雇い止めのご相談
ご相談内容
私は電子部品メーカーに期間を1年間と定めて嘱託社員として雇用され、以降5回の契約更新を経て現在は6年目です。採用の際に、「契約期間が満了しても、まじめに働いていれば解雇されることはない。安心して長く働いて欲しい。」などと説明され、また、業務内容は、正社員と同じ恒常的業務に携わってきました。しかし、先日、会社より期間満了で契約は終了し、契約の更新はしない旨告げられました。私としては、長く勤められると信頼してこれまで懸命に働いてきましたのに、会社の措置は納得がいきません。何は方法はないでしょうか?
回答
雇い止めとは
期間を定めた労働契約(有期労働契約)の期間が満了した時点で、契約を更新せずに打ち切ることを「雇い止め」といいます。これまで何回も契約を更新してもらっていたため、「来季も引き続き雇用してもらえるだろう。」と安心しきっていたところ、突然、「契約期間が満了しました。はいご苦労さま。」と言われ退職させられ,大変驚かれると同時に,会社に裏切られた気持ちで落ち込んでいらっしゃることでしょう。 しかし、正社員と同様の内容の業務に就いていた場合や、更新を何回も続けて相当長期間にわたって働いていた場合、あるいは、「ずっと働いて欲しい。」と言われていた場合など一定の条件があれば、雇い止めは、解雇と同様の厳格な要件をクリアしない限り、無効となる可能性があります。
雇い止め後の対応方法
(1)証拠の収集
まずは、労働契約の内容(本当に期間の定めがある契約だったのかなど)を再度確認する必要があります。そのためには、契約書の文言、契約締結の際の使用者の言動などが手掛かりになります。
(2)雇い止め理由証明書を請求しましょう。
労働者は、会社に対し、雇い止めの理由について証明書を請求することができます(労働基準法14条2項,有期労働契約の締結,更新及び雇止めに関する基準)。この書面を見ることで、雇い止めの理由が単に期間満了という形式的なものなのか、それ以外の理由(労働者の能力不足、会社の業績不振など)なのかがわかり、交渉、裁判がしやすくなります。
(3)退職を前提とした手続に安易に従わないよう注意しましょう。
雇い止めの際に、「退職同意書」といった書面にサインを求められることがあります。退職に応じたくない場合には、けっしてサインをしてはいけません。
(4)会社との交渉
会社に対し、雇い止めの無効を主張し、職場に復帰させてくれるよう交渉します。
(5)裁判など
会社が交渉に応じてくれなかったり、要求に応えてくれなかったりする場合は、裁判所などを通じて、要求の実現を図ることになります。具体的な方法としては、訴訟、地位保全・賃金仮払いの仮処分、労働審判、労働局のあっせん手続などがあります。但し,雇い止め事案は,通常の解雇に比べて勝訴に対するハードルが高く,請求額も少額に留まることが少なくないため,労働審判を活用することによって迅速な解決を目指すことが多いでしょう。
弁護士に依頼した場合
(1)あなたに代わって、証拠収集や会社との交渉を行います。
あなたと協働して,証拠収集を迅速に行います。また、弁護士が代理することで、それまで交渉に応じてくれなかった会社側が態度を変え、交渉に応じてくれることもあります。雇い止めの有効性については、ケースバイケースで判断されますが、労働法や過去の判例に精通した弁護士であれば、臨機応変に適切な行動をとることができます。
(2)あなたに代わって、裁判を起こします。
あなたのケースにもっとも適した手続を選択し、迅速に解決を図ります。例えば、雇い止めが無効である可能性が強いケースであれば、賃金仮払いの仮処分により、賃金の支払いを受けながら、交渉を進めることができます。また、労働審判では、短期間(原則3回以内の審理を経て決定が下されます)で紛争が解決できる可能性があります。
当事務所における解決例
(1)雇い止め(交渉により法的措置を経ずに勝訴的和解成立)
最初の更新時における雇い止めを争った事案です。有期雇用契約の更新に関し,裁判例は,①労働者の従事してきた業務の恒常性,②契約更新の回数,③雇用の通算期間,④更新手続の厳格性,⑤雇用継続の期待をもたせる言動・制度の有無等を総合考慮して,雇用継続の期待利益を法的に保護すべき場合には,解雇規制が類推適用されるとしています(日立メディコ事件 最判61.12.4 労判486-6)。このように②契約更新の回数も一つの重要な要素となるため,未だ1回も更新をしていない最初の更新の場合は,雇用継続の期待利益を法的に保護すべき度合いが低い,と判断されるかと思えます。しかし,最初の更新時においても労働契約時において特に契約継続の期待をもたせるような状況がある場合は,信義則上,更新拒絶にはそれが相当と認められるような特段の事情が必要であるとされています(龍神タクシー事件・大阪高裁判決平成3.1.16労判581)。今回,ご依頼を受けた事件は,まさに労働契約時において特に契約継続の期待をもたせるような状況がある場合に該当し,依頼者と協働して徹底した準備を行った結果,法的措置を行った場合と同様の高い水準で和解をすることができました。
(2)雇い止め(労働審判・勝訴的調停)
この件も雇い止めを争った事件でした。ご相談を受けた後に示談交渉を行っていたのですが,会社側が一切譲歩する様子がなかったため,やむなく労働審判を申し立てました。適切な証拠収集及び主張の展開により,当方の主張を容れることを前提とした勝訴的調停を勝ち取りました。
(3)雇い止め(非常勤講師・法的措置を経ずに勝訴的和解成立)
大学の非常勤講師の雇い止めを争った事案です。大学の非常勤講師の雇い止めについては,判例は極めて厳しい見解をとり続けています。すなわち,非常勤講師の場合は,「非常勤」というネーミングからも更新が保障されない,臨時的な立場という面が強く,雇い止めが認められやすい類型なのです(亜細亜大学事件・東京地裁昭和63/11/25労判532-63)。しかし,ご依頼者の強い要望を受け,当方に有利な事実を徹底的に分析し,証拠収集をした結果,大学側と高い水準での和解を成立することが出来ました。
その他にも多数の解決実例があります。
弁護士費用
法律相談料
30分5、250円(税込)
但し、30分延長ごとに5,250円(税込)の追加料金がかかります。
着手金(ご依頼頂いた際に弁護士が頂く代金)
※ご事情により一部分割払い,後払いによるお支払い等ご要望をうかがいます。
- 1 弁護士名義による内容証明郵便の発送及び会社との交渉
52,500円~10万5,000円(税込) - 2 賃金仮払仮処分の申し立て
21万円(税込)・・但し,一部について終了後の後払いも可能です。 - 3 労働審判の申し立て
21万円(税込)・・但し,一部について終了後の後払いも可能です。 - 4 通常訴訟(第一審訴訟手続)
21万円(税込)・・但し,一部について終了後の後払いも可能です。
成功報酬(事件の成功の程度に応じて頂く対価です。)
- 1 弁護士名義による内容証明郵便の発送及び会社との交渉
得られた経済的利益の20%+消費税 (但し,最低21万円) - 2 賃金仮払仮処分の申し立て
得られた経済的利益の25%+消費税 (但し,最低21万円) - 3 労働審判の申し立て
得られた経済的利益の25%+消費税(但し,最低21万円) - 4 通常訴訟(第一審訴訟手続)
得られた経済的利益の25%+消費税(但し,最低21万円)
※上記は一応の目安で、事案の難易度に応じて、事前に確定額をご提案いたします。
Q&A
(1)Q 労働契約の期間についての法的な規制はあるのですか?
A 労働基準法14条によれば、契約期間を定める場合、その上限は原則として「3年」とされています。この上限規制は、更新後の契約にも及びます。 そして、この上限を超えた期間を定めた契約は、制限期間の上限の期間(3年)を定めたものとみなされ、また、その上限期間を超えて労働関係が継続された場合は、黙示の更新により期間の定めのない契約となると解されています。従って,上限期間を経過した後の雇い止めは,法的には解雇となり,労働契約法16条の規制を直接に受けます。 なお、労働契約法4条2項によれば、契約期間の更新の有無、更新の判断基準などは、使用者と労働者ができる限り書面で確認すべきこととされています。
(2)Q 雇い止めに関する裁判例にはどういったものがありますか?
A 代表的なものとして、次の2つの裁判例が挙げられます。1つ目は、東芝柳町工場事件(最一小判昭和49・7・22民集28巻5 -927)と呼ばれているものです。この判決は、期間が定められていても、反復して更新され、実質上期間の定めのない契約と異ならない状態に至っている常用的臨時労働者の場合は、雇い止めを行なう際に、正規従業員に対して適用される「解雇権濫用の法理」(社会通念上認められる合理的理由がないと解雇権の濫用となり、解雇が無効となるとする原則)が適用されるとし、「余剰人員の発生等従来の取扱い(契約期間の更新)を変更してもやむを得ないと認められる特別の事情」がなければ雇い止めはできない、と述べています。 2つ目は、日立メディコ事件(最一小判昭和61・12・4労判486-6)と呼ばれているものです。この判決は、判決理由の中で、期間の定められた労働者であっても、臨時的作業ではなく恒常的な作業に従事している場合は、ある程度の雇用継続が期待されているとみなされるため、「解雇権濫用の法理」が適用されることを認めています。一方、近年、期間雇用労働者である派遣労働者の更新拒絶(雇い止め)について、「雇用継続に対する期待は、労働者派遣法の趣旨に照らして合理性を有さず、保護すべきものとはいえない」として(更新拒絶を)有効とした判例も現れています。
(3)Q 雇い止めは、どのような場合に無効となるのですか?
A 長期にわたり更新が繰り返されてきたケースなどでは、雇い止めが有効となるためには、解雇と同様の厳格な要件が必要とされています。過去の裁判例によれば、次のような条件があれば、雇い止めの有効性は、解雇と同様に厳しく判断されることになります。 ① 仕事の内容が正社員と異ならない ② 更新の回数が多い ③ 雇用の通算期間が長い ④ 更新手続が形式的であったり、ずさんであること(契約書を作らなかったり、事後的に契約書を作ったりするような場合など) ⑤ 雇用継続の期待をもたせるような言動があったこと(例えば、採用時に使用者が更新を期待させる発言をしたような場合など) ⑥ 継続雇用を期待することに相当性があること(例えば、他の有期労働者が長年更新を繰り返して雇用されている場合など)
(4)Q 雇い止めに対する法的な規制はあるのですか?
A 労基法14条2項が基準の内容を委任する「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(H15.10.1厚労告357号,改正H.20.1.23厚労告12号)」には、次の規制が規定されています。 ① 雇い止めの予告 契約を3回以上更新し、または、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者については、少なくとも契約期間の満了する30日前までに雇い止めの予告をしなければならない旨、規定されています。 ② 雇い止めの理由の明示 使用者は,雇い止めの予告後に労働者が雇い止めの理由について証明書を請求した場合は遅滞なくこれを交付しなければなりません。また,雇い止め後に労働者から請求された場合も同様です。 ③ 契約期間についての配慮 使用者は,契約を1回以上更新し,かつ,1年を超えて継続して雇用している有期契約労働者との契約を更新しようとする場合は,契約の実体及びその労働者の希望に応じて,契約期間をできる限り長くするように努めなければなりません。なお,労働契約法17条2項は、不必要に短期の有期労働契約の反復とならないよう配慮すべき義務を定めています。この規定の趣旨は、使用者に対し当初から必要な期間を定めるように配慮することを求めることで、契約期間の長期化を促し、雇い止めをめぐる紛争の原因である契約更新そのものを減少させることにあります。
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