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首都圏で大きく有料老人ホームを営む株式会社未来設計が

入居者から支払を受けた「入居一時金」の処理でトラブルになっているとのことです

https://news.headlines.auone.jp/stories/domestic/social/12029648?genreid=4&subgenreid=12&articleid=12029648&cpid=10130000

 

未来設計が経営する「未来倶楽部」などの有料老人ホームの入居者は2000人規模

その方々から入所の際に支払いを受ける「入居一時金」

この「入居一時金」について正常な会計処理をしていれば38億5000万円あったはずなのに

会計上残っている「入居一時金」は12億円余りしかなく、26億円が消失していたという事件です

 

この会計処理に関連して、創業者(元経営者)に対して9億円近い報酬が支払われていたという事情もあるようです

 

債務超過になり、入居者に対してお金が返せず破産してしまう施設経営会社はいくらでもありますが

なぜこの事件が注目されているのか

 

【注目点】

①そもそも何が問題なのか

②刑事的にはどのような問題が生じるのか

③「入居一時金」を預けた入居者は保護されるのか

について、順次解説させていただきます

 

 

 

 

①そもそも何が問題なのか

 

老人ホーム入居の際には、その入居費用を前払いか月払いで支払っていくことになります

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/other/dl/other-03_2.pdf

 

要は、頭金を出さずに負担を月々に均すか、最初に大きく支払って月々のコストを抑えるかという違いです

前払いの場合を「入居一時金」といいます

 

「入居一時金」は家を借りるときの敷金とは違って、退去時に必ず返還されるものではありません

「入居一時金」は施設運営会社にとっては収入になるので、このお金を利用して、役員の報酬に充てたり

株主に対して配当することが直ちに違法になるわけではありません

 

ところで、この「入居一時金」という前払いシステムには問題があります

月払いであれば、入居している間、毎月賃料のように支払えばよいのですが

前払いの場合は、計算が非常に難しい

 

入居する高齢者がいつまで入居するのか

簡単にいえば、終身入居する前提であれば、入居者がいつ亡くなるのかを予想して

金額設定をすることになります

 

当然そうなると、経営者側は損をしないようにかなり高額な前払金を設定することになりますし

さらに入居後すぐに入居者が亡くなっても「返しませんよ」というルールにしておくはず

 

一方、入居させる側は、大事な家族を入居させるわけですし

自ら介護することが難しいから入居させるという切羽詰まった状況です

 

その結果、暴利ともいえるような入居一時金を取られたり

返金トラブルが起きたりということになります

 

そこでこのようなトラブル防止のため

老人福祉法やその規則などで「入居一時金」について以下の規律がなされています

 

・金額の算定根拠を書面で明らかにすること

・返金の原資がなくならないように担保となる措置を講じること

・平均余命等を踏まえた一定の期間内に契約解除や入居者が死亡した場合は一時金を返金すること(想定居住期間)

  ※ なお、想定居住期間を超えて入居者が生存する場合、入居者は月々の費用を支払わなくてよくなることがあります

・施設側は受け取った「入居一時金」を一括で利益に組み込まず、預かり金として処理し、一定期間分配して利益に組み込むこと(※ 今回これが問題)

そして、これらの違反行為に対して都道府県知事は改善命令を出すことが出来ます

この改善命令に違反した場合は、6カ月以下の懲役か50万円以下の罰金が科せられることになります

老人福祉法 (届出等)第二十九条  7 有料老人ホームの設置者のうち、終身にわたつて受領すべき家賃その他厚生労働省令で定めるものの全部又は一部を前払金として一括して受領するものは、当該前払金の算定の基礎を書面で明示し、かつ、当該前払金について返還債務を負うこととなる場合に備えて厚生労働省令で定めるところにより必要な保全措置を講じなければならない。 8 有料老人ホームの設置者は、前項に規定する前払金を受領する場合においては、当該有料老人ホームに入居した日から厚生労働省令で定める一定の期間を経過する日までの間に、当該入居及び介護等の供与につき契約が解除され、又は入居者の死亡により終了した場合に当該前払金の額から厚生労働省令で定める方法により算定される額を控除した額に相当する額を返還する旨の契約を締結しなければならない。 11 都道府県知事は、有料老人ホームの設置者が第四項から第八項までの規定に違反したと認めるとき、入居者の処遇に関し不当な行為をし、又はその運営に関し入居者の利益を害する行為をしたと認めるとき、その他入居者の保護のため必要があると認めるときは、当該設置者に対して、その改善に必要な措置を採るべきことを命ずることができる。 (罰則)第三十九条 第十八条の二第一項又は第二十九条第十一項の規定による命令に違反した者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
未来設計でも前払いである「入居一時金」での入居費支払いがなされていました
上記のとおり、「入居一時金」は、受領した時点で直ちに利益として計上して、報酬に利用するなどはしてはいけません
入居一時金は、まずは預り金として処理をして、その後、想定居住期間を踏まえて分配して毎月利益計上するかたちが取られるべきです
しかし、未来設計は、報道を踏まえると
自車の資産を水増しするため、そして、創業者らへの報酬支払いのために
「入居一時金」を直ちに利益計上する処理をしていたとのことです
そのために、想定居住期間を踏まえた利益計上を行っていれば、現時点で帳簿上は38億円の「入居一時金」があるはずなのに
実際は12億円しかないという状態に陥っているようです
もっとも、38億円は帳簿上の問題で、実際の預貯金等の残額がいくら残っているかは別の問題です
また、入居者が生存して入居している限りは、この「入居一時金」の返金の問題が生じません
それゆえ、直ちにお金が回らなくなったり、経営ストップになるわけではありません
そして、未来設計の持ち株会社を買収した創生事業団は、施設の運営を継続しつつ、返金トラブルなども起きないように対応しているとのことなので
入居者や未来設計の従業員は当面保護される見込みです

②刑事的にはどのような問題が生じるのか

 

まず詐欺罪(刑法246条 10年以下の懲役)が問題になります

創生事業団が、未来設計の持ち株会社を49億円もの代金で購入したのは

未来設計の帳簿などを見て、黒字が大きく、今後の継続的収益に魅力を感じたからのはずです

 

しかし、その帳簿に計上されている利益が、本来は利益計上してはならない「入居一時金」の即利益計上によって偽装されていたとなると

創生事業団の収益見込みは明らかに間違っていたことになります

もし、偽装されていない本当の決算を見たら

持ち株会社の代金が大きく減っていた可能性もありますし

そもそも、買収しないという判断になっていたかもしれません

 

このように、偽装された売上によって、騙されて創生事業団は49億円もの買収代金を支払ったのですから、これは詐欺罪に当たる可能性が高いことになります

この場合、創生事業団に売却した際の取締役、監査役、そして顧問税理士などが共犯とされる可能性があります

 

 

また、「入居一時金」を直ちに利益計上するという違法な会計処理を行った理由が

創業者である元経営者が、自らが多額の報酬を受け取るため

であれば、まさに自らの利益を図るために、

その権限を濫用的に行使したという背任行為になり得ます

 

したがって、カルロスゴーン氏の被疑事実と同様に

特別背任罪(会社法960条、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金もしくはその併科)

にも当たる可能性があります

 

 

③「入居一時金」を預けた入居者は保護されるのか

 

上記のとおり、入居し続けている方には、直ちに問題は生じませんし

想定居住期間内に解除した場合、入居者が死亡した場合についても、

未来設計の資産や、創生事業団のバックアップで当面は返金がなされそうなので、問題は生じなそうです

 

しかし、

未来設計の資産や創生事業団のバックアップがどこまで続くかはわかりません

 

また、上記のとおり、創生事業団は、会社買収の重要な前提を欺かれていたのですから

創生事業団が、会社買収の契約を取り消すこともあり得るかもしれません

つまり創生事業団が手を引く可能性もあるということです

 

そうなると、未来設計に十分な返済原資がない状態に陥ることもあり得るので

その場合、入居者は、未来設計から十分な返金を受けられないこともあり得ます

また、最悪の場合、未来設計自体が破産申立をすることも考えられます

 

破産の場合、入居者との契約が解除になり、「入居一時金」の返金も一部しかなされないという最悪の事態も生じ得ます

 

もっとも、2000人規模の有料老人ホーム経営を行う事業ですから、

破産申立前に、金融機関のテコ入れがあったり、

企業買収がなされる可能性も高いとは思います

 

また、破産申立をしても、破産管財人が事業譲渡を行うことで

入居者の利益が守られる可能性も高いとは思います

 

現在、創生事業団が創業者らを相手に損害賠償請求の訴訟をしているとのことです

 

詐欺による損害のみならず

創業者が背任行為によって、会社の利益を私物化していたのであれば、当然、会社に対して賠償をしなければなりません

この訴訟によって、未来設計の資産が回復することが

入居者にとって一番の利益になると思います

 

 

まだまだ裏の事情などがあるとは思いますが

この件についても引き続き見守っていきたいと思います