【11月22日の取締役会で解任?】日産カルロス・ゴーン会長の解任について簡単に解説しました

コラム
やはり年末1番のニュースだけあって

報道が過熱しています。

昨日も東京地裁周辺は、日産のカルロス・ゴーン会長の勾留手続きの可能性を考えてか

報道関係者が非常に多かったです

今日は少しテイストを変えて、刑事手続きではなく、日産での会長解任、取締役解任について

簡単に解説したいと思います

会社法の基礎知識です!!

 

まず、日産の西川CEOの会見によると

日産は11月22日に取締役会を開いてカルロス・ゴーン 会長を解任させるという報道がなされています

https://r.nikkei.com/article/DGXMZO37959820Z11C18A1TJ2000

報道を見て間違ってはならないのは

『取締役をやめさせる決議』

ではないということです。

 

今回22日に行われるのは

『会長職をやめさせる決議』

です。

 

22日に行われるのは取締役会

取締役会では

『取締役をやめさせる決議』

を行うことはできません。

これを行うことができるのは株主総会です

 

簡単に解説します。

東芝の粉飾決済や過去のライブドア問題の時のような代表取締役の不祥事や

会社内での覇権争いのような経営陣の内紛などをきっかけに

代表取締役の解任が問題になることは実は結構多いです。

多くの会社の場合、代表取締役が100パーセント株主だったり、代表取締役の家族が会社の株の大半を持っていたりする同族会社なので

家族以外の第三者による代表取締役の解任は非常に困難です

逆に日産は大会社で、株式も上場され、誰しもが株主になりうるので、

同族会社のような煩わしさはありませんが

大会社ゆえの手続きの煩わしさがあります

 

これから代表取締役を解任・解職する際の法的問題点について説明します。

 

【代表取締役の解任(解職)と取締役の解任の違い】

ニュースなどを見ていると

「代表取締役を取締役会で解任」

という文字が踊るときがあります

これを見ると「『代表』から降りるのか、『取締役』をやめさせるのか、どっちだろう?」と思ってしまいます

 

ここでは便宜的に

『代表』から降りて代表権のない平取締役になることを解職

そもそも取締役の地位を奪われることを解任

といわせていただきます

 

【解職のための法的な手続き】

『代表』から平取締役に降格させるには

取締役会での代表解任決議が必要です

これは取締役会設置会社(取締役が複数いる普通の会社のイメージ)

 

取締役会では取締役が一人一票

過半数が出席し、その過半数が賛成すれば決議が通ります

 

代表取締役がどんな不正をしていても

取締役達を味方につけていれば、解職されて平取締役にされることはありません

 

そして、取締役を選任・解任するのは株主ですので

代表取締役とその家族で過半数の株式を持っていれば

都合の悪い取締役は解任

味方になる取締役を選任

することで地位を守れます

 

日産のような大会社であっても

取締役を多く取り込んで多数派工作をしておけば

平取締役への役職の付与も、役職を奪うことも

自由にできます

 

従前、カルロス・ゴーン会長はこの多数派工作をうまくやってきたのでしょう

 

そして、おそらくですが

今回の一件の前に、事実上このパワーバランスが崩れていたため

今回のような会長と代表取締役の排除という大ナタを振ることができたのだと思います

 

【解任のための法的な手続き】

代表から平に降格させる解職は取締役会ですが

取締役ですらなくする解任決議は

株主総会での議決事項になります

 

株主総会は

株主一人一票ではなく

一株式に一票(一議決権)です

(法律で議決権がなかったり、議決権を使えない場合なども定められていますが、今回は割愛します)

 

取締役の選任と解任はこの株主総会で決められます

 

日産のように上場した大きな会社であれば、

株主が不特定多数に及ぶので

株主総会の招集手続きは法律で厳格に定められています

 

また、株主総会には

定期的に(通常年一回)行われる通常総会と

特に急いで決議をしなければならない議案があるような場合に開かれる臨時総会があります

 

もっともこの株主総会の招集や、総会での議案については基本的には取締役会が決めますので

(株主にも総会招集権や議案の発案権はありますが)

22日の取締役会の際には

カルロス・ゴーン会長とグレッグ・ケリー代表取締役の

会長職、代表職を解く解職の決議だけでなく

 

もしかしたら取締役から引きずりおろす

取締役解任決議を議題とする

臨時株主総会の招集も決定されるかもしれません

 

なお、カルロス・ゴーン会長は、まだ逮捕されただけで

有罪確定ではないので

今の時点での見切り処分には法的な問題がないわけではありませんが

日産の業績悪化を止めるためには

やむを得ないかもしれません

 

長くなってしまいましたが

金融商品取引法違反、収入過少申告、逮捕

の報道が中心ですが

今回書かせていただいたような、日産の取締役会決議、株主総会決議

などにも、注目していただけたらと思います。

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