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法律相談

私は専業主婦です。夫とは約30年間生活を共にしてきましたが、今離婚を考えています。離婚時に年金を分割する制度があると聞きました。どのような制度なのでしょうか?

弁護士からの回答

弁護士からの回答

年金分割とは、夫婦が離婚をしたときに、本人同士の合意や裁判所の手続によって婚姻期間中の保険料納付実績を分割できる制度です。

解説

年金分割とは

平成16年の年金法改正により、年金分割制度が平成19年4月1日から施行されました。年金分割制度には以下の 2種類あります。

1 合意分割制度

 1つめは「合意分割制度」です。夫と妻が、分割することとその分割割合(これを「案分割合」といいます。)について合意していれば、離婚時に限り、婚姻期間の保険料納付実績を案分割合で分割できるという制度です(案分割合の上限は2分の1ですが、2分の1以外の割合の合意も可能ですので、常に2分の1の割合を請求できるわけではありません。)。
 つまり、婚姻期間に夫婦2人が納めた厚生年金保険料のうち案分割合分は妻が納めたものとして年金を計算するということです。また、この制度により分割される標準報酬は、あくまでも、「婚姻期間中の当事者の厚生年金の標準報酬(夫婦の合計分)」です。年金分割は、夫に支給される年金の金額を分ける制度であると誤解される方もいらっしゃいますが、そうではありませんので気をつけましょう。
 夫婦の間で合意が出来ない場合は、夫婦の一方が裁判所に申立をして、裁判所で案分割合を決定することもできます。なお、合意分割は「2号分割」「離婚分割」と呼ばれることもあります。

2 第3号被保険者のための年金分割

 2つめは「第3号被保険者の年金分割」です。平成20年4月から、配偶者の一方が専業主婦等の第3号被保険者であった期間(これを「特定期間」といいます。)について、他方配偶者(第2号被保険者)の保険料納付実績の2分の1を自動的に分割できる制度です。合意分割と異なり、夫婦間で分割することや分割割合について合意する必要はなく、請求すれば当然に2分の1の割合で分割されます。

対応方法

年金分割の方法

年金分割を行うには以下の手続が必要です。

1 年金分割のための情報提供請求

まずは、年金事務所に対して年金分割のための情報提供を請求し、年金分割のための情報提供通知書を入手します。離婚を検討するに際しては、離婚時年金分割を行うのか、行うとして案分割合をどのように定めるのかを判断するため、当事者の年金額がいくらであるのか、年金の加入状況はどのようになっているのか等の情報を収集することが重要です。

2-1 離婚年金についての公正証書等の作成

年金分割の割合等について当事者間の話し合いで合意した場合には、その合意内容を、次のような方法により明らかにして、年金分割の請求手続を行うことになります。

⑴年金分割請求をすることと請求すべき案分割合について合意していることを記載し,かつ,当事者自らが署名した書類を添付する。

⑵公正証書の謄本又は抄録謄本を添付する。

⑶公証人の認証を受けた私書証書を添付する。

このような書類の添付が求められるので、これらの書類を作成することが必要です。 また、⑴の場合には、年金分割請求をするためには、当事者双方またはその代理人が社会保険事務所に行って手続をする必要があります。

2-2 当事者間で合意できない場合

当事者間の話合いによって合意できなかった場合、家庭裁判所における審判手続などの裁判手続を利用して年金分割の割合を定めることができます。

⑴審判手続(請求すべき案分割合に関する審判事件)

⑵調停手続(請求すべき案分割合に関する調停事件)

⑶離婚訴訟における附帯処分の手続

3 所定の請求書に必要事項を記載し、年金事務所に提出

当事者の合意または裁判手続により年金分割の按分割合が定められると、次に、厚生労働大臣に対し、標準報酬の改定請求をします。年金事務所で配布されている所定の請求書に必要事項を記載し、年金事務所に提出します。

弁護士に依頼した場合

1 離婚年金分割合意書の作成

 当事者間において話合いにより合意した場合には、離婚年金分割合意書を作成します。

2 裁判手続の代理

 当事者間で合意が難しい場合には、家庭裁判所に申し立て、裁判手続の中で年金分割を求めます。

当事務所における解決例

1 離婚調停に関連しての解決

 夫婦関係調整(離婚)調停の付随申立として、調停の中で2分の1の按分割合が認められました。

2 離婚訴訟に関連しての決定

 調停不成立後訴訟を提起し、和解によって2分の1の按分割合が認められました。

Q&A

Q1 年金分割の請求は、離婚後いつまでできるのですか?

A 年金分割の請求権は離婚後2年間を過ぎると消滅してしまいます。年 金分割をお考えの方は、早めに請求しましょう。

Q2 家庭裁判所で按分割合を定める場合、家庭裁判所はどのような基準で按分割合を定めるのですか?

A 家庭裁判所は、対象期間における保険料納付等に対する当事者の寄与の程度その他一切の事情を考慮して按分割合を定めます。これは法律に規定されています(厚年78条の2第2項他)。