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私(専業主婦)の夫は、製鋼会社で、溶鋼状態のものが鋳造設備にうまく流し込まれるよう監視する作業に従事していました。溶鋼の温度は約1500℃、労働環境温度は30℃以上であり、そのうえ熱輻射が大きいので防熱衣を着ながら、作業姿勢は立位・中腰が多く、時にはしゃがみこんで作業することもあったようです。その主人が、8月中旬に、作業の休憩時に心肺停止状態となり、ほぼ即死の状態で亡くなりました。主人は、ここ数か月間残業や夜勤が続いており、死亡前日も約15時間の長時間勤務をしていて、当日も過労と睡眠不足の状態で作業をしていたようです。労災保険給付は請求できるのでしょうか。また、会社に対し、何か請求はできないのでしょうか。

弁護士からの回答

弁護士からの回答

業務上の事由による労働者の死亡といえる場合には、その遺族には労災保険(労働者災害補償保険)から遺族補償年金及び葬祭料、社会復帰促進等事業から特別支給金(遺族特別支給金及び遺族特別年金)が支給されます(なお、妻以外の者が受給権者となるには、労働者の死亡の当時に一定の高齢者または年少者であるか、あるいは一定の障害の状態にあることが要件となっています)。また、ご相談者のケースでは、会社に対し、安全配慮義務(使用者が労働者の生命及び身体を危険から保護するよう配慮すべき義務。労働契約法5条)違反として民事上の損害賠償請求が認められる可能性が高いといえます。

解説

労災保険について

 労災保険(労働者災害補償保険)は、業務上の事由または通勤による労働者の負傷・疾病・障害・死亡等に関して、労働者やその遺族に対し、必要な保険給付を行う制度です。

 労働者の負傷等が業務上の事由によると認定されるためには
ⅰ)業務遂行性(事業主の支配下にあったこと)
ⅱ)業務起因性(事業主の支配下にあったことと負傷等との間に因果関係があること)

の双方の要件を満たす必要があります。

 なお、被災労働者(ないしその遺族)が、労災保険による給付を受けるとともに、使用者から民事上の損害賠償(不法行為や安全配慮義務違反による損害賠償)を受けることができる場合には、被災労働者等は二重に損害のてん補を受けることとなるので、調整が行われます(例えば、すでに支払われた労災保険の給付額は、民事損害賠償額から控除され、また、民事損害賠償が先になされた場合は、その限度で保険給付はしない等。労災保険法64条)。

 労災保険給付等の申請手続についてですが、例えば、労働者が労働災害により死亡した場合は、その遺族が遺族補償給付等の請求を労働基準監督署長に対して行うことになります(実務上は、事業主が代行して手続を行うことも少なくありません)。各種労災保険給付の請求書は、労基署に備え置かれています。請求書には事業主証明欄があり、事業主から、ⅰ)負傷または発病の年月日及び時刻、ⅱ)災害の原因及び発生状況等の証明を受けなければなりません。事業主が証明を拒んだ場合は、事業主から労災の証明をしてもらえなかった事情等を記載した上申書を添えて提出します。
 

労働災害の対応方法

(1) 証拠の収集
(2) 会社との交渉
(3) 裁判

弁護士に依頼した場合

(1) 証拠収集や会社との交渉

(2) 裁判を起こします。