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 新築した自宅に、ドアやサッシがスムーズに開閉できない、雨水が染み出す、リビングの床が鳴る等の問題があります。これは、欠陥にあたるのでしょうか?

弁護士からの回答

弁護士からの回答

 欠陥は法律用語で「瑕疵」といいます。「瑕疵」には、当該目的物が通常の品質を欠く「客観的瑕疵」と、契約で定められた品質を欠く「主観的瑕疵」があります。一般的に要求される品質・性能を満たしていても、契約違反は瑕疵となります。
その判断は、①本件建物が設計図書、契約図書、確認図書どおりに建築されているかどうか、②当該建物が建築基準法、同施工令、国土交通省告示、日本建築学会建築工事標準仕様書、住宅金融公庫融資住宅共通仕様書等、日本の建築界の通説的基準を満たしているかどうかという視点から欠陥判断を行うことになります。
また、これらの判断を行うためには、専門家である建築士の協力を得て調査する必要があります。

解説

瑕疵とは

仕事の目的物に「瑕疵」がある場合、注文者は請負人に対し瑕疵修補費用や瑕疵修補に代え、又は瑕疵修補とともに損害賠償を請求できます(民法634条2項)。この「瑕疵」とは、一般に、売買目的物の「瑕疵」と同じく、当該目的物が通常の品質を欠く「客観的瑕疵」と、契約で定められた品質を欠く「主観的瑕疵」の両者が含まれるとしています。例えば、我妻榮「債権各論中巻二(民法講義V2)」631頁は「目的物に瑕疵があるとは、完成された仕事が契約で定めた内容通りでなく、使用価値もしくは交換価値を減少させる欠点があるか、または当事者が予め定めた性質を欠くなど、不完全な点を有することである」と定義しています。

客観的瑕疵と主観的瑕疵

ア 事案

 本件請負契約を締結するに際し、施工業者に重量負荷を考慮して、特に南棟の主柱については、耐震性を高めるため、当初の設計内容を変更し、その断面の寸法300×300の、より太い鉄骨を使用することを求め、施工業者は、これを承諾したのに、上記の約定に反し、施主の了解を得ないで、構造計算上安全であることを理由に、同250×250の鉄骨を南棟の主柱に使用し、施工をした事案

イ 最判平成15年10月10日

「本件請負契約においては、上告人及び被上告人間で、本件建物の耐震性を高め、耐震性の面でより安全性の高い建物にするため、南棟の主柱につき断面の寸法300×300の鉄骨を使用することが、特に約定され、これが契約の重要な内容になっていたというべきである。そうすると、この約定に違反して、同250×250の鉄骨を使用して施工された南棟の主柱の工事には、瑕疵があるというべきである。」と判示しました。
 上記のとおり、「瑕疵」の中には、主観的瑕疵(契約上の品質を欠く場合)と客観的瑕疵(通常の品質を欠く場合)の両者が含まれるが、この判決は、構造計算上は安全な建物ではあっても、当事者間の契約で太い柱で施工することを約した以上、契約上の品質を欠くとして主観的な瑕疵であると認めた判決です。

瑕疵の判断基準

 まず、瑕疵とは、契約どおりに適合していないということであるから、その判断基準は契約に求めることになります。しかし、契約上、当該不具合に関係する品質や性能が明示的に定められていない場合が多いです。そうした場合、契約内容を補完する基準が必要になります。
 これについては、平成14年3月、東京地裁建築訴訟対策委員会は、「建築鑑定の手引き」(判時1777号3頁以下)を発表し、同手引きQ22で「建築鑑定において『瑕疵の有無』につき鑑定を求める場合がありますが、この場合の『瑕疵』はどのように理解したら良いのでしょう」という問いに対し、「建築物の出来・不出来に関する技術的評価については、①建築基準法等の法令の規定の要件を満足しているか、②当事者が契約で定めた内容、具体的には設計図書に定められた内容を満足しているか、③公庫融資基準を満足しているか、④以上のいずれにも当たらないが、我が国の現在の標準的な技術水準を満足させているか、等の基準が考えられます。
 鑑定事項でいう「瑕疵」が上記のいずれを基準にした判断であるのかがまず明確にされなければなりません。」(同9頁から10頁)などどし、上記の欠陥判断の基準をもって欠陥判断基準とすることが、ほぼ裁判上も確立した基準になったといっていいです。

具体的には、

a 本件建物が設計図書、契約図書、確認図書どおりに建築されているかどうか

b 当該建物が建築基準法、同施工令、国土交通省告示、日本建築学会建築工事標準仕様書、住宅金融公庫融資住宅共通仕様書等、日本の建築界の通説的基準を満たしているかどうかという視点

から欠陥判断を行うことになります。

 なお、注意すべきは、これまで「欠陥」概念につき、「欠陥現象」、「欠陥原因」、「欠陥判断」という異なった概念を混同して用いてきた嫌いがあります(なお、ここで用いる「欠陥」という概念は「瑕疵」と同旨の意味で使用します)。例えば、被害者から「雨漏りがする」、「建物が揺れる」などという訴えに対し、被害者側弁護士は、「雨漏りがする。建物が揺れる。よって取壊し建替え費用を払え」式の訴状を作成してきたきらいがあります。
 しかし、「雨漏りがする」とか「建物が揺れる」という主張は、単に欠陥の現象を指摘したにすぎず、訴訟法的にはせいぜい慰謝料を認定する際の請求原因事実を主張しただけで、欠陥原因事実=要件事実を指摘したことにはなりません。同じ「雨漏り」でも、「雨漏り」の原因(欠陥原因事実)が異なれば、訴訟の様相は一転します。例えば、瓦が割れたことが原因で雨漏りがする場合、この欠陥についての損害は割れた瓦の取替え費用(それは数万円にすぎないでしょう)ということになるのに対し、地盤沈下により建物にひび割れが生じたとなれば数千万円の損害ということになるでしょう。「欠陥現象」は所有者が、「欠陥原因」は弁護士や建築士がそれぞれ指摘し、裁判官が「欠陥判断」をするということです。

相当な補修方法とは何か

 欠陥住宅訴訟における損害論の根幹は補修費です。当該欠陥を建物の安全性を確保すべく定められた建築基準法令やそれを具体化したJASS等の標準的施工仕様を満足させる補修とはどのような補修が相当なのか、そして、その相当補修に要する補修額はいかほどになるのか、最近では「何が欠陥か」という欠陥判断よりも、欠陥が存在することを前提に、その欠陥をどのように補修するのが相当なのかについて争われることが多くなっています。
 しかし、言うまでもなく、(法を離れて)補修・補強案を検討せよとなれば、いく通りかの補修・補強案を示すことができるでしょう。例えば、雨漏りの補修としては、「とりあえず雨漏り箇所をパテ塗りで補修する」補修案もあれば、地盤沈下が原因で雨漏りが生じた場合には「地盤沈下や建物の傾斜それ自体」の補修が必要になります。このように、補修案と補修額については、裁判所がいかなる補修が不可欠とするのかによって補修内容や補修額が異なってきます。
 しかし「建築基準法令等は建築物の最低限の安全性を定めたものであることからすれば、建物の補修方法も、原則として法令等における瑕疵がない状態に復帰させることが相当な方法である」と解すべきが正当です。建築基準法令等が定める設計・施工基準は、その定める規準を遵守さえすれば建物の最低限の安全性を法的に承認し建築関与者の法的責任は問わないという法的概念であるから裁判所自身が建築基準法令等を無視・否定するかごとき補修案を認定することは背理だからです。地震がきたらその建物は倒れるかどうかという「事実上の安全性」ではなく、建築基準法令等が予定した設計・施工がなされているか、そうした基準を充足する建物にするためにはどのような補修をすべきかという「法的安全性」についての判断をなすべき機関が裁判所であるからです。
 さて、補修費用と新築費用との関係についても一言しておきます。欠陥住宅被害における損害額とは補修額を意味します。そして、各欠陥箇所の補修費を積み上げていったとき、補修費合計額が当該建物の新築費用を上回ることになった場合、その損害額は建物の新築費用と解すべきです。例えば、交通事故で300万円の車が大破し、その補修費が400万円かかるという場合、その車を補修しなければならない特段の事情がない限り(例えばビートルズが乗った車など)、新車を買い与えたほうが安上がりであるということと同様、当該建物を補修してでも保存しなければならないという特段の事情がない限り、新築費用を損害と認めれば足るからです。
 さらに、損害には、補修費のみならず、私的鑑定費用、弁護士費用、慰謝料はもとより、修理中の移転費用、借家料等、欠陥と損害との間に相当因果関係にある一切の損害もまた被害者に支払うべきことになります。これもまた、多くの判例が認めるところであります。

取壊し建替え費用相当損害金を認めた最高裁判例について

 最判平成14年9月24日は、「建築請負の仕事の目的物である建物に重大な瑕疵があるために建て替えざるを得ない場合には、注文者は、請負人に対し、建物の建て替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することができる。」と判示しています。従来、請負契約の目的物に重大な瑕疵があったとしても、仕事の目的物が土地工作物の場合は、民法が請負契約の解除を否定している(635条但書)ことを理由に、欠陥住宅の建替え費用の請求は解除を認めたに等しいとして、この請求を制限すべきであるとする下級審判決がいくつか出されてきました。この最高裁判決は、こうした下級審判決の一部の傾向を明確に否定した点に最大の意義があります。この判決は、「請負人が建築した建物に重大な瑕疵があって建て替えるほかはない場合」を前提にしているので、今後、建替え費用相当額の損害賠償請求訴訟では、当該瑕疵が「建替えるほかはない」重大な瑕疵にあたるかどうかが今まで以上に争点となるでしょう。

弁護士に依頼した場合

(1)契約書、設計図書の確認、依頼者からの事情聴取等を行い、法的責任追及の可能性をまずは検討します。
(2)専門家である建築士による予備調査に同行し、建築士と連携して、実際の欠陥の状況を把握します。
   併せて法的責任追及について具体的に検討します。
(3)業者に対し、内容証明郵便等により損害賠償を請求します。
(4)証拠の整理、訴状の作成等の訴訟提起の準備をします。