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私は、最近物忘れが多くなってきたため念のため病院で検査をしてもらったところ、医師から認知症であるとの診断を受けました。私には長年連れ添った妻はいますが、子どもはおりません。父母は既に亡くなっています。私は、妻の生活のため、妻に全財産を残してやりたいと考えています。認知症と診断されていても、遺言書を書くことはできるのでしょうか?

弁護士からの回答

弁護士からの回答

遺言をするには、遺言時に、その遺言がどのような意味をもつかを理解できる能力(遺言能力)があることが必要です。遺言作成時に、この遺言能力さえあれば、認知症と診断された方でも、遺言することは可能です。

解説

遺言について

 遺言は、自分が所有している財産を、死後どのように処分したいか等について、生前に本人の意思を書き留めておくものです。遺言書がない場合は、原則的に、財産は法律で決められた人に、法律に従った割合で分配されます。しかし、遺言書を作成することで、これをを修正することができます。たとえば、妻に全財産を渡すという内容の遺言書を作成すれば、妻に全財産を相続させることができるのです。ただし、遺言をするには、遺言時に、その遺言がどのような意味をもつかを理解できる能力(遺言能力)があることが必要です。遺言作成時に、この遺言能力さえあれば、認知症と診断された方でも、遺言することは可能です。逆に、認知症と診断されていない方でも、判断能力がない状態でした遺言は、無効とされてしまいます。

遺言書作成のポイント

1。判断能力に疑問を感じる方は、医師の診断を受けましょう。

 遺言をされる方の判断能力に疑問がある状態で、遺言の効力が遺言者の死後に争われるおそれがある場合には、念のため、遺言者は医師の診断を受け、診断書を作成してもらったり、遺言作成時の状況をビデオテープに撮影して残しておくなどの対策をとっておくとよいでしょう。

2。推定相続人の遺留分を侵害しないかをチェックしましょう。

 遺留分とは、一定の相続人のために民法が保障する最低限度の相続分です。法律上、遺留分を保障される遺留分権利者は、配偶者、子、直系尊属(両親、祖父、祖母、曾祖父、曾祖母)です。遺留分を侵害する遺言も原則有効ですが、死後、遺留分権利者により遺留分を請求された場合には、遺留分に相当する財産は遺留分権利者のものになるので気をつけましょう。これに対し、兄弟姉妹には遺留分がないので、遺言書により相続分を0にすることもできます。

3。「相続させる」との文言を用いましょう。

 特定の相続人に対し、特定の財産を遺したい場合の方法として、「遺贈」と「遺産分割方法の指定」があります。遺言に「○○はAに相続させる。」と書いた場合、「遺産分割方法の指定」と扱われ、特段の事情のない限り、所有権は相続開始と同時に直ちに、その指定された相続人Aに移転するというのが判例です。この場合、相続人が単独で相続による移転登記の申請をすることができるので有利といえるでしょう。また、「遺贈」より「遺産分割方法の指定(相続)」の方が、登録免許税が安いということも利点といえます。

遺言の方法

1。自筆証書遺言

 自筆証書遺言は、遺言者自身が遺言の全文を自分で書いてする遺言です。全文が遺言者の自書であることが必要なので、パソコン等を利用して作成したものや、録音・録画したものは自筆証書遺言とは認められません。公証人や立会人を必要とせず、遺言者が単独で作成できるので、遺言を秘密裏にすることができますし、簡単で費用もかからないという利点があります。他方で、遺言書の紛失、周囲の人による偽造、変造、隠匿などの危険がありますし、自筆証書遺言は方式が厳格に決まっているので、遺言者に法律知識がなければ方式の不備により無効になる危険も高いという短所があります。

2。公正証書遺言

 公正証書遺言は、遺言者が公証役場に行き、または公証人の出張を求めて、公証人に遺言書を作成してもらう方式です。この方式は、偽造・変造のおそれはありませんが、証人2人の立会いを要するので、遺言の存在・内容について完全に秘密にすることは難しくなります。また、遺言書の作成に手間と費用を要するという短所があります。

3。秘密証書遺言

 遺言者が作成した遺言について、その封緘が公証人によって行われるものです。遺言書の全文について自書が要求されていないので、代筆、パソコンなどを利用して作成することも可能です。したがって、最低限署名さえできれば自書できない方にも利用可能です。また、遺言の存在を明確にした上で、遺言の内容については秘密にできるという利点があります。しかし、公証人や証人の関与を必要とし、手続もやや複雑です。また、全文について自書が要求されていないため、判断力や意思の弱い遺言者に周囲が勝手に作成した遺言書を押しつけるなどして不当な遺言書が作成される危険も考えられます

弁護士に依頼した場合

遺言作成のアドバイス

 遺言書は、法律で定めた一定の方式によらなければ法律上の効力がありません。遺言者に法律知識がなければ方式不備により無効になる危険も高いので注意を要します。また、遺言によって行うことができることは、法律に定められており、それ以外のことは、遺言書に書いても法的効果は生じません。遺言者の生前の意思を死後も間違いなく実現していくことができるような、また、後日相続人間で争いが生じないような遺言を作成するためのアドバイスをいたします。

当事務所における解決例

認知症の母親が、長きに渡って面倒を見てくれた二女に全ての財産を相続させる遺言を作成しました。

 長女と二女、二人の子どもがいて、相続人はこの二人のみでした。二女が母の面倒を長い期間見ており、二女に多くの財産を相続するため、母の公正証書遺言を作成しました。