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社会的注目の高い東名あおり運転事件の石橋和歩被告人の刑事裁判

 

2019年12月6日に東京高等裁判所で

東名あおり運転事件の控訴審判決が下されました

 

法律家は読んでて非常に面白い判決なのですが

中学生の皆さんには

かなり難しい事案・判決だと思います

 

社会人の方でもほとんどの方が正確には理解できていないのではないかと思います

 

そこで、皆さんに少しでもこの事件の高裁の判決の意味がわかるように

概要とポイントを解説しました!

 

【横浜地裁の第一審判決の要旨】

以前、動画でも解説させていただきました

 

 

 

平成29年6月5日午後9時33分頃

石橋和歩被告人は

東名高速道路のパーキングエリアで被害者から駐車方法を非難されたことに憤慨し

被害者らが乗っている被害車両を停止させようと企て

被告人車両を高速道路上で運転中

被害車両の通行を妨害する目的で

時速約100㎞で被害車両を追い越して直前の車両通行帯に車線変更し、減速して被告人車両を被害車両に著しく接近させ

衝突を避けるために車線変更した被害車両に対し、同様の接近行為をさらに2回繰り返した後

時速約63㎞で被害車両の直前の車両通行帯に車線変更し、

(時速約29㎞まで)減速して被告人車両を被害車両に著しく接近させ

自車を被害車両の直前に停止したことにより、同日午後9時34分頃、被害車両の停止を余儀なくさせ

同日午後9時36分頃、後方から進行してきた大型貨物自動車(トラック)に追突させるなどして

被害者2名を死亡させ、その子ら2名に傷害を負わせた

(ほかに被害者の胸倉を掴む暴行、別機会の強要未遂2件及び器物損壊1件)

 

原審は赤字部分の妨害運転を危険運転致死傷罪の実行行為(犯罪行為)として

その後の被害車両直前に停止する行為(直前停止行為)は犯罪行為ではないとしました

※この「何を犯罪行為とするか」の議論は後述する因果関係論と密接に関わります

 

そのうえで妨害運転と死傷結果との間には因果関係があるとして

危険運転致死傷罪を認めて

懲役18年の実刑としました

 

 

【第一審に対して不服申し立てをした控訴審弁護人の主張】

 

① 妨害運転と被害者の死傷結果には因果関係がないから危険運転致死傷罪は成立しない

 

② 原審裁判所は、公判前整理手続で

「妨害運転と死傷結果には因果関係は認められないから危険運転致死傷罪は成立しない」との見解を予め(書面で)表明
していたのに、判決前に、見解の変更を一切当事者に告げることなく、

急に判決で因果関係を肯定したのは不意打ち

裁判所の対応によって防御の機会を失わされた

 

要は

そもそも危険運転致死傷罪は成立しないし

裁判官の不意打ちでちゃんと弁護活動できなかったんだからやりなおせ

 

 

【今日の東京高等裁判所の判断】

 

「横浜地裁の裁判官何してくれてんだ!法律わかってんのか!やり直し!!」という判決

①危険運転致死傷罪の成立について

原審で出ている証拠関係を前提にすれば

(※ここ大事、つまり違う事実が出たら変わるよといっている)

原審の事実関係の認定はOK

その事実関係を前提にすれば因果関係を認めたのもOK

 

★注目点1 直前停止行為は危険運転には当たらないという判断

条文が「重大な交通の危険を生じさせる速度」で自動車を運転することを犯罪としている以上

速度がゼロになる直前停止行為(被害車両の直前に停車させて動かせなくする行為)がこの速度要件を満たさないのは明らか

 

★注目点2 因果関係=危険運転(妨害運転)によって被害者の死傷結果が生じたといえるかどうか

上記の赤字の実行行為の後

a石橋被告人が被害車両の直前に停止する行為(直前停止行為)
b被害者が停止
c石橋被告人が被害者に文句を言いながら暴行
d後続のトラックの追突(車間距離不保持等の過失)

という介在事情があったうえで被害者が死傷している

 

この介在事情が異常なら因果関係は否定されるけど

強引に停止させる強固な意思で石橋被告人が行った一連の行為⇒abcは異常ではないし

トラックの追突も高速道路で停車している車はないだろうという信頼は不合理ではない⇒ⅾ車間距離不保持の過失があるとしても異常ではない

ということで因果関係はある

 

②不意打ちだからやり直せについて

裁判員法6条は「法令の解釈」(一般論としてこの犯罪はどういう場合に成立するのという解釈)は裁判官だけど

「具体的な事実関係を前提に、それに法令を適用する行為」(被告人にどんな犯罪が成立するかの判断)

は裁判官と裁判員の合議でやれと定めてますよね

 

 

公判前整理手続(裁判でのスケジュール等を作る手続き)で

一連の妨害運転やその後の介在事情(直前停止・暴行・追突)という事実関係を前提に、危険運転の因果関係を認めるのは無理って表明する行為は

おもいっきり事実関係を前提に法令の適用をしちゃってますよね

 

被告人に成立する犯罪の検討判断しちゃってますよね

しかも弁護人と検察官に意見表明までしてますやん

原審の裁判官は裁判員法に違反する越権行為をしちゃってる完全OUTな訴訟手続してますよね

 

 

(予想される反論:でも因果関係については弁護士も検察官も原審で意見を述べてるんじゃ・・・)

 

裁判官が「危険運転は成立しない」なんて言ったら影響あるに決まってるでしょ

弁護人だって検察官が二次的(予備的)に主張してた監禁致死傷の反論に力入れてるし

「危険運転が成立するかも」という前提で準備をするなら

「トラックの追突なんて想定できないでしょ!」

「死亡結果は(自分も悪いけど)トラックも悪いんだから責任は分担されるべきでしょ!」

などとトラック追突が異常な事後的な介在事情であることとか

死傷結果を起こした責任の所在論についてもっと主張立証する弁護活動ができたはず

 

そうしていれば、因果関係が否定されて無罪になる可能性も

18年よりも軽い懲役判決になった可能性もある

だから原審の越権行為はOUT!!

 

 

第一審でもう一度

妨害運転行為とトラックが突っ込んできて被害者が死ぬこととの

『因果関係』や『被告人が負うべき責任』の審理をやり直してください

(差し戻し後は、基本的に被告人の妨害運転行為や死傷結果についてはひっくり返らない)

 

 

【今後の注目点】

①上告をするか

弁護人は高裁判決を受け入れる=差し戻しの第一審をやる

との方向とのことですので、横浜地裁でもう一度裁判員裁判が開かれることになると思います

 

なお理論的には、「この事実関係を前提にしても無罪だろ、すぐ無罪判決出してくれ」と上告する方法もあります

 

②後続のトラックの責任論

高裁の判決でも明確に

後続のトラックの過失について十分な主張立証したら結論変わってたんじゃないの

とはっきり言っていますので

トラックの追突という事情の異常性や

過失の大きさについてが

差し戻し後の裁判員裁判ではメインの争点になると思います

 

 

③因果関係論

 

あおり運転をしたから後続トラックに追突された

というよりも

高速道路の第三車線に無理矢理停車させたから追突されたんでしょ

という方が自然だと思います

 

そうであればあおり運転そのものを起点にするのは

因果関係的に微妙ではないかと

 

その一方で、あおり運転の危険運転致死傷罪が成立するためには

「重大な交通の危険を生じさせる速度」

という要件を満たさなければなりません

 

しかし被害車両を無理矢理停車させるために被害車両の直前に停車する行為は

速度ゼロ

 

速度ゼロの停車する行為は危険運転にはならないと横浜地裁も高裁も明言してますので

無理矢理停車させる行為自体は危険運転ではない

 

となると危険運転致死傷罪の成立は厳しいと思います

 

とはいえ、散々あおられた挙句、第三車線に無理矢理車を止めさせられたら

車でも歩いても逃げるに逃げられない

 

第三車線に無理矢理車を止めさせる状態はまさに監禁

(狭い場所に閉じ込めなくても、一定の区域から逃げるのを難しくすれば監禁です)

 

その結果、後続トラックの追突を誘発しているのですから

監禁致死傷罪が成立するという結論になるべき事案だと思います

 

なお危険運転致死傷罪も監禁致死傷罪も

犯罪の上限は懲役20年で同じです

 

何のために危険運転致死傷を無理くり成立させたのか

予備的に起訴している監禁致死傷罪でいいじゃん

なんで強引な因果関係を認めたのかと思います・・・

 

④差戻審での追加立証

 

後続トラックの運転手を呼ぶのはマストだと思います

あと後続トラックの走行記録(デジタルタコグラフ)なども出るかもしれません

速度超過があるのか

長距離走行しているのかなども大事な事情なので

 

そのほかにも「なるほど!」という立証があるかもしれません

弁護人はリビングレジェンド高野隆先生なので!

 

⑤因果関係が否定された場合は二次的(予備的)犯罪検討

 

検察官は

1番目に危険運転致死傷罪(上限懲役20年)を審理対象として起訴してますが

2番目に監禁致死傷罪(上限懲役20年)を起訴しています

(1番目がコケた場合の予備)

 

ですので

既に書きましたが

危険運転(あおり運転)と死傷結果の因果関係が否定されても

監禁と死傷結果の因果関係も否定されない限り

量刑の大枠は変わらないということになります

 

⑥因果関係が肯定されても量刑判断

 

あおり運転行為と後続トラックの追突での死傷の因果関係が認められ

危険運転致死傷罪が成立するとしても

差戻審では量刑が石橋被告人に有利な方向に変わる可能性があります

 

横浜地裁の原審では

トラック運転手の過失の内容がそこまでフォーカスされませんでした

運転手も裁判に呼ばれていませんし

 

懲役18年という判決はトラックの過失を脇に置いた判決ともいえるかもしれません

(というかこのトラック運転手は不起訴!)

 

このトラック運転手の過失と石橋被告人の停車させる行為などが相俟って

死傷結果が生じたと考えるなら

責任分配という観点から、石橋被告人の刑罰は

トラックの過失を脇に置いた懲役18年よりも軽くなる可能性は十分に考えられます

 

【結論】

横浜地裁での差戻審裁判員裁判に注目しましょう!

 

そして悪質なあおり運転防止のために

あおり運転罪の創設も必要です!

 

ということで

中学生諸君!

決められたポジションは守らなきゃダメ!

キーパーが調子に乗って敵陣に攻め込んだらカウンター食らうよ!

そして監督にめちゃくちゃ怒られるよ!

 

 

訳:法律に根拠のないトンチンカンな公判前整理手続をしたらダメ!

裁判の主張立証は検察官と弁護士に任せて裁判官はしゃしゃり出ないように!

高裁から「やりなおし」を命じられるよ!!

 

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アトム市川船橋法律事務所

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