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退職問題

退職一般

Q 労働契約の終了にはどのような形態がありますか?

意思表示による退職と事実の到来による退職と分類することができます。

 ① 意思表示による退職

  ア 使用者の自由意思による退職(解雇)
  イ 労働者の自由意思による退職(辞職,自主退職,任意退職)
  ウ 使用者と労働者の合意に基づく退職

 ② 事実の到来による退職

   契約期間満了に基づく退職,定年退職,死亡による退職等

解雇

 →「解雇問題」をご覧下さい。

辞職及び合意退職

Q 労働者の退職は自由にできますか?

A 辞職(退職)とは,労働者の意思に基づく労働契約の一方的解約です。
労働者には職業選択の自由が保障されており(憲法22条),原則として辞職は自由にすることが出来ます。

(1) 期間の定めのない労働契約の場合

民法では2週間前に辞職の予告をすることを要求しています(民法627条1項)。労働者の意思表示が使用者に到達してから2週間経過後に労働契約が終了することになります。

(2) 期間の定めのある労働契約の場合

「やむを得ない事由」がある場合のみ直ちに解約することが出来るが,「やむを得ない事由」が労働者の過失によって生じた場合には,使用者の受けた損害につき賠償責任を負うとされています(民法628条)。
もっとも,一定の労働者は,労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては,いつでも退職することができます(労働基準法137条)。
労働者の一方的解約としての退職の意思表示は,この意思表示が使用者に到達した時点で解約告知としての効力が生じ,撤回はなし得ません(民法540条2項)。

Q 辞職(退職)と合意解約の違いは何ですか?

辞職とは,労働者の意思に基づく労働契約の一方的解約です。これに対し,合意解約とは,使用者と労働者の合意によって労働契約を解約しようとするものです。
 

  辞職 合意退職
退職の効果の
発生時期
使用者に退職の意思表示が到達した時点で効力が生ずる。期間の定めがない雇用契約については,原則として辞職の意思表示が使用者に到達してから2週間を経過すれば退職の効果が生ずる(民627条1項)。 (1)合意解約の申込の意思表示にあたる場合
労働者の辞職の申出に対し,使用者の承諾の意思表示がなされた時点で退職の効果が生ずる。
(2)合意解約の承諾の意思表示にあたる場合
労働者の辞職申出がなされた時点で合意解約が成立し,退職の効果が生ずる。
退職申出の撤回
の可否
使用者に到達すると,到達時に効力が生ずるので,使用者の同意がない限り,撤回できない。 (1)合意解約の申込の意思表示にあたる場合
使用者が承諾する前であれば,合意解約の申込の意思表示を撤回することができる。
(2)合意解約の承諾の意思表示にあたる場合
使用者の同意がない限り,退職届の撤回はできない。
退職申出の性質 労働者による一方的解約の意思表示 合意解約の(1)申込の意思表示又は(2)承諾の意思表示
Q 辞職の意思表示と合意解約との区別はどのようになされるのですか?

A 労働者から退職の申出がなされた場合,使用者の態度いかんにかかわらず確定的に雇用契約を終了させる意思が客観的に明らかな場合に限り辞職の意思表示と解され,そうでない場合は合意解約の申込と解するのが当事者の意思解釈として合理的であると思われます。

Q 合意解約の申出(申込の意思表示)に対する使用者の承諾はいかなる場合に認められますか?

A 
(1)人事部長等の承諾権限を有する者によってなされることが必要です。
(2)退職届の受理だけではなく,さらに内部的決済手続を要する場合は,その手続が行われ,本人に通知されることが必要です。
⑶就業規則等に承諾の意思表示をするには辞令の交付等が必要である旨規定されている場合は,その交付等が必要となります。

Q 退職について違約金の定め(留学費の返還等)は有効でしょうか?

A 契約期間の途中で退職した場合に違約金を支払う旨の定めがなされることがありますが,そのような定めは労働基準法に違反し無効です(労働基準法16条)。なぜならば,このような違約金の定めは,労働者の退職の自由を奪うことになるからです。
このような趣旨から,労働基準法16条が及ぶのは,違約金の定めについてだけではありません。例えば,技能習得のための費用や留学費用を使用者が負担し,一定期間内に退職した場合には,その費用を返還する旨の合意がなされるケースがあります。このような合意は,実質的に労働者の退職の自由を奪うか否かにより,労働基準法16条に反するかが決められます。
具体的には,①研修・留学の任意性,②業務性(留学・研修期間中の労働者の自由の有無・程度),③終了後の拘束期間,などを総合考慮して決められます。
判例では,社命により修学・研修を行い,現地でも業務に従事しているような場合は,費用の返還合意は労働基準法16条に反するとして返還請求が否定されたケースもあります。他方で,労働者が自由な決断により留学する制度となっており,留学先の科目の選択等も労働者に委ねられており,留学と業務の関連性が薄いような場合は,費用の返還合意は労働基準法16条に反しないとして返還請求が肯定される傾向にあるといえます。

Q 退職の意思表示が無効とされたり,取り消されることはありますか?

A 退職の申出は意思表示ですので,自分の行為の結果を理解できないような状態下における申出(意思無能力)は無効とされ,また,真実は退職する意思がないにもかかわらず,使用者に対する抗議の手段等として退職届を出すような場合(心裡留保民法93条本文)に,使用者がその労働者の真意を知りうる状態であった場合は無効とされ(民法93条但書),店舗の閉鎖を理由として退職合意をしたのに実際は新店舗の開店計画を秘していた場合(錯誤民法95条)は,退職の合意は無効とされ,その他,詐欺や脅迫による退職の申出は取り消すことができます(民法96条)。

退職勧奨

Q 退職勧奨とは何ですか?

A 退職勧奨とは,使用者が労働者に対し,自発的な退職意思の形成を促すためになす説得などの行為のことをいいます。
このような退職勧奨は,自由することができますが,退職勧奨を受ける側もそれに応ずるか否か自由に決定することが出来,退職勧奨に応ずる義務はありません。
もっとも,自由に退職勧奨をできるとしても,労働者が自由な意思決定を妨げられる態様の退職勧奨は許されず,説得の回数,説得のための手段・方法は社会通念上相当であることが求められ,その態様が強制的であったり執拗なものである場合には不法行為を構成し,使用者に損害賠償責任を生じさせることもあります。

早期退職者優遇制度

Q 早期退職者優遇制度とは?

A 早期退職者優遇制度と呼ばれる制度には,大きく2タイプがあると言われています。
一つは,いわゆる希望退職の募集型であり,企業の雇用調整強い要求の下に,余剰人員の削減,整理解雇の回避を目的として,募集期限・退職目標数等を設定して行われる制度である。
もう一つは,企業の雇用調整の要求はほとんどなく,定年前転職・独立の支援,労務構成の適正化などを目的として期間期限を設けずに退職者を募集する制度です。

Q 希望退職者募集制度の内容はどのようなものですか?

A 希望退職者募集制度は,従業員に対し,通常の退職より有利な条件を提示して,雇用契約の合意解約の申込を誘引するものであり,それに応募するか否かは労働者の自由です。
制度の実施については,まず募集要項が定められ,労働者に告知されます。募集要項の項目としては,(1)適用対象者(募集可能な労働者の範囲),(2)退職条件,(3)募集期間,(4)適用条件(企業の承諾の要否)などがあります。このような要項は,法律,労働協約等による制限や公序良俗に反するものでない限り自由に決められます。

Q 希望退職者募集にあたり,「会社が承諾した者」について優遇措置付きの退職を認めるといった条件を付けることは認められますか?

A 認められます。希望退職者の募集は,合意解約の申込の誘引であり,優遇措置付き退職の申出は,合意解約の申し込みにすぎないと解されています。従いまして退職の申出に対する会社の承諾があって初めて優遇措置付きの退職が認められますので,このような承諾を条件として付けることは認められます。
もっとも,承諾せず優遇措置付き退職を認めないことが,信義則に反する特段の事情がある場合は,承認を拒否することはできないとする見解がある点注意が必要です。根拠のない恣意的な承諾拒否は認められない可能性があります。

休職

Q 休職とはどのようなものですか?

A 例えば業務上外の傷害により一定期間欠勤せざるを得ない場合など,従業員に労務に従事させることが不能又は不適当な事由が生じたときに,使用者が労働契約関係そのものは維持しながら労務への従事を免除又は禁止することをいいます。
休職をもたらした事由が,休職期間内に終了しなかった場合は,退職又は解雇となります。
労働契約の本来の趣旨からすれば,業務上外の傷害・病気による就労不能は,労務提供の不履行であり,労働契約の解約事由となりますが,休職制度は,休職期間中の解雇を猶予する機能を有します。また,休職制度は,民間企業については,法令に基づくものではなく,就業規則・労働協約により定められます。

定年

Q 定年制とはどのようなものですか?

A 定年制とは,労働者が一定年齢に到達したことを理由に雇用契約を終了させる制度をいいます。定年到達により労働契約の自動的終了の効果が生ずる「定年退職制」と定年到達を解雇事由とする「定年解雇制」があります。

退職・解雇に伴う事務処理

Q 労働契約が終了した場合の,使用者の義務はどのようなものがありますか?
A (1) 退職時の証明(労基法22条1項)

労働者から請求があった場合には,使用期間,業務の種類,その事業における地位,賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合には,その理由を含む。)について証明書を遅滞なく交付しなければなりません。解雇の理由については,具体的に示す必要があり,解雇の理由となった就業規則の当該条項の内容及び当該条項に該当するに至った事実関係を証明書に記入しなければなりません(通達)。

(2) 金品の返還

使用者は,労働者の死亡又は退職の場合において,権利者の請求があった場合において7日以内に未払の賃金を支払い,積立金,保証金,貯蓄金その他名称のいかんをとわず,労働者の権利に属する金品を返還しなければなりません(労基法23条1項)。なお,退職金については,就業規則等に支払時期と支払方法が規定されていれば,当該規程に従って支払えば足り,7日以内に支払う必要はありません。

(3) 帰郷費用

満18歳に満たない者が解雇の日から14日以内に帰郷する場合,使用者は必要な旅費を負担しなければなりません(労基法64条本文)。

有期雇用労働者の雇い止め

「雇い止め」の項をご覧下さい。

労働時間・休日・休暇・休業

1日8時間週40時間と週休制の原則

Q 法律上の労働時間制はどのように規定されていますか?

A 

(1) 法定労働時間

まず,使用者は,労働者を,休憩時間を除き,1日8時間,1週間40時間を超えて労働させてはなりません(労基32Ⅰ,Ⅱ)。
但し,①商業,映画・演劇業(映画の製作事業を除く),保健衛生業,接客娯楽業の事業,かつ,②常時10人未満の労働者を使用する場合は,例外的に1日8時間,週44時間制が認められています(労基則25の2Ⅰ)。
以上が,労働基準法が定める労働時間の上限を法定労働時間といい,この規制に違反した使用者は,6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金(労基119)に処せられます。

(2) 所定労働時間

就業規則で定められた就業時間から休憩時間を差し引いた時間を所定労働時間と呼ばれ,この所定労働時間は法定労働時間の範囲何で定められなければなりません。

(3) そもそも労働時間とは

労働基準法が規制する労働時間とは,始業時刻から就業時刻までの拘束時間から休憩時間を除いた実労働時間である。実際に作業を行う実作業時間だけに限らず,作業の準備・整理を行う時間や作業のために待機している時間(手待ち時間)も含まれます(行政解釈は「労働者が使用者の指揮監督の下にある時間」としている。)。

具体的事例
○ 店員が顧客を待っている間のいわゆる手待時間

→その間特に実作業を行っていなくとも、一般に労働時間に当たると解されています(大阪地判昭和56.3.24すし処「杉」事件)。

○ ビル管理会社の従業員が管理・警備業務の途中に与えられる夜間の仮眠時間

→仮眠場所が制約、仮眠中における突発事態へ対応義務等を理由に、労働時間に当たるとする判例が多くあります(最1小判平成14.2.28 大星ビル管理事件)。
 ただし、東京地判平11.6.12 JR貨物事件 では、交替警備の警備員について、仮眠時間中は職務上の義務を課していなかったとして労働時間性を否定しました。

○ 実作業に入る前や作業終了後の更衣時間

→最高裁は、使用者が造船所の労働者に事業所内での作業服等の着脱を義務づけていた事案において、就業規則等の定めにかかわらず、そうした更衣時間は労働時間に当たると判断しました(三菱重工業長崎造船所事件 ただし、最高裁は、そうした更衣に要する時間も「社会通念上必要と認められるものである限り」労働時間に当たるとして、一定の限定を付しています。)

○ いわゆる自発的残業や持帰り残業

→使用者の黙認や許容があった場合には労働時間となると解されています。一般には、自発的残業等をしないことを明示的に指示し、それが行われているときには中止を求めるなどの措置がなされていない場合には使用者の黙認や許容があったといえます。ただし、定時に終わらせることが明らかに無理な量の業務を与えた場合には、そうした措置は形だけのものにすぎないと判断されることがありえます。

(4) 労働時間の把握・管理

使用者は,労働者各人別の労働時間数,時間外労働時間数,休日労働時間数,深夜労働時間数を賃金支払の都度賃金台帳に記入しなければなりません(労基108条,労基則54条Ⅰ⑤)。
労働時間の自主申告などによるいわゆるサービス残業等の抑制のため,通達により使用者は,労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する責務があるとされています(平成13年4月6日基発339号,労働時間把握基準)。

① 使用者は,労働者の労働日ごとの始業・就業時刻を確認し記録すること。
② 確認記録方法は,使用者自らの原認又はタイムカード等の客観的記録の利用を原則とすること。
③ 自己申告制により行わざるを得ない場合には,制度導入前に正しい申告を行うよう労働者に十分な説明を行い,申告時間の正確性につき必要に応じて実態調査を行いかつ適正な申告を阻害する目的で時間数の上限を設定するなどの措置を講じないこと
④ 労働時間の記録は,労基法109条に基づき3年間保存すること。

Q 法律で週休制についてどのように規定されていますか?

A 週休制

(1) 週休制の原則

使用者は,労働者に対して,毎週少なくとも1回の休日を与えなければなりません(労基35Ⅰ)。この週休制は,4週間を通じ4日以上の休日を与える場合には適用されず(労基35Ⅱ),実質上,4週4休制に緩和されていますが,このような変形週休制をとる場合には就業規則等で「4週間」の起算日を定めなければなりません(労基則12の2)。

(2) 休日振替と代休
ア 休日振替

就業規則等で定めた休日を所定労働日に変更し,他の特定の所定労働日を休日に変更することをいい,許容する明文はないが,禁止されていないと考えられています。
① 就業規則において休日振替を必要とする場合に休日振替を行うことができる旨の規定を設け,
② この規程に基づいて予め振り替え休日を特定して行えば,
当該休日は所定労働日となり休日労働をさせたことにはなりません(昭和63年3月14日基発150号等)。
規定がない場合は,労働者の個別的同意を得て初めて行うことが出来る。

イ 代休

所定休日に休日労働をさせた代償として使用者が労働者に対し,所定労働日に欠勤することを認めること(事後的な休日振替)をいう。
代休付与の要否や,代休日の賃金が支払われるか否かは,労働契約(一般には就業規則の定め)の定めによるが,休日振替とは異なり,休日労働がなされたことには変わりはないので,割増賃金が支払わなければなりません(労基37)。

労働時間原則の例外と労使協定

Q 労働時間制の原則の例外はありますか?

A 

(1) 36協定による時間外・休日労働の例外

労使の時間外・休日労働協定(いわゆる36協定)で定める範囲内であれば,法定労働時間を超えて労働させ,法定休日に労働させても,労働基準法違反とはなりません(労基法36条)。
しかし,その場合,時間外・深夜割増賃金や休日割増賃金を支払わなければなりません(労基37)。

(2) 変形労働時間制(労働時間の割り振りの例外)
ア 変形労働時間制とは?

変形労働時間制は,週40時間の原則に合致しているかどうかを,一定の労働時間算定期間(変形期間)の中で判断していこうという仕組みです。
すなわち,労働基準法32条では,1週間の労働時間を40時間とし(1項),その労働時間を各日に割り振る場合の上限として1日の法定労働時間を8時間と定めています(2項)。
しかし,業種によっては,業務の繁閑の差があり,上記1週40時間,1日8時間という原則的基準を形式的に適用することが現実的ではないことがあります。
そこで,業務の繁閑に応じた労働時間の配分を可能とするために規定されたのが変形労働時間制なのです。

イ 1か月単位変形労働時間制とは?

1ヶ月以内の一定期間を平均し,1週間の所定労働時間が法定労働時間を超えない範囲において,特定の日又は週に法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。
例えば,所定労働時間を
第1週 42時間
第2週 35時間
第3週 42時間
第4週 35時間
とする場合,第1週と第3週は週40時間の制限(労働基準法32条1項)を形式的には超えていますので,違法となります。
しかし,上記4週を変形期間とする変形労働時間制を採ることにより,4週の平均では週40時間を超えないため,第1週と第3週は違法ではなくなるのです。

ウ 1年単位変形労働時間制とは?

1ヶ月を超え1年以内の一定期間を平均し,1週間あたりの労働時間が40時間以下の範囲内において,特定の日又は特定の週に1日8時間又は1週40時間を超え,一定限度で労働させることができる制度のことです。
イメージとしては,上記1か月単位変形労働時間制と同じと考えていただいてよいかと思いますが,期間が長い分,1ヶ月単位変形労働時間制よりは採用要件が厳しくなっています。

エ フレックスタイム制とは?

1ヶ月以内の一定の期間の総労働時間を定めておき,労働者がその範囲内で各日の始業及び終業の時刻を選択して働くことにより,労働者がその生活と業務との調和を図りながら,効率的に働くことを可能とし,労働時間を短縮しようとする制度です。
(厚生労働省ホームページより引用)

オ 1週間単位非定型変形労働時間制

1週間単位でみとめられる変形労働時間制です。
この制度は,予測不可能な業務の繁閑にあわせて非定型的に労働時間を変動させる仕組みですので,労働者に与える影響が大きく,採用のための要件も厳格です。
従って,一般事業場でこの制度の採用が採用されることは,まずないといっていよいでしょう。

(3) みなし労働時間制

みなし労働時間制とは,時間外労働算定のための時間計算を行わず,労働時間を一定時間労働したものとみなす制度です。
労働基準法は,実労働時間で労働時間を算定し,これに関する一定の規制を設け,使用者も労働事件の長さに着目した処遇を行ってきました。
しかし,現代の多様な働き方においては,従来のように事業場内に縛られない働き方も増えてきています。また,労働者の専門性を発揮した仕事の質や成果でその評価をすべき仕事が増えてきました。このように,従来の労働時間算定が及ばないケースに,適正な処遇を行うための制度がみなし労働時間制なのです。

ア 事業場外労働みなし時間制

例えば,外回りの営業職など,事業場外で労働した場合で,かつ,労働時間算定が困難なときは,所定労働時間労働したものとみなし,ただし,その業務を遂行するために通常所定労働時間を超えて労働することが必要な場合は通常必要とされる時間(又は労使協定で定める時間)労働したものとみなす制度です。

イ 裁量みなし労働時間制
(ア) 専門業務型裁量労働時間制(労基法38の3)

例えば,新聞の編集業務,放送番組の製作・取材・編集業務,プロデューサーなど,業務の性質上その遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため遂行手段及び時間配分について具体的な指示をすることが困難な業務について,労使協定で定めた時間労働したものとみなす制度です。

(イ) 企画業務型裁量労働時間制(労基法38の4)

会社の営業部で営業計画を策定する業務や企画部で経営計画を策定する業務など,事業の運営に関する事項についての企画,立案,調査及び分析の業務であって,当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため,当該業務の遂行手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務に,対象業務を適切に遂行するために知識,経験等を有する労働者が就く場合で労働者の同意が得られた場合について,労使委員会が定めた一定時間労働したものとみなす制度です。

(4) 管理監督者等の適用除外

労働基準法は,次の者に関しては,労働時間・休憩・休日の規定が適用されない旨定めています(労基41。なお,深夜業の割増賃金の規定,年次有給休暇の規定については適用除外ではない。)。

① 農業,畜産・水産業の事業に従事する者
② 監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
③ 監視又は断続的労働に従事する者で,使用者が行政官庁に許可を受けた者

監督若しくは管理の地位にある者」とは,労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にある者の意であり,名称にとらわれず,実体に即し判断すべしとされており(昭和22.9.13発基17号,昭和63.3.14基発150号),一般的に管理職と呼ばれる地位に至った労働者が直ちに該当するものではありませんので注意が必要です。いわゆる名ばかり管理職問題は,上記判断に際して問題となっています。

「監視労働」とは,一定部署に在って監視するのを本来の業務とし,常態として身体又は精神的緊張が少ない労働をいい,「断続的労働」とは,実作業が間欠的行われて手持時間の多い労働のことであり,手持時間が実作業時間を超えるか,又はそれと等しいことが目安とされている。宿日直は,一般に監視・断続的労働にあたり,通常の許可がなされるが,平常勤務者を付加的に宿日直勤務にも従事させる場合も断続的労働にあたるとして,勤務内容,回数,手当等の基準を定めた上で許可がなされている(労基則23条)。

Q 労働基準法上の労使協定とは何ですか?

A 

(1) 労使協定とは

労働基準法その他の法規に基づき,使用者が当該事業場の従業員の代表と結ぶ書面による協定のことです。
なお,現在,労使委員会(企画型裁量労働制)決議や時短推進委員会決議に,労使協定と同じ効果が認められています(労基38条の4,パート労働6条)。

(2) 労使協定の締結当事者は?

使用者と労働者代表です。
労働基準法10条が定義する使用者は「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について事業主のために行為をする全ての者」をいうので,代表者のほか,代表者から権限を与えられていれば人事部長,支店長,工場長なども労使協定を締結することが出来ます。
労働者代表には,当該事業場で労働者の過半数を組織する労働組合がある場合はその労働組合(過半数組合)がなり,そのような労働組合が無い場合は労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)がなります。

(3) 過半数代表者の選出方法

過半数組合がない事業場で,労働基準法上の労使協定を締結する場合には,過半数代表者を選出する必要があります。過半数代表者の適格性や選出方法につき,「法41条2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと」「法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票,挙手等の方法による手続により選出された者であること」と規定されている(労基則6条の2)。
このように,過半数代表者の選出にあたっては,①労使協定の内容及びそれに対する過半数代表候補者の意見が全労働者に知らされることが必要であり,②その後の投票や挙手などの民主的手続により過半数代表者を選出することが必要なのであり,各職場での信任手続を積み上げるような間接的な手続や労働者への回覧により確認するような手続は,民主的な手続としては不十分と思われます(トーコロ事件 最判平成13.6.22 労判808P11)。
投票等に過半数代表候補者選出に参加できる労働者は,その事業場の全労働者であり,管理職,契約社員,パート,アルバイト等も含まれる(出向できた労働者も含むが,派遣労働者については36協定等一部の労使協定については,派遣先での過半数代表者の選出に際しての労働者に含まれない。労派法44条Ⅱ)。
なお,36協定に関する古い行政通達では,労働時間規制の適用が除外される労働基準法41条の「管理監督者」も「労働者」に含むとしています(昭和46.1.18基収6206号)。

(4) 労使協定の締結と終了

労働基準法上の労使協定は,企業単位ではなく,事業条単位で締結します。
事業場については,主に場所的概念で判断がなされますが,例えば出張所など規模が小さいものは,その上の支店と同一の事業場とみなすことになります。
労働基準法上の労使協定には,有効期限を定めなければならないもの(ex 36協定,1年単位変形労働時間協定,裁量労働みなし労働時間協定)と有効期間を定めることが要件となっていないもの(ex フレックスタイム協定,計画年休協定)があります。実情にあわせて定期的に協定内容を見直すために,後者の労使協定にも有効期間を定めておいたほうがよいでしょう。
労働基準法上の労使協定の解約については,労働基準法上何の定めもありません。双方合意の解約は自由に出来ることはもちろんですが,一方からの解約については,労使協定に解約条項があればそれにより,解約条項がない場合は,有効期間の定めがない労使協定については労使いずれからでもいつでも解約でき,有効期間の定めのある労使協定については合理的な理由(ex きわめて長期の有効期間が定められている場合など)がある場合に限り解約できると考えるのが妥当でしょう。

Q 36協定について教えてください?

A 

(1) 36協定の締結と労働基準監督署への届出

使用者は,労働者を法定労働時間を超えて労働させる場合又は法定休日に労働させる場合は,時間外労働及び休日労働に関する協定を締結し,労働基準監督署へ届けでなければなりません。この協定を36協定(サブロクキョウテイ)といいます。

(3) 協定事項(労規則16条)

 ① 時間外または休日労働をさせる必要がある具体的事由(ex納期の切迫,受注の集中等)
 ② 業務の種類(ex加工,検査,経理などの具体的業務)
 ③ 労働者の数(時間外労働,休日労働の対象となる労働者の数)
 ④ 1日及び1日を超える一定の期間についての延長時間又は労働させることができる休日
 ⑤ 有効期限(実例では1年が多い)

(4) 36協定届出の効力

使用者が時間外労働(法外残業),休日労働(法定休日労働)をさせても,労働基準法違反とならないことを意味します(免罰的効力などと呼ばれます。)。

(5) 時間外労働の上限時間に関する基準

36協定によれば,際限なく時間外労働をさせることができるのではなく,①1日,②1日を超え3ヶ月以内の一定期間,③1年間のそれぞれにおける時間外労働の上限時間を定めなければならず,②,③については,「時間外労働の限度に関する基準」(労働基準法36条2項に基づく平成10年労働大臣告示154号)が定められており,その限度以下でなければなりません。具体的には,
1週間 15時間
2週間 27時間
4週間 43時間
1ヶ月 45時間
2ヶ月 81時間
3ヶ月 120時間
1年間 360時間
但し,この限度基準の例外として,「特別条項付き36協定」により限度時間を超える時間を延長することが出来るとされています。

(6) 育児・介護を行う労働者の時間外労働の制限

小学校未就学児を養育し,あるいは介護を要する家族を介護する労働者が請求したときには,事業主は,事業の正常な運営を妨げる場合を除き,1ヶ月につき24時間,1年につき150時間の制限時間を超えて労働時間を延長してはならず,また,深夜労働をさえてはなりません(育児介護17条,18条,19条,20条)。

休憩・休日

Q 休憩時間について教えてください。

≪回答≫

(1) 休憩時間とは,労働者が権利として労働から離れることを保障される時間帯のことをいいます(昭和22.9.13発基17号)。

従って,例えばお昼休みの休憩時間中に当番制で電話の対応をさせるような待機時間や手待時間は,休憩時間ではなく労働時間とされますので,留意する必要があります。

(2) 休憩時間についての法律の定め
○ 労働基準法上,使用者が義務づけられている最低限の休憩時間は次のとおりです。

労 働 時 間 休 憩
6時間を超える場合 45分
8時間を超える場合 1時間

(労働基準法34条1項)

○ 労働時間が6時間以内の場合は休憩時間を与えなくとも法律に反しません。
○ 実務では,昼食時間を考えて,休憩時間は1時間とするものが多いです。
  (45分では,昼食時間として短いため。)
○ 休憩時間は一度に与えてもよいし,分割して与えることもできます。例えば,午後零時から45分,午後3時から15分など。
○ 休憩時間は労働時間の途中に与えなければなりません(労働基準法34条1項)。休憩はある程度継続した労働時間で,労働者に蓄積される心身の疲労を回復させる趣旨であることから,途中に休憩を与えなければ意味がありません。
○ 休憩時間は事業条単位で一斉に付与されなければなりません(労働基準法34条2項)。休憩時間の効果をあげるという趣旨です。但し,次の場合は,例外的に同一事業場内の労働者について休憩時間をずらして交代制にすることができます。
 ア 特殊の必要がある場合(労基法40条,労規則31条)
  運送交通業,商業,金融・広告業,映画・演劇業,通信業,保健衛生業,接客・娯楽業,官公署がこれにあたります。
 イ 労使協定で例外を定めた場合(労規則15条)
○ 休憩時間は自由に利用させなければなりません(労基法34条3項)
休憩は,労働者の休息を権利として保障したものであることから当然です。
但し,例えば,①他の労働者の休憩時間の妨げとなる場合,②作業能率の低下を生じさせる場合,③企業の施設に支障を及ぼしたり,施設管理規定,服務規律規程に違反する場合,には,休憩時間の使い方について一定の制限を規定することも認められると解されます。

Q 休日について教えてください。

≪回答≫

(1) 休日とは,労働契約上労働の義務がない日のことをいいます。

休暇は労働日の労働義務を個々に免除する制度であり,休日とは区別されます。

(2) 休日を付与する義務(労基法35条)・・法定休日

法律では,使用者に休日付与義務を課しています。この休日を法定休日といいます。この法定休日については,1週間に1日の休日付与(週休休日制)を原則としつつ,4週間を通じて4日の休日を与える場合は,この原則を適用しないものとしています(週休休日制の原則を「変形」することから,変形休日制と呼ばれています。)。なお,変形休日制を採用する場合は,就業規則で4週間の起算日を定めておかなければなりません(労規則12条の2第2項)。

(3) 法定外休日

上記のような法定休日は,1週1日または4週4日の法定休日の付与義務を定めますが,実務上は,週40時間制との関係で,週休2日制をとることが多いです。つまり法定休日の外に,休日が加わることになります(これを法定外休日といいます。)。法定外休日については,労働基準法の休日規程は適用されません。

(4) 休日の特定
ア 休日自体の特定
労働基準法は休日を特定することを要求していません。もっとも,労働者の保護のために休日の特定は望ましいといえます。
イ 法定休日の特定
法定休日に労働させた場合は,3割5分の割増賃金を支払わなければなりません。しかし,法定休日以外の休日労働は上記割増賃金を支払う義務はありません。その様な場合は,使用者が就業規則等で任意にその取扱いを定めることが出来ます。そこで,法定休日の割増率(3割5分)と法定外休日のについて定めた割増率に差がある場合は,両者の区別をすることが望ましいといえます。
例えば,「日曜日を法定休日とする。」「毎週の休日のうち最後の1回の休日を法定休日とする。」「毎週の休日のうち,休日労働のない最後の日又はすべての休日を労働した場合の最後の労働した日を法定休日とする。」といった定めをすることになります。
Q 休日振替について教えてください。

≪回答≫

(1) 休日の振替とは?

あらかじめ休日と定められた日を労働日とし,その代わりに他の労働日を休日とすることです。就業規則で休日が特定されている場合でも,業務の都合により,その日に労働させざるを得ない場合が生じ得ます。その様な場合,休日の振替によらずに,その日に労働させることは休日労働になります。確かに,第36条の規定により労使協定をし,休日労働として行うこともできますが,例えば法定休日に休日労働をさせると割増賃金が発生します(休日振替手続をすれば法律が定める休日労働の割増賃金は発生しません。)。そこで,法律に定めがないものの,休日の振替が認められています。

(2) 休日の振替の要件は?

 ① 就業規則で,業務上必要な場合休日を振り替えることが出来る旨を定めること
 ② 休日を振り替える前に,あらかじめ振り替えるべき日を特定して振り替え手続を行うこと
 ③ 振り替える日が翌週以降になる場合には,休日振替によっても4週4日の休日(労基法35条2項)が確保されていること
が通達上挙げられています(昭和23.4.19基収1397号,昭和63.3.14基発150号)。
なお,①においては,出来る限り休日振替の具体的事由と振り替えるべき日を規定することが望ましく,また,振り替えるべき日については,振り返られた日以降で出来る限り近接している日が望ましいとされています(昭和23.7.5基発968号,昭和63.3.14基発150号)。

(3) 時間外労働との関係

休日を振り替えたことによって当該週の労働時間が週の法定労働時間を超えるときには,その超えた時間は時間外労働となり,時間外労働に関する労使協定(36協定)及び割増賃金の支払いが必要です。

Q 代休について教えてください?

≪ご回答≫

(1) 代休とは?

休日振替を行わずに休日労働させた場合や長時間の時間外労働,深夜労働が行われた場合に,それに対する代償として与える一種の休暇(特定の労働日の労働義務を免除するもの。)です。

(2) 代休と賃金について
ア 代休日の賃金について
代休は使用者による一方的な労働義務の免除ですので,法律上当然には無給とはなりませんが(民法536条2項)。そこで,就業規則で代休規定とともに,代休は無給とする旨定めておく必要があります。

イ 代休と割増賃金について
代休は,振替休日と異なり,休日労働を前提とするものですので,無給の代休を与えても法定の休日労働の場合は割り増し賃金分(3割5分以上)を支払わなければなりません(労基法37条 強行法規)。具体的には,一賃金計算期間で法的休日労働1日と代休1日があった場合,休日労働分(1.35)-代休分(1.0)の差額0.35分は支払を要します。すなわち,割増賃金分(0.35)は強行法規ですので,労働契約でいかに定めようとも,不払いとすることはできないのです。

ウ 賃金の精算について
(ア) 法定休日の代休の場合
イのとおり,割増分の差額の支払いが必要です。
(イ) 割増賃金支払義務を定めていない法定外休日労働
この場合は,就業規則に基づき代休を与えることによって賃金の不発生とすることも可能です。しかし,法定外休日を労働させた結果,週法定労働時間(40時間)を超える場合には,超える時間について時間外労働として2割5分以上の割増賃金が必要になる点は留意が必要です。
(ウ) 賃金精算の支払時期について
1つの考え方としては,休日労働をした場合には,2ヶ月以内に代休を取得できるものとし,休日労働と代休との賃金の精算については,代休を取得した日に属する賃金支払い期間において行うといった運用が挙げられます。

時間外・休日・深夜労働

Q 時間外労働と割増賃金について教えてください。

≪ご回答≫

(1) 法内残業と法外残業

一般に時間外労働(残業)には,2種類あります。

ア 法内残業
所定労働時間を超えるが法定労働時間以内の残業
ex 所定労働時間が1日7時間で,実際にその後2時間残業した場合,7時間を超え8時間までの残業は法内残業となります。
イ 法外残業
労働基準法が定める法定労働時間を超える残業
ex 上記例で,8時間を超える1時間の労働部分
(2) 区別の実益

労働基準法36条及び37条の規制(労使協定と割増賃金の支払 強行規定)の対象とする時間外労働というのは,法外残業であって,法内残業を含まないので,区別する実益があります。
法内残業については,任意に使用者が就業規則等により法外残業と同じ扱いを定めることもできますし,又は割増のない時間単価で支払う定めや低い割増率で支払う定めをすることも出来ます。

Q 休日労働と割増賃金について教えてください。

≪ご回答≫

(1) 法定休日と法定外休日
ア 法定休日
労働基準法上の法定休日は前記のとおり1週1日又は4週4日(35条)であり,この法的休日については,36条(労使協定),37条(35%以上の割増賃金)の規制を受けます。
イ 法定外休日
法定休日以外に使用者が与える休日で,上記労働基準法の規制の対象とはならない。
Q 時間外労働,休日労働の労働基準法上の要件を教えてください。

≪ご回答≫
法外残業,法定外休日労働については,
① 労使協定(36協定)を締結すること。
② 36協定を労働基準監督署へ届け出ること。
③ 割増賃金を支払うこと
が要件となります。
労使協定については,「労働基準法上の労使協定とは何ですか?」を参照してください。
また,36協定についても,「36協定について教えてください?」を参照してください。

Q 時間外労働,休日労働命令の要件について教えてください。

≪ご回答≫
業務命令として時間外労働(法外残業),法定休日労働を命ずるためには,労働基準法上の要件に加え,労働契約上の根拠が必要です。具体的には,
① 就業規則において時間外労働,休日労働について定めを置くこと
② 時間外労働,休日労働が36協定が定める具体的事由に基づき,かつ労働させる延長時間・休日日数の範囲内であること

年次有給休暇

Q 年次有給休暇(年休)について教えてください。

≪回答≫

(1) 年次有給休暇(年休)とは?

労基法39条の要件に基づき,休日以外に年間の一定日数の労働日について有給で労働義務を免除するものです。就業規則であらかじめ労働義務のない日とされる無休の休日とはこの点で異なります。

(2) 年休(法定年休)の発生要件は?
ア 労働基準法は年次有給休暇を労働者の権利として,同法39条1項の要件を満たせば所定の年休日数が当然に発生するとします。
≪労働基準法39条1項の要件≫

① 一定期間の継続勤務(入社後6ヶ月,その後1年ごとの期間)
② 全労働日の8割以上出勤
→年休発生

≪年休付与日数≫

【正社員などフルタイム労働者(労基法39条2項)】

継続勤務年数 6ヶ月 1年
6ヶ月
2年
6ヶ月
3年
6ヶ月
4年
6ヶ月
5年
6ヶ月
6年
6ヶ月以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

※上限である20日になった以降は毎年20日が付与日数となります。

【短時間労働者の比例付与】(労基法39条3項,労規則24条の3)

週所定
労働日数
1年間の所定労働日数 雇い入れの日から起算した継続勤務日数
6ヶ月 1年
6ヶ月
2年
6ヶ月
3年
6ヶ月
4年
6ヶ月
5年
6ヶ月
6年6ヶ月以上
4日 169~216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121~168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73~120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48~72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

※短時間労働者とは
①週により所定労働日数が定められている労働者は,週所定労働日数が4日以下で,かつ週所定労働時間が30時間未満の者
②週以外の期間により所定労働日数が定められている労働者は,年間所定労働日数が216日以下で,かつ週所定労働時間が30時間未満の者
を言います。

≪年休の具体的行使方法≫

上記のとおり発生した年休を,いつ取るか(年休の始期と終期を指定)を使用者に請求すれば,当然にその日が年休になります(労基法39条4項本文 労働者の時季指定権と呼ばれます)。但し,例外的に,年休の取得が事業の正常な運営を妨げる場合は,使用者は他の時期にこれを与えることができます(労基法39条4項但書 これを時期変更権と呼びます。)。

イ 継続勤務の意味は?
(ア) 継続勤務とは?

年休付与要件の継続勤務とは,各労働者の採用日から起算した在籍期間を意味しています。
従って,病気や入院などで長期休職期間があった者でも,その期間は継続勤務の計算に入ります。但し,その場合でも,8割出勤の要件を満たす必要があることは当然です。

(イ) 出向者や定年再雇用者について

出向者については,出向先で年休を与える場合にも,出向元での勤務期間を通算した勤務年数に応じた年休を与えなければなりません(昭和63.3.14基発150号)。
また,定年退職後再雇用した者については,勤務の実態に即して判断されます。すなわち,退職後引き続き再雇用する場合は,実質的には労働関係の継続と認められるため,継続勤務の要件は退職の前後を通算して判断しなければなりません。他方で,退職と再雇用との間に相当期間が空いており,客観的に労働関係が中断したと評価出来る場合は,再雇用時から勤務年数を起算します(昭和63.3.14基発150号)。

(ウ) 8割出勤の計算について

年休付与要件として全労働日の8割以上の出勤が要求されています。ここで全労働日とは,労働契約上の労働義務のある日(すなわち休日以外の日)を指しており,対象期間の所定労働日数(対象期間の総暦日数から休日を控除した日数)がこれに当たります。
例えば
・正当な争議行為としてのストライキによる不就労日
 →「全労働日」の日数から除外する
・使用者の責めに帰するべき事由による休業(労基法26条)
 →「全労働日」の日数から除外する
・休日労働した場合
 →休日なので「全労働日」の日数から除外する。
・業務上傷病による休業期間及び産前産後休業期間(労基法65条),育児介護休業法に基づく育児・介護休業期間
 →出勤とみなされます(労基法39条7項)。
・遅刻,早退の場合
 →欠勤ではないので,出勤と取り扱います。
・慶弔休暇等の特別休暇
 →取扱は自由に定めることができます。

(3) 年休の行使はいつまでも認められるか?
ア 年休の時効

年次有給休暇の請求権はその発生日から2年間で時効となります(労基法115条)。
従って,その年度に発生した年休請求権は次年度まで有効です(昭和22.12.15基発501号)。

イ 退職による年休の消滅

年休は,労働契約の存続を前提とする制度ですので,労働者の退職,解雇による労働契約の終了により消滅します。

ウ 年休の買い上げ

年休(法定年休)は,労働者の疲労回復を目的とする強行規定ですので,買い上げは労働基準法39条違反になります(昭和30.11.30基収4718号)。
ただし,法定外年休あるいは既に時効になっている年休を買い上げることは労働基準法違反とはなりません。
また,退職により消滅する年休について,残日数に応じて調整的に金銭給付することも労働基準法違反とならないと考えられます。

女性についての特例

Q 女性の休暇等についての特例について教えてください。

≪回答≫
労基法は女性について特別の休暇規定を定めています。

1 産前産後休業等(労基法65条)

母性保護のために定められた休業です。休業中の給与は無給とするか有給とするかは自由ですが,就業規則で定めておく必要があります。

【要件】
(1) 産前 6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定の女性が請求した場合
(2) 産後 8週間は当然に終業禁止。ただし産後6週間を経過した場合は,本人の請求により医師が支障がないと認めた業務に就かせることができる。
(3) 妊娠中の女性が請求した場合,他の軽易な業務に転換させなければならない。

※① 休業期間については,産前6週間は出産予定日を基準として計算され,もし予定日より遅れて出産した場合は,6週間を超えて現実の出産予定日までが産前休業期間となります。ここでいう出産とは,妊娠4ヶ月以上の分娩(流産,人工中絶も含む)を意味しています(昭和33.9,29婦発113号)。
 ② また,産後8週間とは,出産日の翌日から起算されます。
 ③ 新たに軽易な業務を創設してまで与える義務を課したものではありません(昭和61。3.20基発151号,婦発69号)。

2 生理休暇(労基法68条)

一般に生理休暇と呼ばれますが,生理日であれば付与される休暇ではなく,「生理日の終業が著しく困難」な場合に,当該女性の請求により与えられる休暇です(労基法68条)。
休暇中の給与は無給とするか有給とするかは自由ですが,就業規則に定めておく必要があります。

3 育児時間(労基法67条)

満1歳に達しない生児を育てる女性従業員の請求により,使用者は休憩時間とは別に1日2回,おのおの30分以上の育児時間を与えなければなりません。
これは休憩時間と異なり,始業・終業時刻に接着させてもよいです。
育児時間中の給与は無給とするか有給とするかは自由ですが,就業規則に定めておく必要があります。
なお,1日の労働時間が4時間以内の場合,1日1回の育児時間の付与をもって足りるとされています(昭和36.1.9基収8996号)。

Q 妊産婦の就業制限について教えてください。

≪回答≫

1 妊産婦の労働時間の制限(労基法66条)

妊産婦(妊娠中の女性及び産後1年以内の女性)から請求があった場合には,次の制限が適用されます。

(1) 変形労働時間制の制限(労基法66条1項)
変形労働時間制が実施されている場合でも,妊産婦は法定労働時間を超えて労働しないことを請求できます。
(2) 時間外労働,休日労働・深夜労働の制限(労基法66条2項,3項)
妊産婦は,法定労働時間を超える時間外労働,法定休日労働,深夜労働をしないことを請求できます。
2 妊産婦に対する健康管理の措置義務

事業主は妊産婦に対して健康管理の措置義務を負っています。その内容は次の2つです。

(1) 母子保健法に基づく保健指導又は健康診査を受診するために必要な時間を確保するための措置(均等法12条)
(2) 医師・助産師による,上記(1)の保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするための措置(均等法13条)

育児・介護休業

Q 育児・介護休業について教えてください。

≪回答≫

(1) 育児・介護休業とは

育児又は家族介護を行う労働者について,休業制度並びに子の看護休暇制度その他の支援措置により雇用継続・再就職支等を促進し,仕事と家庭の両立を図る制度です(育児介護休業法1条)。

(2) 育児休業の対象者は?

1歳未満(誕生日の前日まで)の子を養育(同居し監護)する労働者であれば男女を問わず原則として育児休業の権利があります。
育児休業が必要と認められる場合には,子が1歳を超えて1歳6ヶ月に達するまでの休業も可能です(法5条3項)。

(3) 介護休業の対象者

要介護状態にある対象家族を介護する労働者であれば男女を問わず原則として介護休業の権利があります。