【「王子様」改名が話題に】名はすぐに変えられる?手続等を解説しました!!

コラム

「王子様」と命名された18歳の男性が

自ら家庭裁判所で改名手続きをしたというニュースが注目されました

 

しかも、本人が出演してインタビューに答えていたので

より注目されたように思います。

 

名を変えるというのは、身近な手続きではないと思いきや、

僕の友人も2人ほど、子供のころに改名をしていたとのことです

 

しかも、2000年頃に起きたいわゆるキラキラネームブーム(といわれていますが、それ以降ずっとキラキラネームブーム)

その時期に生まれて、キラキラネームをつけられた子たちが20歳を超えて自立し始める来年2020年ころから

キラキラネームを変えたいという「改名ブーム」が来るような気がしています。

今回の「王子様」はその先駆けなのかもしれません

 

なぜ、2020年以降に、「改名ブーム」がくるのかは後述します

まずは、基本的な手続きについてご説明します

 

名前の変え方は?

戸籍法では、改名の方法についてこう定められています。

戸籍法107条の2

正当な事由によつて名を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。」

 

つまり、改名をしたい人は

①家庭裁判所に申立をする
②家庭裁判所がその申立に「正当な事由」があるかどうか判断する
(申立時に提出された証拠のほか、裁判官が申立人に対して、対面もしくは書面で質問をして(審問、書面照会)、それに対して行われた回答を踏まえて判断)
③家庭裁判所が「正当な事由」ありと判断した場合は、改名の許可を出す
④家庭裁判所の改名許可の決定をもって市役所に届出

 

⇓これは家庭裁判所のHPにある名の変更申立書のフォーマットです

 

年齢は?

自分の名の変更を

自分で申し立てできるようになるのは

15歳から

です。

15歳未満は
法定代理人(親権者)が

要は親が申立を行うしかありません。

 

 

どういう場合に裁判所は許可するの?(「正当な事由」)

名は、個人の同一性を識別する重要な機能を持っています

要は、名前が同じなら同じ人、名前が違ったら別な人なんじゃないかな、という役割

また、例えば、逮捕された人間の前科なども名をもって判断している側面があります。

 

ですので、簡単に名を変えられるとなると混乱が生じてしまいますし

明日変わるかもしれない名を覚えることなどしなくなるでしょうから

名に対する信頼もなくなります

 

ですので、戸籍法は、

「正当な事由」がある場合に限って改名を認めているのです

 

では、「正当な事由」があるというのはどういう場合か

 

上記の通り、名を簡単には変えさせないというのが法律の建前なので

名を変更しないとその人の社会生活において著しい支障をきたす場合

簡単にいうと

名前変えないとめちゃくちゃ生きづらい、煩わしいんです

という場合に「正当な事由」があると判断されます

 

それゆえ

・個人的な趣味や気分

・親が嫌いなどという感情

・宗教的な信条

を原因とした改名は認められません

 

家庭裁判所のフォーマットには、8つの「申立ての理由」が書かれています

 

これらは、最高裁民事局というところが出した

どういう場合に「正当な事由」があるとされるのかについての見解

を反映させたものになります

 

1 奇妙な名である

今回の「王子様」もこれにあたるとして申し立てたのだと思います。

キラキラネームもほとんどこれにあたるのではないかと思います。

奇妙な名前は、

いじめられやすい、嘲笑の対象になる、初対面の人に笑われる、名前を間違えられる

などの精神的苦痛を伴う結果を生じさせやすく

これが社会生活上の不利益であることは明らかです

 

2 むずかしくて正確に読まれない

一部のキラキラネームはこれにあたるでしょうし

ほとんど読める人のいない当て字もこれにあたるでしょう

 

3 同姓同名者がいて不便である

これは、例えば、著名な犯罪者など否定的な評価が加えられている人と同姓同名であるような場合

もしくは

僕の地元岩手では、1クラスの半分くらいが「高橋」ということもあったのですが

同じ地域にいて、同じ氏と名のセットが10人もいたら

個人の識別だけでなく、郵便物の誤配、行政サービスのミスなども生じかねません

 

4 異性とまぎらわしい

過去に「〇子」という名の男性の改名が認められた件があります

 

5 外国人とまぎらわしい

名前にはカタカナも使っていいので、

外国人(婚姻、帰化、ハーフ等が理由)であると誤認されるケースはあり得ます

(参考)戸籍法施行規則60条

(※ 名前に使っていい文字の規定)

戸籍法第50条第2項の常用平易な文字は、次に掲げるものとする。
常用漢字表(平成二十二年内閣告示第二号)に掲げる漢字(括弧書きが添えられているものについては、括弧の外のものに限る。)
別表第二に掲げる漢字
片仮名又は平仮名(変体仮名を除く。)

 

6 神官・僧侶となった(やめた)

宗教的な信仰から名前を変えたいというだけでは認められませんが

宗教上の地位に継続的になる、生活の中心が宗教になるような場合

改名が認められます

 

7 通称として永年使用した

以前はこのケースが結構多かったようです

実体に戸籍を合わせるというイメージです

 

8 その他

例えば、老舗の社長の名前を襲名するような場合があります

 

また最近多いのは

性同一性障害の方の改名です

平成15年に特例法ができたこともありかなり柔軟に改名が認められています

 

僕も何件か相談を受けたことがあります

性同一性障害の方が身体上の性別から、認識上の性別に変える場合

服装を変えることに伴い、異性の名を使い始めることが多いです

 

その名を通称として利用してきたが

戸籍上も変えたいという希望があって相談に来られる方が

一番多いように思います。

 

「正当な事由」をどうやって裁判官にわかってもらう?

「王子様」のような名だと、

名の記載のある戸籍を見ただけで「正当な事由」があるという判断にかなり傾くように思います

 

しかし、やはり名を見ただけではいかんとも判断しがたいケースもあります

 

そこで、裁判官は

申立時に提出された証拠(戸籍、いじめられた記載のある日記、誤記のある手紙等)
のほか
裁判官が申立人に対して
対面もしくは書面で質問をして(審問、書面照会)
それに対して行われた回答を踏まえて判断する

ということになります

 

期間はどれくらいかかる?

名の変更の申し立てをして、その結果が出るのは

通常1~2カ月程度かなと思いますが

「正当な事由」の証明に必要な証拠の追加が不十分な場合

申立て自体に不備があるような場合

にはもう少し時間がかかってしまうこともあるでしょう

 

お金はいくらくらいかかる?

名の変更の申し立て費用は800円です

これにさらに切手を納付しなければなりません

切手の枚数は、裁判所により異なりますが

1000円かからないことが多いようです

 

名字(氏)は変えられる?

名字(氏)も変えられます

戸籍法第百七条

やむを得ない事由によつて氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。

 

ただ、名と異なり、氏の変更は、戸籍全体・同じ戸籍にいる人全員に影響を及ぼしますので

名よりもハードルが高く

「やむを得ない事由」

つまり、氏を変えないと社会生活が送れないほどのよほどの重大事由

がなければ認められません

そして、戸籍に入っている親族らからの意見聴取も必要になるでしょう

 

 

(日本テレビ「ZIP!」から取材いただきました)

 

最後に

このように、名の変更手続は裁判手続の中ではそれほど難しい部類ではありません

ですので、「正当な事由」があれば、裁判所は改名を認めてくれます

 

しかし、自分自身が改名したい

この名前では自分は生きていくのが辛いと感じても

15歳までは名を付けた親の同意がなければ改名できません

 

つまり中学3年生までの非常に多感な時期、人格形成に重大な影響を与える期間

親のつけた名に拘束されることになります

 

僕の主観ですが

キラキラネームの中には、

注目されたい、自分の感情や趣味を反映させたい

という親のエゴだけで命名された名前といわざるを得ない名前も多くあると思います

当然、命名される子の意思は名には反映されようがありません

 

そして、年齢上は15歳になったら改名できるとしても

親にお金を出してもらって高校大学に行って

同居して養ってもらっている立場で

親の意思に反して改名の申立てをすることなど

およそ現実的ではありません

 

ですので、実際のところ

自ら改名の申立てをすることができるのは

親から自立してから(18歳~22歳以降)ではないかと思います

 

そのため、2000年頃のキラキラネームブームの子たちの

改名ブームが2020年頃から始まるのではないか

今回の「王子様」改名は、その先駆けとなるのではないか

と考えているのです

 

やはり、子の名をつける親は

・子の名に思いを託すこと

・子に個性を与えること

も非常に大切ですが

・その名前で不利益を生じさせることはないか

・自身のエゴではないか

という観点も常に持っているべきだと思います。

(日本テレビ「news every.」からもご取材いただきました)

 

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