【南牧村転落事故のバスは『白バス』?!】白バス・白タクの規制や見分け方と規制緩和について簡単に解説しました!!

コラム

群馬県南牧村で発生した崖下へのバス転落事故

この件で、意外な事実が発覚したようです

 

転落車は「白バス」か 群馬県警 道路運送法違反も視野に捜査 南牧村の12人重軽傷事故

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190512-00010001-jomo-l10

 

 

「白バス」や「白タク」という言葉を聞いたことがある方は多いかもしれませんが

意外と、何の事か正確に把握されている方は少ないようです

 

そこでこれから

1 白バス・白タクとは何?名前のルーツは?

2 白バス・白タクの罰則は?

3 なぜ白タク・白バスを行うの?

4 白タク・白バスを見分ける方法は?

5 規制緩和の流れは?

の順で簡単にご説明させていただきます。

 

1 白バス・白タクとは何?名前のルーツは?

【定義】

要は、営業許可のない無許可バス、無許可タクシーのことです。

 

道路運送法という法律で、

他人をバス・タクシーに乗せ、その対価・報酬をもらう事業をする場合

国の許可を得なければならないと定められています

 

道路運送法第4条
一般旅客自動車運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければならない。

 

この法律に違反し

国の許可を得ずに有償でバスやタクシーに乗せる事業をすることを「白バス」「白タク」といいます

 

【なぜ「白バス」「白タク」というの?】

国の許可を得てバス事業・タクシー事業を行う場合

車の前後に付けるナンバーは

「緑色」ナンバー

です

 

一方、国の許可を得ていない白バス・白タクは、「緑色」のナンバーがないため

私たちが乗っている自家用車などと同じ

「白色」ナンバー

をつけて事業をせざるを得ません

 

「白色」ナンバーしか付けられないバス・タクシーなので

「白バス」「白タク」

という通称で呼ばれているのです

 

【規制の趣旨】

バスやタクシーなど自動車で人を輸送する行為には

乗客の身体や所持品等に対して

交通事故等による高度の危険が及ぶ可能性があります

 

そこで、バス事業やタクシー事業を行う業者を

運転技能や経験

アルコールチェックや健康診断などを

しっかりと行うことのできる業者に限ることで

乗客の安全を確保しようというのが

法律の目的です

 

2 白バス・白タクの罰則は?

【罰則】

バス事業やタクシー事業を国の許可にかからしめている趣旨が

乗客の安全という重要なものであるため、

罰則も結構重くなっています

 

白バス・白タク事業を営んだ場合

3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科(両方くらうということ)

になります

 

道路運送法 第96条
3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 

一方、白バス、白タクに乗った乗客は処罰されません

処罰する旨の規定がないからです

 

もっとも、運転手ではなくても、運転手と結託して、もしくは運転手を一時的に雇い入れて

白バス・白タク事業を行おうとする者は

道路運送業法違反になります

 

3 なぜ白タク・白バスを行うの?

色々な事情があると思いますが以下の理由が考えられます

 

①許可手続が煩雑だから

国の許可を得る手続は結構煩雑になっていて、事実上の参入規制となっています

しかもその後何らかのトラブルが起きた場合には、取り消させることもあります

 

②所得を隠したい

白タク・白バスをやろうとする人の中には

既に持っている自動車やバスを

使って副業をと考える方もいるものと思います

 

その場合、①手続きの煩雑さに加えて

②副業への課税を逃れたいと考える人もいるでしょう

それが一つの動機になっている可能性もあります

 

③単なる無知

僕が相談を受けたケースでは一番これが多いかもしれません

 

例えば、

・収益目的でイベントを計画する人や団体

・顧客間の交流等を目的としてツアーを企画するような企業

などが

バス代を含む旅行代金を徴収して

バスの運転を頼んだ人に報酬を支払うような場合は

白バスにあたり道路運送法に違反する可能性が高いです

 

また、運転手もツアーに参加しているのに

旅行費が無料という設定をする場合も、

実質的な報酬として、同法に違反すると判断される可能性もあるでしょう

 

顧客(乗客)のためのイベントとして、運転手を連れてきているだけ

要は単に道路運送法の規制を知らないだけで

脱法行為を行うつもりなど全くない方々

バス事業によってお金を稼ごうなどとは思っていない方々

は相当数いると思います

 

しかし、

法律を知らなくても

バス運転手に、運転の対価が支払われるような場合は

白バス事業になってしまう可能性があり、処罰対象になりうる

ということです

 

そのため、本来であれば国の許可を取らなければならないことになります

 

しかし、一回のイベントのために

わざわざ国の許可を取るというのは現実的ではないので

運転手に全く利益がないかたち(報酬が与えられないかたち)にするか

許可をもったバス事業者に委託するか

もしくは

そもそもイベントをやめるか

のいずれかということになるでしょう

 

4 白タク・白バスを見分ける方法は?

 

白バス・白タクに乗ったからといって処罰されるわけではありませんが

運転技能のない運転手、健康に問題のある運転手

による運転で被害を受けるのは、他でもない乗客の方々です

 

そのため、自身の身を守るために

白バス・白タクでないことを確認する必要があります

 

【当日に確認する方法】

これは簡単です

乗るバスやタクシーのナンバーを見て

緑色であることが確認できれば、白タク・白バスではありません

 

さすがにナンバーまで偽造されていたら見破るのはかなり難しいでしょう

 

【事前に確認する方法】

インターネットでの予約が主流となっている現代において

そもそも予約をする旅行会社やバス会社が

違法行為を行っていない会社か、事故等トラブルの少ない会社か

を事前に的確に把握することは非常に大切です

 

しかし、それを確認する術がかなり限られていることも真実

頼んだ旅行業者などが、どこのバス会社を利用しているのかについて

ネット情報で把握できないことの方が多いかもしれません

 

白バス業者かどうかを

旅行当日より前に、ネット情報や問い合わせで正確に把握することは

そもそも難しいと言わざるを得ません。

 

もっとも、下記の方法で

最低限身の安全を守ることもできると思います。

【バスの業者が分かっている場合】

・その業者のサイトを見る、許可番号が表示されているかどうかを確認する(許可を得ていれば番号が与えられます)

・バス業者の処分情報や、評価などを確認する

 

【バス業者がわかっていない場合】

主催者に問い合わせることもできます。主催者も気づいていないことがあります。 【その他の防衛手段】

・バス代があまりに安い場合は白バスを疑う (明細を求めなければわからないこともあります。一般的な費用感はサイトなどにガイドラインがあります)

・保険加入の有無の確認

これは身を守るため最低限の確認事項です。

 

5 規制緩和の流れは?

 

このようにバス・タクシー業界には事実上の参入規制があります

しかし、白バス・白タクへのニーズが高くなっているのも現実です

 

【UBER】

先日、UBERが上場したというニュースが流れました

UBERというのは、自分の好きなところに配車を依頼することのできるウェブサイト・アプリです(タクシーではない車の配車を依頼するアプリという感じ)

 

本国であるアメリカでは

自家用車を持っている人の空き時間を利用して

自動車での移動を希望している人のニーズにこたえるというサービスで

要は「白タク」です

 

日本でもUBERのアプリなどは利用されていますが

道路運送法の規制があるため

タクシー業者などが、使用していない自動車をハイヤーとして利用して

アプリ利用者の配車に応じているというのが実情です

 

もし自家用車でのUBERが完全解禁されれば

タクシー業者の多くは廃業に追い込まれるかもしれません

 

【白タク白バスへのニーズ】

日本のタクシー価格は、諸外国に比べて高いというデータもあるようです

 

一般利用者からすれば、価格が協定によって固定されているタクシーにタクシー事業を独占させるよりも

白タクの参入を認めて、価格の自由競争が起きた方が

料金の面でも、サービスの面でもメリットがあるはずです

 

また、日本は観光立国を目指していますし

来年にはオリンピックを控えています

 

そのため日本に来る外国人は

タクシーよりも値段の安い輸送手段としての「白タク」やUBERを利用したいと考えるでしょう

 

【高齢者運転を規制する方法論】

また最近、高齢者による悲惨な交通事故のニュースを多く見ます

認知機能、判断能力の低下した高齢者による運転は危険といわざるを得ません

 

もっとも運転免許の定年制という提案が出されると

決まって出てくる反論が

「過疎地の高齢者が異動する手段が奪われる」

というもの

 

要は、電車バスといった公共交通機関が整備されていない田舎の場合

タクシーを呼んでもなかなか来てくれないため

高齢者であっても自ら自動車を運転しなければ

日常的な移動手段が奪われてしまうということです

 

この点、過疎地において

近隣住民が有償でタクシー代わりができるようになれば

高齢者自ら運転する必要もなく

また近隣住民の収入にもつながることにもなります

 

これは高齢者による運転規制への一つの対案となり得るものだと思います

 

このように、白バス・白タクへのニーズは高いと考えられます

 

【現状の規制根拠への反論】

運転経験、運転技能、アルコールチェックや健康管理を担保する

という白バス・白タクの規制根拠には合理性もあります

 

海外では、白タクに乗って身に危険が及んだというケースも聞きますし

今回の南牧村の転落事故についても

その原因が、白バスだから、運転者としての資質が足りないから

と断定はできませんが、そう疑われても仕方のない状況です

 

そもそも現行法で、白バスが規制されている以上、

これに違反して事業を行うような業者は、コンプライアンス意識が低いと言われても仕方がないでしょう

 

しかし、

本当に白バス・白タクを一律禁止しなければならないのか

国の許可制を緩和することもできるのではないか

という疑問も生じます

 

国の許可があるからといって運転技能・運転経験が担保されるとは言い難いでしょう

(運転がうまいとはいえないドライバー、道もわからないドライバーに当たった経験を皆さんもお持ちではないでしょうか)

 

それに、運転技能や運転経験を条件とした二種免許という免許の種類があるわけですから

二種免許保有者であれば、国の許可を受けなくとも

タクシー業務を行ってよいのではないでしょうか

 

さらに、UBERなどでは

顧客によるドライバー評価制度があります

 

当然、高齢者で運転が危なかったり、アルコール臭かったりすれば

評価が非常に低くなり、誰も配車を依頼しなくなるでしょうし

そもそも登録抹消になるでしょう

 

それ以上に、この評価制度では

接客態度なども反映されるため

よりダイレクトにドライバーの質の見極めをすることができる可能性もあります

 

このように、白バス・白タク規制の趣旨については

国の許可という強い参入規制を課さなくとも満たすことができるはずです

 

さらに、バス業界、タクシー業界への参入規制の裏には

国交省の天下り先でもある既存の業者や

バス・タクシー事業者の規制団体等を保護する目的がある

とも指摘されています

 

現に2015年9月には、バスやタクシーなどの公共交通機関がない地域に限り自家用自動車の活用を拡大する国家戦略特区が解禁されましたが

この規制緩和の際にも、国交省が強く反対したという経緯もあります

 

数年前からのインバウンドブーム

オリンピックの開催

UBERの上場

というこの時期に改めて

白バス・白タクの規制緩和の議論が進むことを期待します

 

6 最後に

少し脱線してしまいましたが

白バス・白タクは現行法では規制されており

もし本当に白バスであれば運転手は道路運送法違反として処罰される可能性が高いでしょう

 

バスを利用される方も

イベントなどにバスを利用する方も

白バス規制があるということと

乗るバスが白バスではないことをしっかりと確認して

身を守っていただきたいです(現行法下では)

 

その一方で、白バス・白タクのニーズの高さを踏まえ

旅館業法を大幅に規制緩和した民泊新法のように

規制緩和に向けた積極的な議論が進むことにも期待したいと思います

 

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