期間を延ばすことができます。

⑵ 限定承認の方法

限定承認は、故人が死亡し自分が相続人になったことを知った時から3ヶ月以内に、故人の死亡時の住所地の家庭裁判所に限定承認する旨の申述書を提出して行います。家庭裁判所に備え付けられた申述書のほか、故人の財産目録を提出する必要があります。また、相続人が複数いる時は、限定承認は相続人全員にて行わなければなりません。家庭裁判所は、複数の共同相続人の中から、相続財産の管理人を選任します。

ご質問の場合

ご質問の場合、父親には借金だけでなく相当の財産もあるということですから、負債と資産を比較して、負債が超過している場合には相続放棄の手続を、資産に残余が出ると予測される場合には限定承認の手続をとるべきです。どちらになるか分からない場合には限定承認の手続をするのが良いでしょう。

弁護士に依頼した場合

相続人・相続財産の調査

 誰が相続人にあたるかや、連絡の取れない相続人の調査、故人の財産の特定、財産の評価等を行います。必要であれば相続の熟慮期間伸長の申立を行います

相続放棄、限定承認の申述

 相続人の代理人として、家庭裁判所に相続放棄もしくは限定承認の申述を行います。

当事務所における解決例

⑴ 亡くなった父に借金があることが判明し、特に資産がなかったため、相続放棄をしました。

相続の熟慮期間の伸長を家庭裁判所に申立て、延長が認められたため、その期間中に借金の調査を行いました。調査の結果、多額の借金が残ることがわかったため、相続を放棄しました。

⑵ 母が亡くなり、知人から借金の返済を求められました。母は不動産を所有していたため、限定承認を行いました。

母が死亡し、相続人はその子2人のみでした。1人は相続を放棄しましたが、もう1人は限定承認を行い、不動産を処分し、売却代金で知人への借金を返済、残余を取得しました。

Q&A

Q1 父と母は私が幼い頃に離婚し、私は母に養育されました。離婚以来、母と私は、父と一切連絡を取っていませんでした。父が半年前に死亡し、借金があるので、相続人である私に弁済するよう、督促状が5日前に届きました。父の借金を返済できるほどの経済的余裕はありませんし、父に財産があったとしても一切受領するつもりはありませんので、相続を放棄したいと考えています。相続の放棄は可能でしょうか?

A 相続放棄は、相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に行います。父が死亡したのは半年前ですが、相続人がそのことを知ったのは5日前で、父の死後既にかなりの期間が経過していました。この場合、3か月の期間は相続人が父の死亡を知ったときから進行しますので、相続を放棄することは可能です。

Q2 夫が死亡し、相続人は妻・長男・長女の3人です。長女は既に独立しているため、相続を放棄したいと言っていますが、私と長男は相続の限定承認をし、借金を清算した残余を今後の生活の足しにしたいと考えています。長女が相続放棄、私と長男が限定承認と、それぞれ別の手続をとることは可能でしょうか?

A 相続人が複数いる時は,限定承認は相続人全員にて行わなければなりませんが、相続を行うと、初めから相続人にならなかったものとみなされますので、相続放棄した長女を除く相続人全員で限定承認を行うことができます。

Q3 死去した兄の借金を返済せよと督促状が届きました。兄には子供がいますので、私は相続人にならないと思っていました。兄の子供が相続放棄しているか、調べることはできますか?

A先順位の相続人が相続放棄の申述を行ったか否かは、故人の最後の住所地の家庭裁判所に照会することができます。先順位の相続人が相続を放棄している場合、次順位の者が相続人となります。