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現在、アパートを賃料月額6万円で借りています。今月分の家賃の支払をつい忘れていたのですが、先日大家から、「賃貸借契約を解除する。すぐに部屋を明け渡せ。」と要求されました。確かに支払を忘れていた私が悪いのですが、家賃の支払が遅れたのは今までに1、2度しかありません。しかも、大家から家賃の支払いを催告されたら、すぐ振込みました。それなのに、契約を解除するからすぐに出て行けと言われるのは、納得できません。大家の要求に従うほかないのでしょうか?

弁護士からの回答

弁護士からの回答

家賃の支払いが遅れたのは1~2回で、しかも催促されたらすぐに振り込んでいるので、大家との信頼関係が破壊されたとはいえず、解除は認められないものと考えられます。そのため、部屋を明け渡す必要はありません。

解説

賃料不払いによる解除の要件

 民法541条は「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる」と定めています。この規定は契約関係の解除の一般原則であり、賃貸借契約においても適用されます。
 しかし、賃貸借契約は1回限りの契約とは異なり、長期間契約が継続していくことが予定された契約です。また、賃貸借契約では貸し主と借り主の信頼関係が非常に重要な要素になります。したがって、賃貸借契約では上記解除に関する一般的な規定は若干修正されます。
 すなわち、一般的原則に従えば、①相当の期間を定めた催告をしたのに、②借り主がその期間内に賃料の支払をしない場合に、③貸し主が解除の意思表示をすれば解除はできるのですが、賃貸借契約の場合は、①~③があったとしても、④貸し主と借り主の信頼関係を破壊すると認めるに足りない特段の事情がある場合には解除はできないという修正がされています。

賃料の不払い期間

 どれくらいの期間賃料の不払いを続けると信頼関係の破壊が認められるのでしょうか。この点について画一的な基準はありません。この点に関する裁判もその判断はまちまちです。ただし、一般論として、賃料収入は貸し主の生活の基盤ともなることからすれば、何らの正当な理由なくして3ヵ月分以上の賃料を滞納する場合には、信頼関係は破壊されたと言ってよいと考えられています。

ご質問の場合

 まず、賃料不払いを理由に賃貸借契約を解除するためには、①相当の期間を定めた催告、②借り主がその期間内に賃料の支払をしないこと、③解除の意思表示をすることが必要です。
 しかし、本件では、①の催告の要件が欠けていますので、そもそも貸し主は契約を解除することはできません。また、仮に①の要件が満たされていたとしても、賃料を支払期日までに支払わなかったのは借り主が単に支払を失念していたためであり悪意によるものではないこと、賃料未納の事実を貸し主に指摘されてから、借り主がすぐに賃料を支払っていること等からすれば、④信頼関係を破壊すると認めるに足りない特段の事情があるといえます。
 結局本件の場合、貸し主の契約解除に法的な有効性は認められませんので、貸し主の要求に従う必要はありません。

弁護士に依頼した場合

借り主側のご依頼

 契約解除が有効か無効かの判断は、非常に複雑ですし、事案によってもまちまちです。解除の有効性について、またどのように対処したらよいのか等法的なアドバイスをいたします。

貸し主側のご依頼

 法的に有効となるような契約解除について等、家賃滞納者対応を法的にアドバイスいたします。また、交渉で解決に至らない場合、代理人として訴訟を行います。

当事務所における解決例

(1)アパートの賃借人に対し、賃料支払催告書を送付し、それまでに滞納していた未払賃料を回収しました。

弁護士から内容証明郵便で催告を受け、賃借人が直ちに支払を行う場合もあります。

(2)貸家の賃借人に対し、未払賃料の支払と建物明渡しを求めて訴訟を行い、訴訟内で和解に至りました。

 貸家からの退去と共に、賃借人が貸家敷地内に勝手に造作した物置の撤去を求めました。訴訟のなかで賃借人と和解することができ、解決に至りました。

Q&A

Q1 賃貸借契約書に、貸し主の催告がなくても解除できるという条項があるのですが、この場合、催告がなくても解除は有効なのでしょうか?

A 契約書に定めがあるからといって、すべて借り主はそれに従わなければならないというものではありません。無催告解除特約に基づく無催告解除が有効か否かは、個々の事案ごとに、催告なしに解除しても不合理と認められない事情があるか否かで判断されます。

Q2 貸し主と借り主の信頼関係が破壊されたか否かは、どのような事情を勘案して判断されるのですか?

A 信頼関係が破壊されたか否かは、賃料不払いの期間、賃料不払いに至る事情、従前の賃料支払状況、解除の意思表示後の借り主の対応など様々な事情を勘案して総合的に裁判所が判断します。