【吉澤ひとみさん起訴】保釈は認められる?

コラム

本日、元モーニング娘。の吉澤ひとみさんが

過失運転致傷罪と道路交通法違反(恐らくひき逃げと酒気帯び)

で起訴(公判請求)されたとのことです

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180926-00000541-san-soci

 

起訴されたあとは法律上は保釈が認められる状態になります

早くて今日の夕方には吉澤ひとみさんは

保釈を裁判所が許可し、

保釈保証金を支払えば

警察署から外に出て来るかもしれません

 

弁護人はすぐに保釈請求をしていると思いますが

保釈に対する検察官の意見と

裁判者の判断に時間がかかることもあるので

もしかしたら明日以降に判断がずれ込むかもしれません

 

保釈が認められるかどうかは

起訴された罪名と本人の認否が重要になってきます

 

そこであらためて

起訴された各罪名について簡単に説明いたします

【過失運転致傷】

自動車運転処罰法第5条(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)

自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

つまり、事故を起こして怪我をさせた場合

1月以上7年以下の懲役もしくは禁錮

又は100万円以下の罰金

という刑になります

 

【道路交通法違反①飲酒運転(酒気帯び運転、酒酔い運転)】

飲酒運転については道路交通法違反です

飲酒運転については、重い酒酔い運転と、比較的軽い酒気帯び運転があります

酒酔い運転(まっすぐ歩けないなど正常な運転が不可能な場合)は道路交通法65条、107条の2①違反となります

第百十七条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
一 第六十五条(酒気帯び運転等の禁止)第一項の規定に違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔つた状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態をいう。以下同じ。)にあつたもの
刑は1月以上5年以下の懲役
又は100万円以下の罰金

酒酔いの程度には至らず

呼気アルコール濃度が1リットルあたり0.15㎎以上の場合は道路交通法65条、107の2の2③違反の酒気帯び運転となります

第百十七条の二の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
三 第六十五条(酒気帯び運転等の禁止)第一項の規定に違反して車両等(軽車両を除く。次号において同じ。)を運転した者で、その運転をした場合において身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあつたもの

刑は1月以上3年以下の懲役

又は50万円以下の罰金

という刑になります

 

【道路交通法違反②ひき逃げ】

そしてひき逃げ行為に関しては、ひき逃げ犯の運転によって死傷が生じているので

道路交通法違反(72条、117条Ⅱ)です

第百十七条 車両等(軽車両を除く。以下この項において同じ。)の運転者が、当該車両等の交通による人の死傷があつた場合において、第七十二条(交通事故の場合の措置)第一項前段の規定に違反したときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 前項の場合において、同項の人の死傷が当該運転者の運転に起因するものであるときは、十年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

刑は1年以上10年以下の懲役

又は100万円以下の罰金(禁錮はない)

となります

 

そしてこれらを同時に起こしているので併合罪(刑法45条)となります

 

次に保釈についてですが

大きく分けて保釈には

権利保釈(刑訴法89条)と裁量保釈(刑訴法90条)があります

簡単にいうと

権利保釈は当然保釈にしなければならない類型

裁量保釈は権利保釈はできないけど裁判所が

裁量で例外的に保釈を認める類型になります

 

もう少し詳しく説明します

【権利保釈】

保釈の請求があった場合

法定の次の6つの事由がない限りは

原則として保釈を認めなければならない

と定められています(刑事訴訟法第89条)

① 被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき

② 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき

③ 被告人が常習として長期3年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき

④ 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき

⑤ 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき

⑥ 被告人の氏名又は住居が分からないとき

 

前半で吉澤ひとみさんの起訴罪名の法定刑について

刑の下限(1月から⚪︎年)という書き方をさせていただきましたが

これは今回の起訴罪名が

いずれの罪も

①短期1年以上の罪

には当たらないことをわかりやすくするためです

強盗罪は5年以上20年以下の懲役なので

①にあたってしまい権利保釈は不可能ということになります

とはいえ

関係者との口裏合わせをしたり

証拠を隠したり

目撃者などに不当な圧力をかける可能性がある場合は

④⑤にあたるとして

権利保釈が認められないことがあります

(検察官は④の可能性を強く押して来ることが多いです)

 

吉澤ひとみさんの事故に関しては

事故後の15分間何をしていたのかという問題はあり

そこで、飲酒量や飲酒していた場所、その場にいた人についての口裏合わせをしていたなどの事情があると

④に当たる可能性が出て来るかもしれません

 

なお、逃亡の可能性があるという事情がある場合ですが

逃亡の可能性があるという事情は

上記の権利保釈の除外事由に入っていませんが

逃亡の可能性は、保釈保証金の金額を引き上げることで対応することになることになるため

除外事由には入っていないのです

 

【裁量保釈】

権利保釈の除外事由の6つの事由が

存在したとしても

裁判所は適当と認めるときには

職権で保釈を許すことができます(刑事訴訟法第90条)

強盗や殺人のような重罪でも

証拠隠滅の可能性がないとはいえない場合でも

体調、家庭の状況、失職のおそれのような

身体拘束による不利益や

逃亡や罪証隠滅のおそれ

証拠の収集状況や公判(刑事裁判)の進捗状況

示談の有無などを考慮して

裁判官が「保釈認めてもいいかな」

と考える場合は保釈が許されることになります。

 

吉澤ひとみさんの行為は

ひき逃げ、飲酒、過失運転致傷と

決して軽い罪ではありませんが

証拠収集は済んでいるはずですし

偽証のリスクを犯させてまで

口裏合わせをする必要性も乏しいように思いますので

保釈が認められるべき事案かと思います。

 

恐らくここ数日で保釈の報道は出ると思います

 

もし出ない場合は

お金が準備できないか

口裏合わせをすでに行なっていた場合のように

罪証隠滅がかなり疑われる事情があるということなのだと思います

 

今後の報道に注目したいと思います

 

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