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相続・遺言問題

遺留分のご相談

弁護士への法律相談

法律相談

先日、主人が亡くなりました。主人は、現金・預貯金・不動産あわせて総額1億円ほどの財産を持っていました。主人の子は、私との間の娘一人だけです。主人は遺言書を作成していて、そこには「すべての財産を娘に相続させる」と書かれていました。主人とは、何十年もの間共に人生を歩んで来たのに、私には何の財産もくれないというのは納得がいきません。何とか、娘から一部でも遺産を分けてもらうことはできないのでしょうか?

弁護士からの回答

弁護士からの回答

一定の相続人には、相続分の一定割合が最低限保証されています。これを遺留分といいます。故人の配偶者であるあなたには、遺留分がありますので、娘さんに遺産の一部を分けるように請求ができます。

解説

遺留分について

遺留分とは、相続に際し、一定の相続人に対して、相続分の一定割合(最低限度)を保証する制度です。この一定割合は、被相続人(亡くなった人)の意思によっても奪うことはできません。したがって、被相続人が不平等な遺言を残していた場合でも、一定の相続人は、遺留分の請求を行うことで、もらいすぎの相続人から遺産の一部を取り戻すことができます。

遺留分を取り戻すための条件

遺留分を取り戻すためには、①遺留分を取り戻す権利があること、かつ、②もらいすぎの相続人に対し遺留分減殺請求をすることが必要です。

① 遺留分権利者の範囲

民法では、1028条に遺留分権利者を規定しています。まず、そもそも相続人ではない者(相続欠格者・相続廃除者・相続放棄者など)は、遺留分権利者になれません。さらに、兄弟姉妹が法定相続人となる場合、兄弟姉妹には遺留分がありません。

② 遺留分減殺請求をすること

遺留分は、法律で認められている権利ですが、黙っていてももらえるという権利ではありません。相手方に意思表示をする必要があります。具体的には、相続財産をもらいすぎている相続人に対し、遺留分減殺の意思があることを表示します。遺留分減殺請求の方式には特に決まりはなく、口頭でも書面でも構いませんが、裁判外で請求する場合は、後日の紛争に備えて、内容証明郵便によってするのが一般的です。

遺留分の割合について

原則として、法定相続分の2分の1です。ただし、父母だけが相続人の場合には、法定相続分の3分の1です。

遺留分請求権の時効

遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅します。
また、遺留分が侵害されていることを知らなかった場合や、そもそも、亡くなったことを知らなかった場合でも、故人が亡くなってから10年を経過したとき遺留分権利はなくなります(民法1042条)。

ご相談のケースの場合

相談者の方が何の権利主張も行わなければ、全財産は子供に相続されることになります。しかし、遺留分減殺の請求の意思表示を適切に行えば、法定相続分の2分の1の遺産を取り戻すことができます。ご相談の例では、総額1億円の遺産のうち、妻の法定相続分は5000万円ですので、その2分の1である2500万円の遺産を取り戻すことができます。

弁護士に依頼した場合

相続人・相続財産の調査

誰が相続人にあたるかや、連絡の取れない相続人の調査、故人の財産の特定、財産の評価等を行います。遺言がある場合、遺言の内容を把握し、誰が遺産をもらいすぎているのかを確認します。

遺留分減殺請求交渉

まずは、遺産をもらいすぎている相続人に対し、遺留分減殺の意思表示の内容証明郵便を作成・送付し、交渉を行います。交渉段階で問題が解決に至れば、あなたの時間と労力を浪費することもありません。

遺留分減殺請求調停の申立

交渉で解決できない場合、遺留分減殺調停を家庭裁判所に申立てます。調停手続では、担当の調停委員が当事者双方や代理人等から事情や意向を聴取します。また、調停委員が事情をよく把握した上で、様々な助言や分割案の提案をしてくれます。このように、調停は、当事者の話し合いによる合意を目指す手続です。当事者以外の第三者が話し合いに参加することにより、スムーズに話し合いがまとまるケースもあります。

遺留分減殺請求訴訟の提起

遺留分減殺請求調停がまとまらない場合は、家庭裁判所に訴訟を提起します。裁判官が理解しやすい文章で主張を行います。

当事務所における解決例

(1) 父親が、二男により多くの遺産を相続させるという遺言を残し、二男が長男から遺留分減殺請求を受けていたケースで、二男が長男に支払う金額を減額することができました。

 長男側と、遺産の評価方法などの協議を重ねた結果、和解金の金額を当初の請求額より大幅に減らすことができました。

(2) 母親が、長女に全ての財産を相続させるという遺言を残し、長男が長女に遺留分の請求を行ったケースで、遺産を取り戻すことができました。

 母の遺言すら長男には開示されていない状況の下、母の遺言と財産状況を全て開示させ、長男が遺留分を取り戻すことができました。

Q&A

Q1 被相続人が生きている間に、他の人に財産を全部贈与してしまったら、遺留分はなくなってしまうのですか?

A 遺留分の対象となる財産には、相続開始前の1年以内の贈与と、それ以前でも、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与が含まれます(民法1030条)。なぜなら、遺留分制度は、そもそも遺族の生活を保障するという大切な機能を持っているからです。その機能を害さないために、生きている間に贈与がされた場合にでも、遺留分を請求できる制度を法は作っています。

Q2 遺留分を放棄することはできるのでしょうか?

A 生前の相続放棄は認められていませんが、生前に遺留分を放棄することは法律上認められています。しかし、遺留分の放棄をするには、必ず家庭裁判所の許可が必要となります。(同1043条1項)。口約束だけでは足りません。

Q3 遺留分減殺請求を受けるべき受贈者が、すでに贈与の目的物を他人に譲り渡していた場合、遺留分権利者は何も主張できないのでしょうか?

A 受贈者の手元から減殺すべき対象物がない場合、遺留分権利者は受贈者に対し、対象物の価額を弁償するよう請求することができます。また、対象物の譲受人が譲渡の時において遺留分権利者に損害を加えることを知っていた時は、遺留分権利者は、譲受人に対しても遺留分減殺請求をすることもできます。(同1040条)。