退職勧奨のご相談
ご相談内容
当社は、経営の合理化のため、各地にある工場を集約し、稼働率を上げることを決定しました。この経営判断に伴い、従業員に対し、転勤を要請し、大部分の従業員の理解は得られましたが、数名の者が転勤を拒否しています。 当社は、転勤を拒否している者に対し、このまま転勤を拒否すれば懲戒解雇にもなりうることを説明し、転勤ができないのであれば退職するように勧奨したいと考えています。その際、注意すべき点について教えてください。
回答
- ①退職勧奨は,自由することができますが,退職勧奨を受ける側もそれに応ずるか否か自由に決定することが出来,退職勧奨に応ずる義務はありません。
- ②労働者が自由な意思決定を妨げられる態様の退職勧奨は許されず,説得の回数,説得のための手段・方法は社会通念上相当であることが求められ,その態様が強制的であったり執拗なものである場合には不法行為を構成し,使用者に損害賠償責任を生じさせることもあります。
- ③それゆえ、(1)勧奨する上司は一人又は二人とし、従業員の自由な意思を尊重できるような雰囲気で行い、(2)時間は20分~30分程度とし、就業時間中に行い、(3)場所は会社施設とし、自宅へ押しかけたりはしない、(4)回数は、2,3回程度とする等の慎重な配慮が必要です。
解説
退職勧奨とは
退職勧奨とは,使用者が労働者に対し,自発的な退職意思の形成を促すためになす説得などの行為のことをいいます。
このような退職勧奨は,自由することができますが,退職勧奨を受ける側もそれに応ずるか否か自由に決定することが出来,退職勧奨に応ずる義務はありません。
もっとも,自由に退職勧奨をできるとしても,労働者が自由な意思決定を妨げられる態様の退職勧奨は許されず,説得の回数,説得のための手段・方法は社会通念上相当であることが求められ,その態様が強制的であったり執拗なものである場合には不法行為を構成し,使用者に損害賠償責任を生じさせることもあります。
裁判例
退職勧奨の方法が違法であり、不法行為を構成すると判断された例としては、①傷病により休職していた労働者が復職するに際し、上司5名が、約4ヶ月間に、復職について30数回の「面談」「話し合い」を行い、その中に約8時間にわたるものもあり、面談において「能力がない」、「別の道があるだろう」、「寄生虫」、「他の乗務員のめいわく」等と述べ大声を出したり、机を叩いたりし、また、労働者が断っているにもかかわらず、同人の寮にまで赴き面談して退職勧奨した事案について、その頻度、面談時間の長さ、言動は、社会通念上許される範囲を超えているとして、慰謝料請求を認めた事例(全日本空輸事件・大阪地判平11.10.18・労判772.9、同事件・大阪高判平13.3.14・労判809.61)、②管理職が連日、勤務時間内外にわたり執拗に希望退職届を出すよう強く要請し、希望退職期間経過後は、暴力行為や仕事差別などの嫌がらせによって退職を強要したことについて慰謝料請求を認めた事例(エール・フランス事件・東京高判平8.3.27・労判709.69)、③2名の高校教諭に対し、うち1名については4ヶ月の間に11回、もう1名については5ヶ月の間に13回にわたり、1回20分から2時間強に及ぶ退職勧奨を行い、その間、退職するまで勧奨を続ける旨を繰り返し述べたり、退職しない限り、所属教員組合の要求に応じないとの態度を示したり、研究物等の提出を求めたりしたことについて不法行為による慰謝料請求を認めた事例(下関高校事件・最判昭55.7.10・労判345.20)、夫婦でデザイナー業務に従事していた労働者に対し、2次にわたる退職勧奨をしたが、2次退職勧奨は、デザイン室の閉鎖を宣言し、デザイン室への発注を停止するものであり、仕事を取り上げてしまった事案について、「勧奨といいながら、デザイン室を閉鎖し、しかも、他への配転を検討することもなく、退職を勧奨することは、退職の強要ともいうべき行為であり、その手段自体が著しく不相当」として不法行為の成立を認めた事例(東光パッケージ[退職勧奨]事件・大阪地判平18.7.27・労判924.59)などがあります。