解雇のご相談
ご相談内容
当社は不動産の賃貸・販売事業を行っていますが、営業社員のAは、殆ど売り上げが無く、出勤しても外出先の報告をせず上司からの業務指示にも従わず反抗的な態度をとっています。また、社内の仕事の処理に関するルールを無視し、同僚とのトラブルもしばしば生じています。上司から再三注意してもAは態度を改めません。そこで、当社としてはAを解雇したいと考えていますが、どのように進めるべきでしょうか?
回答
(1)解雇は最終手段。最後まで退職届を提出するよう努力すべきです。
解雇は結果的に労働者の就労,生活の糧を失わせることになりますので,きわめて重大な効果を持ちます。それゆえ,法律・判例の厳格な要件をクリアしなければ,解雇の効力は認められません。また、実際にも解雇は法的紛争に繋がる可能性が非常に高いのが現状です。それゆえ、退職届を受け取ることこそがトラブルを回避する最善の方法なのです。
(2)解雇に際しての注意点
- ① 証拠の収集
上記のとおり、解雇は非常に紛争に繋がりやすい現状があります。そこで、法的紛争に耐えうるだけの証拠を収集します。 - ② 解雇が法律や就業規則上の手続条項に違反していないかチェックしましょう。
- ③ 解雇の理由を労働者に説明し、弁解の機会を与えましょう。
- ④ 最後まで退職を促し退職届をとるようにしましょう。
弁護士に依頼した場合
情報の収集を指示すると共に、解雇の要件を慎重に検討します。
解雇が有効になるためには法律及び判例上の厳格な要件を備える必要があります。その要件を基礎づける証拠としてどのようなものが必要となるかを具体的に指示します。
また、解雇の要件を具備したか否かは、複雑微妙な判断が要求されるため、事前に弁護士とよく打ち合わせて解雇を実施することになります。解雇に至るまでのスケジュールを策定いたします。
また、弁護士は後の裁判に提出できる解雇理由書、解雇通知書等のドラフトを行います。
場合によっては貴社に代わって労働者(労働組合)と交渉します。
解雇後の紛争に対応いたします。
例えば、解雇後に団体交渉を申し込まれた場合、会社に代わって団体交渉に応じます。
弁護士費用
法律相談料
60分10,500円(税込)
但し、30分延長ごとに5,250円(税込)の追加料金がかかります。
着手金(ご依頼頂いた際に弁護士が頂く代金)
※ご事情により分割払いによるお支払い等ご要望をうかがいます。
- 1 弁護士名義による内容証明郵便の発送及び会社との交渉
210,000円~円(税込)・・(但し、1時間1万500円のタイムチャージ方式を基準とします。) - 2 賃金仮払仮処分の申し立て
42万円~円(税込)・・経済的利益の8%が基準となります。 - 3 労働審判の申し立て
42万円~円(税込)・・求める経済的利益の8%が基準となります。 - 4 通常訴訟(第一審訴訟手続)
42万円~円(税込)・・求める経済的利益の8%が基準となります。
但し、仮処分又は労働審判から通常訴訟に移行した場合は、減額致します。
成功報酬(事件の成功の程度に応じて頂く対価です。)
- 1 弁護士名義による内容証明郵便の発送及び会社との交渉
得られた経済的利益の16%+消費税 - 2 賃金仮払仮処分の申し立て
得られた経済的利益の16%+消費税 - 3 労働審判の申し立て
得られた経済的利益の16%+消費税 - 4 通常訴訟(第一審訴訟手続)
得られた経済的利益の16%+消費税
※上記は一応の目安で、事案の難易度に応じて、事前に確定額をご提案いたします。また、成功報酬の最低額は42万円とさえていただいています。
Q&A
【解雇問題一般について】
●Q 解雇とは?
A 解雇とは,使用者による一方的な労働契約の解約です。労働者の承諾は要件ではありません。その意味で,労働者と使用者の合意により労働契約を終了させる合意解約とは異なります。
●Q 解雇は,どういう場合になされるのですか?
A 解雇は,その事由(理由)によって,次の3つに大別することができます。
①懲戒解雇・・企業秩序違反に対する制裁の側面を持つ解雇です。例えば,経歴詐称,無断欠勤,犯罪行為などをした場合に,就業規則の懲戒事由に該当することを理由に解雇される場合です。
②整理解雇・・使用者側の経営上の必要性(経営悪化に伴う余剰人員の削減など)に基づく解雇です。
③普通解雇・・①,②以外で,様々な理由で労働契約を履行し得ない場合になされる解雇です。
●Q 解雇は自由にすることができますか?
A 解雇は結果的に労働者の就労,生活の糧を失わせることになりますので,きわめて重大な効果を持ちます。それゆえ,法律・判例で厳格な要件をクリアしなければ,解雇の効力は認められません。法律も,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当と認められない解雇は無効になると明確に定めています(労働契約法16条)。ですので,経営者は,労働者に解雇事由(理由)があると考えたとしても,その理由を慎重に検討するとともに,慎重な手続の下に,解雇をしなければなりません。
●Q 解雇予告とは?
A 使用者が労働者を解雇しようとする場合,少なくとも30日前にその予告をしなければなりません。30日前に予告をしない場合は,30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません(予告手当 労働基準法20条1項)。また,1日分の平均賃金を支払った日数だけ,予告日数を短縮することができます(同条2項)。また,予告手当は,解雇の効力が発生する日に支払わなければなりません(即時解雇をする場合は,解雇の意思表示をした日)。予告手当を支払うことなく行われた即時解雇の申し渡しは,予告手当が支払われるまで,又は,30日が経過するまで解雇の効力が生じません。
※ 平均賃金・・・算定しなければならない事由の発生した日以前3ヶ月間にその労働者に対して支払われた賃金の総額(但し,臨時に支払われた賃金及び3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(ex夏冬の賞与)は参入しない)を,その期間の総日数で除した金額をいう(労働基準法12条1項本文,4項)。
●Q 解雇された労働者のとる方法
① 使用者に対して,退職証明を求める。
使用者は,労働者より,退職の事由(解雇理由),使用期間,業務の種類,その事業における地位,賃金について証明書を請求された場合は,遅滞なくこれを交付しなければなりません(労働基準法22条)。この書面を見ることで,解雇されたのか,合意解約なのか,解雇の理由は何か,を把握することができます。解雇理由は具体的に記載しなければならないことになっていますので,もし証明書に「労働者の適格性の欠如・喪失」などと抽象的理由しか書いてなかった場合は,さらに使用者に対して文書で説明を求め,回答させる場合もあります。
② 解雇が,法律や就業規則上の手続条項に違反していないかチェックする。
③ 退職を前提とした行動をとらず,就労の意思を明らかにする。
例えば,解雇の撤回を求め,就労の意思がある旨を内容証明郵便等の書面で通知します。他方で,退職金の請求などは,退職を前提とした行動ですので,解雇を争う場合は控えられます。
これに対し,解雇後に離職票の受領,健康保険証の返却,解雇予告手当や退職金の振り込みを受けたことによって,解雇の効力を争う権利がなくなることはありません。もっとも,退職金や解雇予告手当が振り込まれてきた場合は,これを返還・供託するか,労働者において預かり保管し,以降発生する賃金の一部に順次充当する旨を内容証明郵便で通知することがよくあります。
④ 労働者の解雇後の生活
(1) 雇用保険(仮給付制度)の受領
(2) 使用者から支払われた退職金等の充当
(3) 他社での就労
【解雇問題の解決方法について】
●Q 解雇の効力をめぐる紛争の解決方法
①示談交渉・・当事者間での交渉による解決を図る
②団体交渉・・労働組合を通じての交渉による解決が求められることがあります。
②労働局,労政事務所等の自治体のあっせんによる解決
③裁判所を利用した解決(労働審判,仮処分,本訴)
●Q 労働審判を利用する場合どうなりますか?
A 労働審判は,3回以内の期日で審理が終わりますので,スピーディな解決が期待できます。また,調停が成立しない場合の審判で,労働契約の終了と引換に金銭的な給付を命ずることができるとされています。
他方で,審判に対する異議が出された場合には,自動的に本訴に移行することとされています。
●Q 仮処分を利用する場合どうなりますか?
A 一般的には,労働契約上の権利を有する地位を仮に定める「地位保全仮処分」と賃金の仮払いを求める「賃金仮払い仮処分」の双方を同時に申し立てがなされています。
申し立て後,審尋(しんじん)期日という裁判をするための日取りが決められ,その期日に使用者側,労働者側の双方から主張・証拠(疎明)の提出がなされることになります。
この際,証拠(疎明)の資料としては,労働者側からは,解雇通知書,内容証明郵便,就業規則,業務記録,賃金明細書,録音テープ(反訳書)等の他,陳述書や聴取書など労働者等の供述を記録したものも提出される。
この結果,裁判所が賃金仮払いの決定を出した場合,使用者はその決定に従って賃金を支払わなければならなくなります。
もっとも,仮処分は本訴の結果が確定するまでの暫定的な決定です。
●Q 本訴を利用する場合どうなりますか?
A 一般的には,①地位確認の訴えと,②賃金請求の訴えを提起されています。
●Q 労働審判,仮処分,本訴いずれを選択すべきですか?
A 仮処分を申し立てた後,本訴で最終的な結論(第1審まで)が出るまで,一般的には,1年~2年位かかるといわれています。ですので,当事者間に深刻な対立が無く調停成立の見込がある場合などは,スピーディな解決が期待できる労働審判を利用することがよいといえます。
他方で,労働審判は,調停が成立せず,審判がなされた場合でも,当事者から異議が出されれば,本訴に自動的に移行します。それゆえ,当事者間に深刻な対立がある場合(例えば,労働者が復職を求め,使用者がそれに応ずる見込が無い場合など)には,労働審判だけでは解決ができず,結局本訴に移行することになってしまう可能性が高いといえます。このような場合は,最初からいきなり本訴を提起することも考えられます。
もっとも,このような場合に労働審判を申し立て,地位確認の審判が認められれば,それが仮処分決定を得るための有力な疎明資料(証拠)となることもあります。また,労働審判を経た後の本訴の進行は,既に当事者から主張・証拠が出された後なので,比較的迅速に審理が進められるという実情もあります。従って,当事者間の対立が深刻である場合でも,労働審判を申し立てる実益は場合によってはあるといえます。
【普通解雇】
●Q 就業規則に普通解雇の条項が規定されていない場合,解雇はできませんか?
客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当と認められれば,規程がなくても解雇はできると解されます。
●Q 就業規則に個別に普通解雇の事由が規定してありますが,いわゆる包括条項や一般条項の規程がない場合,その個別の解雇事由にはあたらない以上,解雇はできないのでしょうか?
A 特段の事情がない限り,就業規則の解雇事由は例示列挙と考えられます(従来の裁判例は限定列挙と解するものが多くありましたが,最近の裁判例をみると例示列挙と解するものが増えています。)ので,就業規則に定める解雇事由以外の理由で解雇することができないわけではありません。従って,就業規則に個別的に定めの無い事由であっても,客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当と認められれば,解雇はできると考えられます。
もっとも,無用の議論を避けるためにも就業規則の解雇事由の1つに包括条項を規定するなどの整備をしておいた方がよいでしょう。
●Q どういう場合に,非違行為(落ち度)を理由として解雇できますか?
非違行為(落ち度)を理由とする解雇は,職務懈怠,勤怠不良(無断欠勤,遅刻等),業務命令違反,職場規A 律違反等を対象に行われます。また,当該行為が懲戒解雇事由に該当する場合でも,企業の側で,労働者の解雇後の生活に対する配慮等から懲戒解雇を選択せずに,普通解雇とすることも少なくないようです。
かかる非違行為を理由とする解雇が有効と認められるためには,客観的に合理的な理由と社会通念上相当と認められる事が必要です(労働契約法16条)が,この判断はケースバイケースでなされます。
具体的には,勤怠不良等の回数・程度・期間・態様(やむを得ない理由の有無等),職務に及ぼした影響,使用者からの注意・指導と当該従業員の改善の見込ないし改悛の度合い,当該従業員の過去の非行歴や勤務成績,過去の先例の存否等を判断要素として解雇の有効性が判断されます。
従業員が,欠勤・遅刻・私用外出を頻繁に繰り返し,合理的な理由を述べないばかりか,「賃金が安いのだから問題がない」などと反省の態度がなく,上司が是正するように注意しても,これを改めないような場合は,当該従業員を解雇しうるといえます。
会社としては,上記態様を裁判で立証できるように,日常的な出退勤状況,勤務態度の管理,指導などの証拠化(証拠にできるようにメールや書面で指導・命令する)を日頃から準備するとよいでしょう。
また,非違行為を理由とする解雇は,懲戒解雇の形を取っていない場合でも,実質的には制裁としての機能を営むことから,懲戒解雇の有効要件に準じて慎重に解雇手続を行った方がよいでしょう。具体的には,解雇という処分を選択する以上,非違事由の程度・重さは相応に重いものでなければならず,適正手続の要請(処分を決定するに先立ち,最低限,非違行為について労働者に弁明の機会を与える等)も十分に考慮する必要があります。
●Q どういう場合に,傷病,心身の故障があって従前の職に復帰するのが困難であることを理由に解雇できますか?
A 多くの企業では,労働者の死傷病による欠勤が一定期間以上にわたる場合,これを休職とし,休職期間満了時点でも復職が困難な場合,これを解雇したり,休職期間の満了をもって退職と扱う旨の就業規則の定めています。このような就業規則の定めに該当するか否かという形で,解雇(退職)の有効性が争われることが多いと言われています。
職種や業務内容を特定した雇用契約においては,当該従業員が,休職明け後,従前の職に復帰することが出来ないと客観的に認められる場合,解雇することは可能であるといえます。もっとも,復帰することができるか否かの判断は,医師の診断によらざるを得ない場合が多いので,医学的な証拠の確保の観点から,従業員のかかりつけの医師の診断書の提出を求めたり,企業が指定する産業医等の受診を求めたりするとよいでしょう。
これに対し,職種や職務を特定せずに雇用契約を締結した従業員については,使用者は配転命令権を有しています。それゆえ,当該従業員が疾病により現に担当している職務はなしえないものの,従業員から他になしうる職務があるとの申出があり,しかも,それが当該労働者において配置される可能性のある職務であれば,その職務への配転可能性を検討する必要があるといえるでしょう。従って,かかる検討をなさずになした解雇は無効となる可能性が高いといえます。
●Q どういう場合に,能力不足を理由に解雇できますか?
A 雇用関係の維持ができないといえるような重大な能力不足がなければ解雇することできないと考えます。
① 新卒採用等,特別なスキル・役割・成果等を特定しない雇用の場合
我が国においては,一般的に新卒の総合職として採用される者は,職種・職務の限定はなく社内に於ける様々な職務を通じてキャリアを形成していくことが予定されているといってよいでしょう。その様な状況を前提にすれば,単なる職務上の能力が不足していることを理由に「能力不足」として解雇することは難しく,企業経営や運営に現に支障が生じあるいは損害が生ずるおそれがある場合など著しい能力不足であることが客観的に認められる場合にはじめて能力不足と言い得るものと考えます。
そして,人事考課の評価という相対評価の下で,平均以下であるというだけでは,能力不足を理由に解雇することは難しいといえます。相対評価である以上,必ず平均以下の者はでてきますので,平均以下の者を能力不足としては,使用者は毎年のように一定割合の従業員を解雇できることになり,かかる結論が不当なのは明らかです。
② 地位が特定された幹部職員,職種・職務が特定された専門職の雇用
例えば,新規事業を早期に立ち上げるために,職務経験を有する者を事業部長と地位を特定してヘッドハンティングするとともに,当該事業のスペシャリストを職種・職務を特定して中途採用したような場合です。
このように,労働者が有する能力,経歴,経験に着目して労働契約を締結した場合に,当該労働者が期待された能力・技能を発揮できなければ,一般の新卒労働者以上に,解雇が認められやすくなります。
これは,雇用契約上,その労働者に求められる能力・技能が特定され,会社側もこれに見合った賃金を支払うという関係があるため,能力・技能を発揮できなければ,それだけで重大な債務不履行に該当するといえるからです。
そして,地位が特定された社員を能力不足を理由に解雇するに先立ち,使用者は配転等をせずとも解雇することが可能です。
また,職種を特定して専門職として採用した者が,当該職種・職務を十分にこなし得ない場合は,同様に解雇することも可能ですが,具体的事情によっては配置転換等も考える必要があります。もっとも,この場合でも,一般の社員に比べれば配置転換等の義務ないし範囲は,狭く考えてよいと思われます。
【整理解雇】
●Q 整理解雇はどういう場合にできますか?
A 整理解雇とは,使用者側の経営事情等により生じた従業員数削減の必要性に基づき労働者を解雇することをいいます。このような整理解雇は,判例上次の4つの要件を満たさなければ解雇権の濫用になると解されています(労働基準法16条)。
①人員削減の必要性が存在すること(人員削減の必要性)
②解雇を回避するための努力が尽くされたこと(解雇回避努力)
③解雇される者の選定基準及び選定が合理的であること(被解雇者選定の合理性)
④事前に,説明・協力義務を尽くしたこと(解雇手続の妥当性)
※近時判例によれば,上記4要件は判断要素の類型化に過ぎないとし,同要素を総合考慮して解雇権の濫用を判断するようになっているとされています。
●Q ①人員削減の必要性とは?
A 人員削減措置として解雇することが企業経営上の十分な必要性に基づいていること,又はやむを得ない措置と認められることである。
必要性の程度としては,人員削減をしなければ企業が倒産必至または近い将来倒産が予見される状況にあることまで要求されず,企業の合理的運営上やむを得ない必要に基づくものであれば足りると解されています。
具体的には,企業全体としてみれば収益が上がっている場合でも,不採算部門を閉鎖して人員削減を行うことも場合によって合理的な必要性があると認められます。
●Q ②解雇回避努力とは?
整理解雇は,業績不振・業務縮小など経営者側の事情に基づく事由によるものであり,労働者に責任のない事由により労働者を失職させることになりますので,出来うる限り整理解雇は避けるようにすべきと言えます。
従って,整理解雇に際し,希望退職者の募集,労働時間の短縮,一時帰休,配転等なしうる解雇回避努力の検討を行っていないような場合には,裁判例では,解雇回避義務が尽くされたとは認められない傾向にあります。
ただ,解雇回避努力義務は,当該具体的事情のもとにおいて,状況に応じて解雇回避の努力をなす義務ですので,企業の経営状況,企業規模,従業員構成などを踏まえて個別具体的に判断されます。
それゆえ,解雇回避努力義務として,整理解雇前に希望退職者の募集を必ず行わなければならないわけではなく,また,希望退職者の募集の範囲も必ずしも全社的に行わなければならないものではありません。
●Q ③整理基準の合理性とは?
A 整理解雇は,経営上の必要性から,従業員の中から解雇対象となる者を選別して実施されますが,その選定は,客観的に合理的な選定基準を事前に設定し,公正に適用してなされなければなりません。
具体的な基準としては,(1)人事考課(勤務評定),(2)年齢,(3)企業への貢献度,(4)労働者の再就職可能性や家計への打撃,(5)非正規労働者か否か,等を基準とするもの多数ありますが,これが合理的な基準か否かは,事案の具体的事情に応じて個別的に判断されます。
また,経営者は選定基準を解雇前に作成し従業員に示すことが,後に訴訟になった場合に人選の合理性を立証するために重要であると言えるでしょう。
●Q ④事前に,説明・協力義務を尽くしたとは?
A 整理解雇にあたっては,経営者は労働者や労働組合に対し,整理解雇の必要性とその内容(時期・規模・方法)及び解雇に対する補償内容などについて納得を得るように十分な説明を行い,誠意をもって協議をすべき信義則上の義務を負います。
一般的には,人員削減の内容が決定した段階で,速やかに説明会などを開き,人員削減をせざるを得なくなった経営状況,これまでのコスト削減策を服務経営改善努力,今後の経営の見通し,人員削減規模の根拠・人員削減の時期,解雇回避努力の内容(配転・出向・希望退職者の募集とその条件など),人選の選別基準及びこれに関する評価項目の内容等を説明し,労働者又は労働組合から質問のあった事項について,誠意を持って回答することが必要となります。
また,経営状況を説明するにあたり,労働者ないし労働組合から求められれば,貸借対照表・損益計算書など公表された過去の財務諸表を提示し,事情を説明する必要もあります。
●Q 会社解散に伴う整理解雇の注意点は?
会社の解散・清算に際してなされる解雇は,一般的には整理解雇の法理は適用されないと言える場合が多いと言えます。
もっとも,①偽装解散(偽装営業譲渡)の場合・・解散会社と実質的に同一性を有する新会社が事業を継続しており,単に労働組合壊滅や組合員排除のための偽装解散に過ぎない場合・・などは,(1)実質的に経営主体が同一である,(2)法人格否認の法理が適用されるとして,新会社の雇用責任を追及される可能性があります。
また,②真正解散の場合・・真に会社が解散した場合・・であっても,企業の存続が容易なのに労働組合壊滅のために会社解散,全員解雇した場合や,雇用存続向けた努力が認められない場合などは,(1)解散会社の解雇を無効とする,(2)清算会社への地位確認・賃金仮払いを認める,(3)会社代表者個人の会社法429条による責任追及などによって,労働者が救済される余地もあります。
●Q 経営者が整理解雇を適正に実施するためには?
整理解雇を適正に実施する要件の一般論としては説明したとおりですが,各企業における個別具体的事情によって,準備・実施すべき事項が異なります。それゆえ,適正な整理解雇を完遂するには,整理解雇を実施できるか否かの要件の吟味,実施する場合のスケジュールの策定などについて,労働法実務に精通した弁護士のアドバイスを受けることをお勧めします。
【懲戒解雇】
●Q 懲戒解雇とは
A 懲戒解雇とは,企業秩序違反行為に対する制裁罰である懲戒処分として行われる解雇のことです。
●Q 懲戒解雇を有効要件
A 懲戒すべき事由があるからといって,使用者は自由に労働者に対し懲戒処分をすることはできず,「使用者が労働者を懲戒することが出来る場合において,当該懲戒が,当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして,客観的に合理的理由を欠き,社会通念上相当と認められない場合は,その権利を濫用したものとして,当該懲戒は無効とする」(労働契約法15条)として,法律で懲戒処分の濫用は禁じられています。
それゆえ,一般的には懲戒解雇処分は次のとおりの要件を満たす必要があります。
(1) 懲戒事由等を定める合理的な規程が存在すること
ア 就業規則等に懲戒事由及び懲戒の種類が明定されていること
イ アの定めが労働者に周知されていること
ウ アの規程の内容自体が合理的であること
(2) (1)の規程に該当する懲戒事由が実際に存在すること
(3) 適正手続を経ていること
就業規則や労働協約上,経るべき手続が定められている場合は,この手続を経る必要があります。また,このような規程が無い場合でも,本人に弁明の機会を与えることが最小限必要となります。
(4) 解雇規制に反しないこと
解雇の一種であるため,労働契約法16条(解雇権濫用)や個別法令上の解雇制限にも服します。
●Q 具体的な懲戒解雇事由
判例上,典型的な懲戒事由としては,①経歴詐称,②職務懈怠,勤怠不良,③業務命令違反,④業務妨害,⑤職場規律違反,⑥私生活上の犯罪,非行,などがあります。
●Q 懲戒解雇から普通解雇への転換
会社が従業員を懲戒解雇したところ,その従業員が解雇の効力を争い訴訟となり,証拠調べの結果,当該従業員の行為は就業規則の懲戒解雇事由に該当するか否かは微妙な状況になった場合を考えます。この場合に,使用者が,懲戒解雇の意思表示には普通解雇の意思表示も含まれていたので,仮に懲戒解雇が無効であっても普通解雇としては有効である,と予備的に主張することがあります。これが懲戒解雇から普通解雇への転換です。このような転換は,懲戒解雇と普通解雇では根拠・要件・効果が異なることなどから,近時の裁判例では殆ど認められていません。
もっとも,このようなケースで一切普通解雇の主張が認められないというのも具体的妥当性を欠きます。
そこで,上記のような訴訟の係属中に,懲戒解雇とした事由をもって,普通解雇に該当するものとして普通解雇をした場合,その普通解雇が客観的合理性を欠き,社会通念上相当でないと認められない限り,有効なものとして認められることもあります。
●Q 経営者が懲戒解雇を適正に実施するためには?
懲戒解雇は説明のとおり厳格な要件の下に認められますので,要件を満たすか否かとう検討,及び解雇を実施するまでのスケジュールの作成等が必要になります。このような作業は,後で訴訟で争われるリスクを考慮し,労働法に精通した弁護士に相談した方がよいでしょう。