仮処分のご相談
ご相談内容
先日、当社に、裁判所から「地位保全及び賃金仮払い仮処分命令申立書副本、疎明資料写し」という書面が届きました。同封されていた書面を読むと、先月解雇した従業員が,解雇は無効であったなどとして、当社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認し、それを前提とした賃金の仮払いを求めていることが分かりました。当社としては、慎重に検討した上で結論を出したのであり、今さら判断を変えるつもりはありません。そもそも仮処分というのはどのような手続なのでしょうか?そして,どのように対応すればよいでしょうか?
回答
① 仮処分とは
解雇に納得がいかない労働者は,解雇の有効性を争って貴社との雇用関係の確認及び賃金の支払を求めて訴訟を提起することができます。ただ,訴訟は非常に時間がかかるため(通常,訴訟の開始から判決がなされるまでは半年以上かかります。)、最終的な結論(判決)でるまで,労働者は賃金収入がなく,生活に支障を来す場合もあります。そこで認められているのが訴訟を提起する前に一定の裁判所の判断を仮に出して貰う「仮処分」の制度です。仮処分の手続で,裁判所が、解雇は有効であると判断した場合は,仮処分の申請を却下します。他方で,解雇は無効である可能性が強いと判断すれば、会社に対して、(裁判所が定める期間内は)給料を支払い続けるよう命令することになってしまいます。何回か審尋(裁判官が双方当事者の話を聴く手続)を重ねて、裁判所が一定の心証を形成すると,裁判所から和解が勧められることが通常です。この段階ではある程度裁判所より結論の見通しが出されますので,それに沿って金銭解決をするか否か,するとしてどの程度の金額にするか等について検討することになります。和解で解決できない場合は、裁判所が決定(仮処分命令、あるいは却下決定)を出します(決定は、長くとも申立てから2~3か月程度で出されます)。
② 対応方法
貴社としては,まずは解雇の有効性を主張立証する必要があります。すなわち,解雇に合理的な理由があり,それが相当な処分であったことを,具体的事実を整理した上で,証拠と共に裁判所へ提出しなければなりません。そして,裁判官に対して貴社に有利な心証を形成させ,有利な裁判(却下)又は貴社に有利な条件での和解へと繋げる必要があります。ただ,通常業務の中で裁判に触れることはないでしょうから,貴社独自で効果的な主張立証を行うのは難しいと思われます。できるだけ速やかに,労働問題に強い弁護士に相談なされることをお勧めします。
仮処分の対応方法
① まずは,弁護士に相談
通常業務の中で裁判に触れることはないでしょうから,貴社独自で効果的な主張立証を行うのは難しいと思われます。できるだけ速やかに,労働問題に強い弁護士に相談なされることをお勧めします。
② 事実関係の確認,証拠の整理
解雇の正当性を基礎付ける具体的事実関係を確認し,それを裏付ける証拠を整理する必要があります。
③ 主張書面及び証拠の作成
貴社の解雇の正当性を主張する書面を裁判所へ予め提出する必要があります。また,主張を支える証拠も予め証拠化して裁判所へ提出しなければなりません。
④ 証人の確保,審尋への対応準備
労働事件では,証拠書類などの客観的証拠のみならず,労働者の上司や同僚の証言などがポイントとなることがしばしばあります。適切な証人を選定し,裁判所での審尋に備えた準備を周到に行う必要があります。
⑤ 和解における解決水準の検討
貴社の主張が裁判所に認められるのか否か,十分に検討した上で,最終的な裁判所の判断見込をつけ,適切な和解の水準を決める必要があります。
弁護士に依頼した場合
① 速やかな主張立証の準備
まずは,貴社の解雇の正当性を基礎付ける主張立証を準備するべく,貴社担当者より詳細な事情をヒアリングし,証拠の確保を行います。
② 主張書面及び証拠の作成
勝訴を勝ち取るために的確な主張を記載した書面を速やかに作成し,裁判所へ提出します。また,主張を支える適切な証拠も併せて裁判所へ提出します。
③ 裁判所への出頭
裁判所で開かれる期日に貴社担当者と共に,又は,貴社担当者に代わって出頭します。裁判官に対し,貴社の解雇の有効性を理解させるべく,効果的なプレゼンテーションを行います。また,裁判官より,各種確認や質問がなされることもありますので,的確に対応します。また,出頭した労働者に対し,釈明を求めるなどして,貴社に有利な展開を目指します。
④ 証人尋問対応
審尋手続の中で,キーとなる人物(労働者の同僚や上司など)の証人尋問が行われます。そこでの発言内容によって,裁判官は心証を形成します。そこで,事前に,証人(貴社の担当者)と綿密に打ち合わせをし,想定問答を行うなどして,裁判所における証人尋問に備えます。また,証人尋問当日も,貴社側の証人が適切に供述を出来るようにし,他方で労働者の供述を弾劾するなど,尋問技術を駆使して対応します。
⑤ 和解への対応
双方の主張立証が終わると,裁判所より和解を勧告されることが通常です。和解は,いわば交渉であり,裁判の結果に対する見込を考慮して,最善の条件を引き出すように努めます。
当事務所における解決例
仮処分手続で会社に有利な条件での勝訴的和解
退職した看護師より解雇の無効,地位確認,賃金仮払いの仮処分を提起された訪問介護事業を行う株式会社よりご依頼を受け,対応しました。その看護師は,ある日突然会社に来なくなり,いわば職場放棄をした者であり,会社は解雇などしていない,働いていない以上賃金を払いいわれはないとして,争いました。会社担当者から事情を聴取し,証拠を整理した上で対応し,裁判所の有利な心証を得ることができました。仮処分は理由がないことを前提に,低水準の解決金を支払う旨の和解が成立しました。
弁護士費用
法律相談料
30分5、250円(税込)
但し、30分延長ごとに5,250円(税込)の追加料金がかかります。
着手金(ご依頼頂いた際に弁護士が頂く代金)
※ご事情により一部分割払い,後払いによるお支払い等ご要望をうかがいます。
- 1 弁護士名義による内容証明郵便の発送及び労働者との交渉
10万5,000円(税込) - 2 賃金仮払仮処分対応
42万円(税込) - 3 労働審判対応
42万円(税込) - 4 通常訴訟(第一審訴訟手続)対応
42万円(税込)
成功報酬(事件の成功の程度に応じて頂く対価です。)
- 1 弁護士名義による内容証明郵便の発送及び会社との交渉
得られた経済的利益の20%+消費税 (但し,最低21万円) - 2 賃金仮払仮処分の申し立て
得られた経済的利益の25%+消費税 (但し,最低21万円) - 3 労働審判の申し立て
得られた経済的利益の25%+消費税(但し,最低21万円) - 4 通常訴訟(第一審訴訟手続)
得られた経済的利益の25%+消費税(但し,最低21万円)
※上記は一応の目安で、事案の難易度に応じて、事前に確定額をご提案いたします。
Q&A
Q1労働仮処分の手続の流れを教えてください?
A 労働者が解雇(または雇い止め)を命じられた場合に、職場復帰にこだわらないならば、労働審判を利用して早期に(原則3回以内の期日で終了します)会社から金銭を支払ってもらうのと引換えに退職するという内容の調停を成立させ、それで解決とする方法があります。それに対し、職場復帰にこだわりたいと考える労働者の場合は、地位確認、解雇無効確認等の訴訟を提起してくることが想定されます。訴訟は非常に時間がかかるので、解雇された労働者は就職ができなければ生活に支障を来し、訴訟を続けられなくなってしまう可能性もあります。そこで認められているのが「仮処分」の制度です。裁判所が、解雇は無効である可能性が強いと判断すれば、会社に対して、(裁判所が定める期間内は)給料を支払い続けるよう命令してくれるので、労働者は給料をもらいながら当面の生活保障を確保したうえで、解雇の無効を争うことが可能となります。何回か審尋を重ねて、主張が出尽くすと、裁判所から和解が勧められることが一般的です。この段階ではある程度先が見えていますから、勝ち目がないと判断すれば、金銭解決について検討すべきでしょう。和解で解決できない場合は、裁判所が決定(仮処分命令、あるいは却下決定)を出します(決定は、長くとも申立てから2~3か月程度で出されます)。
Q2 労働仮処分には、どのような種類があるのですか?
A 代表的なものとして、ⅰ)(労働契約上の)地位保全の仮処分、ⅱ)賃金仮払いの仮処分、ⅲ)配転命令効力停止仮処分、ⅳ)退職強要差止め仮処分、などがあります。 (労働契約上の)地位保全の仮処分とは、復職を仮に認めるというものです。裁判所によっては、解雇無効が疎明されても、特別の事情がない限り、労働契約上の地位保全の仮処分については保全の必要性がないとして、認めようとしません。次に、賃金仮払いの仮処分とは、判決が確定するまでの間(実際には、概ね1年間とされることが多いようです)、給料を確保するための制度です。裁判所から賃金仮処分の決定が出されたにもかかわらず、債務者(会社のこと)が支払いをしない場合は、債権者(労働者のこと)は、保全執行を申し立て、強制的に支払いを受けることが可能です。なお、労働者が資産を保有している、近親者の収入で生活をしている、正社員として再就職した、といった場合は、会社は仮払いを免れる可能性があります。
Q3 労働仮処分に関する裁判例にはどのようなものがありますか?
A 代表的な裁判例として、外国航空会社が、悪化した経営を再建するために、職務及び勤務場所が特定された労働契約を結んでいるわが国所在の従業員に対して、いったん早期退職をさせたうえ、職務及び勤務場所の他、賃金・退職金制度を変更し、また、契約期間を1年間とするなどした新契約を締結することを申し入れ、これを拒否した従業員を解雇したのに対し、従業員らが解雇無効を主張するとともに、地位保全の仮処分命令申立てをしたという事案につき、解雇を有効とし、地位保全の仮処分命令申立てを却下したもの(スカンジナビア航空事件・東京地決平成7.4.13労判675-13)、休職処分とそれに引き続き解雇を受けた従業員が、休職処分と解雇の無効を主張するとともに、賃金仮払い仮処分命令申立てをしたという事案につき、休職処分及び解雇を有効とし、また、当該従業員は重機運転手として月額で数十万円を超える収入を得ており、妻の内職やアルバイトによる収入を併せて借金もせずに家族の生活を維持していることが認められ、保全の必要性も認められないとして、賃金仮払い仮処分命令申立て却下決定に対する即時抗告を棄却したもの(名古屋高裁金沢支決平成10.6.5)などがあります。