【話題の「Number Data」への情報アップは犯罪になる?!】あおり運転動画や車両情報のアップの法律的な問題を解説しました!

コラム

お盆の一大ニュースになった

「BMW X5」のあおり運転&暴行傷害事件

 

この事件のみならず非常に多くのあおり運転動画がネット上にアップされ

また逮捕者も続出しています

 

このあおり運転摘発ブームとでもいうべきムーブメントを支えている

「Number Data」

というサイトがネットで話題になっています

 

 

このサイトは、その目的として「迷惑行為の抑止」を掲げています

そして、被害に遭ったとされる人が

(1)該当車両のナンバー

(2)発生日・場所

(3)具体的な被害・運転態様等

を投稿し共有できる内容になっています

 

確かに、「ネットにさらされるかも」という恐怖心はあおり運転抑止につながるかもしれませんし

あおり運転を行っている車両が共有されていれば

そのナンバーの車両に近付かないという対応もとれます

 

さらに警察に対してあおり運転捜査の重要証拠を提供する側面もあります

 

このように、よい側面もありますが

法律的な問題もかなりはらんでいます

端的にいいますと

犯罪にもなり得る行為だということです

 

以下簡単に説明します

 

 

 

【肖像権・プライバシー権侵害】

 

 

あおり運転の車両情報アップは

ドライブレコーダー(ドラレコ)などの動画のアップも伴うことが多いです

 

車両運転者の顔などが映った動画のアップは

肖像権侵害やプライバシー権侵害による損害賠償請求を受ける可能性があります

 

一般的に肖像権とはみだりに自己の容貌等を撮影されない権利利益です

そしてプライバシー権は、いろいろと定義づけはされていますが

簡単にいうと、自分の姿や個人情報を勝手にさらされない権利利益です

 

人目に晒される公共の場所、公道などであれば

肖像権は放棄されている側面もありますし

 

撮影方法、動画アップの目的・態様などによっては、

肖像権侵害もプライバシー権侵害もないと判断される可能性もあります

 

しかし、「Number Data」のようなサイトへのアップは

『私刑』としての側面

仕返しや憂さ晴らしとしての側面もあるため

そのような目的下でのアップは

これらの権利侵害と認められる可能性もあるでしょう

 

 

【名誉棄損罪】

 

意外かもしれませんが

あおり運転などを行った車両として他人のナンバーをネットに晒す行為には

名誉棄損罪が成立する可能性が高いです

 

車両情報だけでなく

ドラレコの動画などを一緒にアップすれば

名誉棄損として犯情(犯罪の重さ)はより悪いもの、酷いものという評価を受ける可能性もあります

 

まずあおり運転を行っている車両としてアップする行為は

その車両の運転者があおり運転を行う人、悪質な運転行為を行う人物であるとのレッテルを張る行為になります

 

この行為によって、運転者の社会的な評価を下げることになることは明らかですので

 

あおり運転その他の危険な運転行為を行っている車両として

その車両のナンバーをインターネット上に晒す行為は

公然と事実を適示し、人の名誉を棄損することになります

 

なお、名誉棄損罪の場合

公共の利害に関する事実で

専ら公益目的で

名誉棄損行為を行った場合は

その事実が真実であれば

処罰されません(公共の利害に関する特例)

 

「Number Data」の場合は

公道での危険運転行為者と車両に関する事実ですから

公共の利害に関する事実とはいえるでしょう

 

問題は

専ら公益目的といえるか、という点です

 

「Number Data」自体は「迷惑行為の抑止」を標榜しています

 

しかし、このサイトに車両情報や危険運転対応を晒すことが

専ら「迷惑行為の抑止」目的のためのものといえるでしょうか

 

あおり運転被害に遭った場合に

その運転者の処罰を求めるなら警察への通報を直ちにすればよいはず

そして警察にドラレコの動画を提供すればよいはず

 

その結果、あおり運転者が摘発されれば

まさに「迷惑行為の抑止」に繋がります

 

この通報行為を行わずに

「Number Data」やYouTubeなどにアップするという行為が

本当に、専ら「迷惑行為の抑止」目的の行為といえるか

ネットに晒して社会的な制裁を受けさせる『私刑』目的

あおられた仕返しや憂さ晴らし目的も

それなりにあるのではないか

とみられてしまう可能性は高いように思います

 

さらに、被害者以外の人が

他人の危険運転動画を転載、アップロード、リツイートなどする行為も

同様に名誉棄損の可能性もあるように思います

 

なお

公共の利害に関する特例が認められるのは

事実が真実であることが証明された場合です

 

ナンバーを間違ったり

あおり運転の事実が立証されなかった場合は

(故意の問題はありますが)

基本的には処罰対象になります

 

悪質なデマと判断されるような場合は

過去にも名誉棄損罪で逮捕にまで至っているケースもあります

 

やはり記載するかどうか、ナンバーなどに誤りがないか

あおり運転は真実と認められるか

等は慎重に検討しましょう、ということになります。

 

なお、名誉棄損罪に該当するような場合は

民事上も損害賠償義務を負うことになります

 

 

(名誉毀(き)損)

第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀(き)損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

 

(公共の利害に関する場合の特例)

第二百三十条の二 前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

 

 

【偽計業務妨害罪】

 

「Number Data」に記載した車両ナンバーが

運送会社など会社所有だったような場合

会社に対してクレームの電話が来たり

場合によっては取引先から注意を受けたり、取引中止を告げられるなどということにも発展しかねません

 

 

実際に会社の従業員があおり運転をしていたのであれば

企業の社会的な責任として、受忍しなければならない場合もあるでしょう

 

しかし、その情報が誤情報だった場合

さらには悪質なデマだった場合は

誤情報の拡散という偽計によって

会社の業務を妨害する結果を生みますので

偽計業務妨害罪が成立します

 

なお誤情報だと気づいていなかったとしても

ちょっと調査すればそのようなミスを犯さないでしょう

というような場合は、未必の故意があるとされ立件される可能性があります

 

そして名誉棄損の場合と同様に

民事上の賠償も受けることになります

 

名誉棄損の場合に比べて会社の経済的損害は多額になる可能性もあります

 

 

(信用毀損及び業務妨害)

第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 

 

 

最後に

 

「Number Data」というサイトが注目されるのは時代の流れかなと思います。

 

現に、あおり運転暴行傷害事件の「BMW X5」とその運転者は

「Number Data」がきっかけで拡散され

今回の早期逮捕にまで至っているともいえるかもしれません

 

しかしながら、このようなサイトだけでなく

車のナンバーやドラレコの動画をアップする行為は

名誉棄損罪、偽計業務妨害罪

という犯罪のリスクと

肖像権侵害、プライバシー権侵害、名誉棄損、業務妨害などの慰謝料その他の損害賠償請求

を受ける可能性がある

という本末転倒の事態になる可能性があることも

知っておいていただきたいと思います

 

いずれにせよ

慎重に節度をもって

情報アップ、動画配信をしましょう!

 

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