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先週のワイドナショーでの松本人志さんの

「『心愛』っていう名前をどういう思いで付けたのか。このニュースには全員一丸となって怒ってる。我が子なんですよね?凄く思うのは10歳でしょ、そんなとんでもない親でも子供って多分ね心底憎んではいなかったと思う。それを思うと凄く可哀想」

というコメントが心に残っています。

生まれた瞬間から虐待することを考えていた父親などまずいませんし

むしろ、

自分がこの子を虐待などすることなどあり得ない

と考えていた虐待親の方が多いのかもしれません

 

しかし、結果が生じてしまっている以上、何らかの法的責任を取らなければなりません

 

本日2月14日で父親は再逮捕になる予定とのことです

 

この父親の起訴罪名に関して

「殺人罪適用も」

というセンセーショナルな記事が出ていました

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190213-00000070-dal-ent

 

10歳の実子に対して繰り返された執拗な虐待

死亡という甚大な結果

児童相談所などとの傲慢なやりとり

社会的な影響

などに鑑みれば重い罪での処罰を、という世論になるのはわかります

 

ただ、そう簡単なものではありません

なぜなら、現時点の報道を踏まえると

司法解剖を経ても、心愛ちゃんの死因がわかっていないからです

 

この事件での最大の障壁は「死因不明」

 

死因が不明だとした場合、何罪での起訴になるのか

考えられる犯罪について検討してみたいと思います

 

 

【傷害罪】

(傷害)

第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

※ 複数の傷害行為があれば併合罪として懲役22年6月が上限になります

 

心愛ちゃんが亡くなられた時点で体に痣などが残っている場合、

その痣=傷害結果となりますので、

父親に対しては傷害罪が適用されることになります

 

ただ、亡くなられる日以前の暴行については

診断書や写真といった生じた傷害結果を証明する証拠がない限り

傷害罪としての立件は困難です

そのため、軽い暴行罪程度にしかならないかもしれません

(暴行)

第二百八条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

 

本日の再逮捕が傷害罪での再逮捕なのであれば

携帯電話に保存されていた動画によって

具体的な傷害状況が立証できると判断されたのかもしれません

 

★考察

 

傷害での立件が一番容易だとは思います

但し、心愛ちゃんが死亡したことの責任を父親に負わせていないことになります

 

しかも、心愛ちゃんの傷害の結果が

かすり傷や痣程度の軽い怪我しか証拠上明らかでないのであれば

父親が負う責任も、せいぜいかすり傷や痣を負わせたという程度の責任

 

死亡結果の責任を問う罪名ではない以上

かなり軽い罪での処罰にしかならず

執行猶予判決も十分ありうることになると思います

 

 

【傷害致死罪】

(傷害致死)

第二百五条 身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する。

※ 1つの罪で起訴された場合の上限は20年なので、懲役3~20年となります

さらに他の傷害結果も立証できれば、上限は30年まで上がります

 

おそらく、この罪での立件が一番しっくりくると思います

 

傷害罪は裁判官の裁判ですが

この傷害致死罪(殺人、保護責任者遺棄致死も)は裁判員裁判になり

一般の方から選ばれた裁判員が刑を決めることになります

 

★考察

 

この罪での起訴の最大の障壁が

「死因不明」

です

 

死因がわからなければ

父親の暴行によって、心愛ちゃんが死亡した

という因果関係を明らかにできない可能性が高くなってしまいます

 

冷たいシャワーを浴びせることによる心臓麻痺や、溺死の可能性を

司法解剖を行った法医(医師)が医学的に説明できるのであれば

当然傷害致死になるのですが

 

冷たいシャワーを浴びせることと

包丁で刺す、首を絞めることとは

行為の危険性がまるで違います

 

つまり、父親の行為に直接起因しない

他の要因(持病、急病など)によって死亡してしまった可能性があるのであれば

死亡の結果が父親の行為によって生じたとはいえない

つまり傷害致死の証明ができないということになります

 

肺から水が出てきたという報道がありますが

肺に水があれば、それが死因に直結するとは限りません

 

何らかの死因解明の糸口が見つかることを祈るしかありません

 

 

【殺人罪】

(殺人)

第百九十九条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

一般の方の感覚では、死なせてるんだから殺人だろう思われる方も多いと思います

ただ、そんな簡単なものではありません

 

★ 考察

そもそも、何をもって殺害行為とするのか

 

殺害行為としては

①冷たいシャワーを浴びせること、首をつかむこと

②ぐったりしている心愛ちゃんを放置すること

の2つが考えられます

 

まず、①はかなり厳しいです

 

冷たいシャワーを浴びせることや、首をつかむことは

それ自体が包丁で刺す、首を絞めるといった行為に比べて

人を死亡に至らしめる可能性のある行為とは言い難い

 

それに、

殺意あり=人の死亡結果が生じうる行為をそれとわかってやった場合

という定義なので、父親の殺意を認めることも困難でしょう

 

 

一方、②はあり得るかもしれません

 

心愛ちゃんをぐったりさせる原因を作ったのはほかでもない父親です

客観的に死亡の可能性が高まっていて

その父親が放置すれば死ぬ可能性があることを認識しながら、敢えて放置した場合であれば(いわゆる未必の故意)

不作為の殺人罪はあり得るかもしれません

 

しかし、

冷たいシャワーを浴びせることなどで

客観的に死亡の可能性が高まっていたのかどうかという点

そして、死亡の可能性を父親が認識していたかどうかという点

の立証は簡単ではないでしょう

 

そもそも死因がわかっていない以上、

素人の父親が、何をもって危険な状態が生じていたと判断できたのか

どのような生命の危険を示すサインが出ていたのかといった点の証明は難しい

 

そして、父親は、死ぬとは思っていなかったと供述するでしょうし

 

そうなると、理論的には可能性はありますが

②の不作為での殺人罪もかなりハードルは高いです

 

 

【保護責任者遺棄致死罪】

(保護責任者遺棄等)

第二百十八条 老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。

(遺棄等致死傷)

第二百十九条 前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

※ 傷害致死と同じ刑です

 

捜査機関は、傷害致死罪と保護責任者遺棄致死罪での立件を視野に入れていると思います

 

目黒の虐待もそうですが、

虐待事案の多くが、保護責任者遺棄致死罪での起訴になっています

 

ただ、保護責任者遺棄致死罪も

「死因不明」

が最大の障壁になります

 

★ 考察

 

冷たいシャワーを浴びせることなどで、

長時間ぐったりとしている心愛ちゃんが目の前にいるわけですから

本来は、なんらかの介護、治療の必要性を認識しているはずです

 

そもそも親という立場ですし

自ら虐待を行って衰弱させている以上

心愛ちゃんに対する保護義務は父親にあります

 

その父親が心愛ちゃんを放置(置き去り)したのであれば

遺棄行為にあたりますし

その結果、死亡したのであれば、保護責任者遺棄致死罪が成立します

 

ただ、「死因不明」なため

その結果、死亡した

といえるのかどうかの証明が非常に困難です

 

「死因不明」

つまりなぜ死んだのか

そして、いつ死んだのか(急死だったのか、衰弱の上での死亡だったのか)

がわからないのです

 

そうなると、

置き去りにしたから死亡したのか

置き去りにする前に既に死亡していたのか

がわからないことになりますので

 

遺棄(置き去り)と死亡との因果関係が不明ということになってしまいます

 

【まとめ】

僕も含め、報道に触れている人の大半が

父親に対しては心愛ちゃんの死亡結果の責任を取らせられるような適切な刑罰が課されるべきと考えているはずです

 

しかし、「死因不明」という大きな障壁によって

傷害罪でしか立件できない可能性も十分にあるというのが

報道を踏まえた現時点での法的な考察の結果です

 

子を持つ父親の立場として非常に考えることの多い事件です

 

被害者参加に注力している仲のいい弁護士は

「こういう事件こそ被害者の代理人として父親を尋問したいけど、今回は母親も逮捕されてしまっているし、心愛ちゃんは亡くなっているので被害者参加は現実的ではない」

と話していました

 

今後の捜査によって、死因が適切に解明され

そして、裁判員裁判によって適切な刑が科されることを望みます

 

abemaTV「有罪率99.9%」の刑事裁判で無罪連発勝訴請負人弁護士の信念とは

 

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