【7pay不正アクセス・詐欺事件】セブンによる全額賠償の落とし穴を簡単に解説しました!

コラム

昨日のトラブル発覚から、未だに被害の全容がつかめていない可能性のある7pay不正アクセス・詐欺問題

セブン&アイホールディングスは、昨日会見を開き、被害者約900人、被害額5500万円(当時)の全額賠償をする旨明らかにしました

 

 

 

当初セブン側は、記者会見の時点で、チャージの停止などをしていませんでしたが

その後、新規登録の停止と、新規チャージも停止するに至っています

しかしすでにチャージをしている7pay分については利用可能です

それゆえ、騙し取られてしまっているアカウントで、先にチャージがされてしまっていれば

利用し放題、という状況です

 

新規登録停止・新規チャージ停止という対応が遅れてしまったことや

未だに全面停止をしていないことによって、被害が拡大している可能性は高いと思います

 

逮捕は氷山の一角

さらに、今日になって、複数の被疑者を逮捕するに至っています

 

しかし、この逮捕は、警察が何もしていないという批判を受けないように

見せしめで逮捕・公表したものであって、詐欺の全容や被害回復には程遠い捜査状況といわざるを得ないと思います

今回逮捕されている人たちは、いわゆる『出し子』

振り込め詐欺などで、被害金の入金された口座からお金を払い戻してくる作業をするバイト感覚の共犯者に近い立場の方々でしかないと思います

今回の7pay詐欺のシステムを作って、大儲けをしている大元締めには全然たどり着いていないといわざるを得ません

 

7pay側の法的責任

 

記者会見で、セブン側は、システムの脆弱性は見つからなかったと発言していますが

本当にそうでしょうか

 

セキュリティの問題点が皆無であれば、このような被害は生じていなかったのではないでしょうか

 

その原因が突き詰められることによって

セブン側の過失が認められれば、お金を騙し取られた被害者の方々に対して、当然賠償責任を負わなければなりません

 

このような結果になることが予想されたこともあって

セブン側は、『全額賠償』に応じるとの対応を明らかにしたのだと思います

 

但し、この『全額賠償』には落とし穴があります

 

セブン『全額賠償』の落とし穴

 

詐欺被害者から依頼を受けて、詐欺集団を訴える裁判をしたことのある弁護士であれば皆経験していることだと思いますが

詐欺被害を証拠で証明することは簡単ではありません

 

詐欺被害に遭っていることが明らかであっても

・加害者に騙されたこと

・騙されてお金を渡していること

・渡した金額

を全て証拠で裏付けなければ、裁判では勝てません

 

しかし、詐欺集団も物的証拠は通常残しませんし

口頭で騙されている場合、言った言わないの話になるので

どちらかわからなければ、訴えた側つまり被害者が負けということになります

お金についても、手渡しであれば、証拠は残りません

 

このように、詐欺被害の立証は簡単ではないのです

 

どんな立証が必要?

 

今回、セブン側に対しても

・加害者にアカウントを乗っ取られていること

・アカウントに勝手にチャージされたこと(チャージしたのが自分でないこと)

・勝手に利用されたこと(利用したのが自分でないこと)

を証拠によって証明できなければ

『全額賠償』は受けられないことになるものと思われます

 

セブン側も、便乗して請求してきている人を排除するために、

慎重に証拠を検討するでしょう

 

今回の7payの場合は、履歴は確かに残っているでしょう

 

しかし、チャージを誰が行ったのかの特定が微妙な場合

例えば、港区に住んでいる方の7payアカウントが

偶然港区で使われたような場合は

 

・アカウントに勝手にチャージされたこと(チャージしたのが自分でないこと)

・勝手に利用されたこと(利用したのが自分でないこと)

 

という2点の立証が不十分(要はどちらかわからないよね)となる可能性もあり

そのような場合、セブン側が『全額賠償』に応じない可能性も出てきます

 

手続の煩わしさ

 

さらに、実際被害弁償をするといっても

被害申告+被害事実の証拠による証明

をしろとなると、かなり煩わしい手続きをしなければならなくなります

 

また、セブン側の回答も、何週間待たされるかもわかりません

 

その結果、

被害額5万円程度だし面倒だから、ということで被害申告をためらう方

一旦被害申告をしてみたけど

セブン側から疑問を突きつけられて諦めてしまう方も

相当数出ることになると思います

 

昨日の時点で、900人、5500万円の被害とのことですが

単なる予想ですが、3分の1以上の人が躊躇することになるような気がします

 

もし3分の1が諦めれば、セブン側は
1800万円ほど賠償を逃れることになります

 

セブン側の一つの選択肢として

原因の解明まで、全部のアカウントの利用を停止するという方法もあったのだと思いますが

(すでにチャージされている分については、詐欺集団が利用することを止められないので)

この手段を取らず

発生した被害の『全額賠償』をするという対処療法的な対応を選択したことの内実として

もしかしたら、被害申告を躊躇する人も相当数いるということも

考慮対象になったのかもしれません

 

被害回復を援助します!というビジネス

 

今後、「7pay被害対策弁護団」

「7pay賠償請求を着手金タダでやります」

みたいな広告などが出てくると思います

 

しかし気をつけなければならないのは、費用対効果です。

弁護団にすると、あたかも個人の弁護士費用負担も軽くなるかのような錯覚が生じますが

弁護士には個々人で依頼する以上

弁護士費用も個々人にのしかかってきます

 

弁護士会の昔の報酬規程では

着手金は最低10万円とされていましたし

 

今回の7pay賠償でも、やはり半額くらいは弁護士報酬として取られる可能性はあります

 

5万円を回収するために弁護士に依頼をして弁護士報酬をとられるのが良いのかどうか

弁護士の費用報酬に関する説明をしっかり聞いて

費用対効果について適切に検討いただければと思います

 

なお、費用報酬をもらってセブン側と返金交渉ができるのは

原則弁護士だけです(弁護士法72条 一部司法書士もできます)

 

これに違反すると2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金という刑罰が科せられます(同77条)

この手のビジネスに、行政書士が手を出してくることがありますが

明らかな弁護士法違反です

 

最後に

まだ被害の全容がわかっていませんし

omni7にも被害が広がる様相を呈しています

 

既にアカウント登録されている方は、被害に遭わないように慎重な対応を

そして、被害に遭われた方は、ご自身でできるだけ証拠を残す作業(自分のスケジュールを残す、ログイン記録・売買記録などをスクリーンショットで残す等)をしていただいて

セブン側からしっかりと賠償を受けていただければと思います

 

早期のトラブル収束を祈ります

 

 

abemaTV「有罪率99.9%」の刑事裁判で無罪連発勝訴請負人弁護士の信念とは

 

アトム市川船橋法律事務所弁護士法人

 

市船への招待状

 

 

 

関連記事

株主代表訴訟の構造や裁判費用、弁護士費用について

株主代表訴訟の構造や裁判費用、弁護士費用について

続きを見る

回転寿司テロのリスクを弁護士が解説!

回転寿司テロのリスクを弁護士が解説!

続きを見る

弁護士が教える反対尋問のポイント

弁護士が教える反対尋問のポイント

続きを見る